国外研究の成果が出版されました

 2025年3月31日付で、国外研究の成果がThe Japanese Journal of Agricultural Economics 誌に掲載されました。5月31日にオンラインでも公開されました。

Michitoshi Yamaguchi, Response of the U.S. Egg Food System to 2022 Highly Pathogenic Avian Influenza (HPAI) Outbreak, Japanese Journal of Agricultural Economics, 2025, Volume 27, Pages 89-93, Released on J-STAGE May 31, 2025, Online ISSN 2432-2385, https://doi.org/10.18480/jjae.27.0_89

本研究は、2022年に米国で発生した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)による鶏卵価格の上昇メカニズムに関する研究です。昨今お米の価格高騰が話題ですが、お米も鶏卵も需要が安定していて代替しづらいため、供給が滞ると価格が暴騰しやすいことが知られています(専門用語では、「需要の価格弾力性が低い」と言います)。2022年は日米ともに国内飼養羽数の約10%が殺処分されてしまうほどの被害があり、鶏卵の供給減によって記録的な価格高騰が観察されました。

鶏卵卸売価格の推移(左:日本、右:米国)

お米と卵を比較すると、備蓄ができるかどうかが大きな違いということになるのですが、卵に限ってみても日本と米国では賞味期限の長さが大きく異なります(米国では卵は生では食べない前提なので、賞味期限は1か月くらいあることが珍しくありません)。米国では卵もある程度在庫を持つことが可能なので、同じくらいの供給ショックでも価格変動が日本より小さくなるのではないかと思っていたのですが、意外にも米国のほうが価格変動は大きかったのです(上図右)。

この理由の一つとして本研究で明らかにしたのが、日米の鶏卵フードシステムの違いでした。米国ではふだんは殻付き卵市場から切り離されている加工原料卵(液卵・紛卵向けの原料卵)に大きな被害が出たことと、飼養期間延長などによって最初のショックを乗り切ったタイミングで第二波に襲われたために在庫がタイトになったことが、年末の需要シーズンの価格高騰を増幅したのでした。

家畜疾病による経済損失は、失われた家畜など生産側の損失も大きいのですが、価格高騰に伴う消費者側の損失も無視できません。フードシステムの違いが家畜疾病に対するレジリエンスにどのような影響を与えるのか、今後も研究を続けていきたいと考えています。(山口)