論文が公開されました

202589日付でPhysiologia Plantarum誌に投稿していた論文が公開されました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ppl.70446


テーマは「花粉ができないナス」に関するものです。

このナスは、細胞質雄性不稔(Cytoplasmic Male SterilityCMS)と呼ばれる現象によって花粉が作られません。
自ら種を作れないため、一見すると植物にとって不利に思えますが、実は他の個体と効率的に交配できるため、より強い雑種を作ることができます。

この特性は、種子生産の現場で広く利用されています。

本研究で扱ったナスでは、CMSの原因として、ミトコンドリアに存在する orf218 という遺伝子が疑われていました。

そこで私たちは、この遺伝子をゲノム編集技術で壊してみたところ、花粉が再び作られるようになったのです。

つまり、「この遺伝子が原因だった!」と初めて直接証明できた、というわけです。

シンプルな内容ですが、CMS研究にとって重要な一歩となりました。

ここまで辿り着くのに、何度泣いたことか。行き詰まりもたくさんありましたが、こうして一つの成果として形にでき、本当に嬉しいです。

論文には、研究に直接関わってくださった方々への感謝を記す「謝辞」の欄がありますが、そこに書ききれない多くの方々に助けて頂きました。

同じ実習を担当する同僚の皆さま、励ましやアイデアをくださった先生方、そして何より家族の支えのおかげで今回論文として発表することができました。

心より感謝申し上げます。


                                    (辻村)


広島大学 向島臨海実験所にてのゼミ合宿(二日目)ウニの採取から発生の観察


二日目は無人島に船で渡り、海産生物を採取します。特に狙いはウニです。この時期、ウニのメスは卵を、オスは精子を持ち、高校生物の教科書に出てくる「ウニの発生」を観察できます。自分たちで採取したウニで、発生を確認するというのが今回のハイライトです。
30人乗りの安定した船に乗り込み、実習所をでて、無人島に向かいます。

途中、しまなみ街道因島大橋の下をくぐります。

四十島という名の無人島に上陸し、早速ウニのポイントに向かいます。


採れたムラサキウニ
顕微鏡で観察します。

これが未受精卵

精子がやってきて受精し、重複受精を避けるため、卵の周りにゼリー状の膜ができます。

発生は1時間後に分裂するところから始まり、翌朝には、プルテウス幼生になり、すでに泳ぎ始めています。ウニは私たちと同じく、肛門が生じて最後に口ができるタイプの生物ですが、この時点で口ができます。泳ぎ回り餌を探しているとか。




高校の理科の教員になりたいものはもちろん、この実習でウニの発生を確認できて大喜びでした。前夜のウミホタルの発光も美しく、あまりの美しさに声ができました。こうした直接体験が、私たちの刺激になることがよくわかりました。
貴重な体験をさせていただきました。受講した学生のそれぞれに大きな学びがあったと思います。広島大学の向島臨海実験所の皆様には、心より感謝いたします。
(古本)













広島大学向島臨海実験所にてゼミ合宿

 テスト期間ですが、もう単位を取り切った学生たちとゼミ合宿に広島大学の臨海実験所に来ました。

海の生物はなかなか触れられないので、学ぶチャンスです。

初日の今日は、夜からの活動で、ウミホタルの観察でした。

写真ではうまく撮れなかったのが残念ですが、波打ち際でもすでに青白く光様子が観察できました。

トラップを仕掛けて30分ほど待ち、引き上げると瓶の中にうじゃうじゃいました。これでも例年よりも随分少ないとか。これまたうまく撮影できませんでしたが、ピンセットでつまんで刺激を与えるとピンセットの先で綺麗に光っていました。

学生たちの「おー」という声に、連れてきてよかったと思いました。

明日は、無人島に出かけます。

集めたウミホタル。乾燥させても光るということです。



簡単なトラップ。餌はカマボコ。魚のすり身ですね。

瀬戸内の波は穏やかで、いつもの慌ただしい毎日から少し解放された気分です。
(古本)



第13回生命科学セミナー

  7/1に、筑波大学の石賀康博先生をお招きして、第13回生命科学セミナー「ストマタ・ロックダウン:気孔を制する新時代の防除術」を開催しました。


石賀先生

 石賀先生は、農業現場で問題になっているさまざまな病原細菌や病原糸状菌の感染戦略を明らかにしようと勢力的に仕事をされており、本セミナーではそれら成果に関して一つ一つ要点を絞ってご紹介いただきました。

