植物生命科学では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。
ナスは日本の代表的な夏野菜です。
龍谷大学の牧農場でも、今年もたくさん収穫されていました。
私たちが食べているナスは、もちろん実の部分です。
その実をつけるために、ナスの花にはいろんな工夫がされています。
◎ナスの花について◎
このようにナスの花は下を向いて咲く様子がよく見られます。
中心にある細長く先端が緑の器官がめしべで、めしべを取り囲むように6本のおしべが配置されています。
花粉はおしべの黄色い葯の中で作られます。
葯の先端がフタのように開いて(裂開といいます)、花粉が出ていく仕組みになっています(→の部分)。
花が下を向いていることで、めしべの先端(柱頭)に花粉が付き、受粉できる、というわけです。
上の花は1枚目の写真の花と比べて決定的な違いがありますが、わかりますか?
正解は、中央の薄い緑の組織(めしべの柱頭)の位置です。
栄養不足や気温・日照が生育に合わないと、めしべの長さが短くなることがあります。
めしべが短いと葯が開いても上手に受粉できず、花は落ちてしまいます。
今は実を育てられそうにない、とナスが判断しているのですね。
◎雄性不稔◎
私は、ナスの雄性不稔について研究しています。
雄性不稔とは花粉が上手く作られない性質のことです。
正常なナスでは葯が丸々と太っているのに対し、雄性不稔性のナスでは、葯が扁平になっています。
顕微鏡で花粉を観察してみると、両者の差は明らかです。
雄性不稔のナスの花粉では、受精して種をつくることができません。
つまりその系統は途絶えてしまいます。
そこで雄性不稔ナスを育てる時には、正常ナスを一緒に育てて、花がついたタイミングで人工交配する必要があります。
できたナスから種をとり、系統を維持していきます。
この雄性不稔ナスを使って、不稔を引き起こす遺伝子を突き止める研究を行っています。
(辻村真衣)