 石賀先生の一連の研究成果から、多くの病原体が植物感染時には植物の持つ気孔を標的にしていることが明らかとなったのですが、そこを逆手にとって、さまざまな手段を介して気孔からの病原体侵入を防ぐ(彼の言葉を借りると、「ストマタ(気孔)・ロックダウン」)ことで、病害防除に繋げることができるというところまでを、データと俯瞰的な視点でわかりやすく紹介して頂きました。感染メカニズムの解明から着想して、その成果を応用して実際の防除にまで繋ぐことができるということを実証した成果の紹介に、基礎研究から実用化までがシームレスに繋がりやすい植物病理学という分野の持つポテンシャルを改めて感じました。

質問に答える石賀先生

当日の会場の様子

 セミナー後にはいろいろな質問が出て質疑も盛り上がりました。その後は(これも毎回のことですが)今回お呼びした別役研に来ていただいて、研究室の院生と学部生からの研究紹介をそれぞれ聞いていただいて、発表内容に対して質疑を交わして、学生もたくさんの良い刺激をいただきました。

石賀先生、講演と長時間の学生との研究談義、本当にどうもありがとうございました!

(別役)



食料農業システム実習(高島)2025

 2025年6月21~22日、食料農業システム実習(高島)を受講する学生14名と教員1名が今年も実習先の高島市マキノ町森西地区を訪問しました(昨年度までの実習の様子はこちら→2024年度2022年度その12022年度その22021年度その12021年度その2 )。


初日は恒例のみなくちファームさんへの訪問からスタートしました。経営主の水口淳さんは、就農されたきっかけから有機農業に取り組むことになった経緯、循環型農業の取り組みなどについてお話しくださいました。

事務所向かいの森にて

みなくちファームさんには、食料農業システム学科の卒業生(農学部4期生・21年度卒)の大橋さんも社員として就農されています。受講生は、大橋さんの案内で圃場を視察しながら森西の集会所まで移動しました。

大橋さんから説明を受けます

集会所では、みなくちファームさん併設のカフェのお弁当をいただきました。みなくちファームさんでとれた野菜もたくさん使われていて、とても美味しかったです。

大和ルージュを散らした松風が絶品でした!

昼食後は、森西の歴史的遺産を視察する山登りに挑戦しました。里山の様子を見せていただきながら、室町期の山城(田屋城趾)を皮切りに明治期に掘られた農業用水トンネル(稲山隧道)などを視察しました。

いざ出発!

田屋城趾からびわ湖・竹生島を望む

稲山隧道取水口にある石碑

2日目は、いよいよ地域資源管理活動の体験です。水路の泥揚げや、電気柵周りの草刈りなど、受講生は現地の方々の指導を受けながら各々の分担箇所で作業に取り組みました。

水路周りの草刈り・泥揚げ

電気柵周りの草刈り

森西の棚田の風景

耕作放棄地を出すことなく棚田が維持されている背景には、こうした共同での資源管理活動の存在も指摘できます。農家・非農家を問わず、コミュニケーションの場として共同作業が果たす役割も大きいとのことでした。

作業後に一風呂浴びてサッパリした後は、地域の農家レストラン・ミネモリサンチのおにぎりと味噌汁をいただきながら獣害柵の管理など現地の特徴的な取り組みについてお話を伺いました。

貴重なお米!

現地実習に参加した受講生による事後レポートから、学生の文章をいくつか紹介します:

「地域の方から「労力と成果が見合わないこともあるが、それでもやりがいの方が大きい」という話を聞きました。農業や地域活動には目に見える成果だけでなく、その活動を続けることで得られるものがあるという点が、非常に興味深く、心に残っています」

「今回の森西の方々との交流を通じて、人と人との繋がりの重要性を再確認した。森西地区の方々は、年齢差に関係なく、誰もが対等に、協力し合って生きていた。こうした風景は現代では失われた光景であると感じていたため、そこに一時でも混ざることが出来たのは、とても嬉しかった。」

「実習で印象に残ったことは、普請での川の清掃です。正直、大変で汗だくでした。しかし、担当の方が声掛けてくださったり応援してくださったりして、とても楽しかったのを覚えています。地域のために何かをすることは、小学生以来してこなかったのですがこれからは参加していきたいと感じました。」

今年度も現地の方々のご協力のもと、事故なく安全に現地実習を終えることができました。区長の小川様、実習の窓口となっていただいた水口様をはじめ役員、区民の皆様、そしてみなくちファームの皆様にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。(山口)