トマトの定植実習

 59日に遺伝子型調査を行ったトマトを定植しました。雨が降りませんようにと毎日、お祈りしたおかげか、当日はきれいに晴れました。私は実習のことで頭がいっぱいで気づきませんでしたが、目が覚めるほどきれいな青空だったんですね。気温もそれほど高くなく、まさに実習日和でした。

きれいな青空

さて、実習日和と書きましたが牧農場の圃場は作物学研究室の大門先生が大好きな水田転換畑です。当日晴れていても、数日前に雨が降ると土が水を含んでしまって圃場作業はできません。本当は畝立て、整地、マルチ張り、定植の予定でしたが、今年は残念ながらマルチの手直しだけです。基本的に圃場での作業の決定権は教員ではなくお天道様が握っています。

マルチの手直し

各班、単為結果性遺伝子pat-kの遺伝子型が野生型ホモ(非単為結果性)と変異型ホモ(単為結果性)の植物体をそれぞれ3個体(ヘテロ6個体も)定植しました。これからそれぞれの植物体で花の形態、果実の成熟日数や収量を調査して、pat-kの導入がこれらの特性にどのような影響を及ぼすか調査していきます。収穫は予定より少し遅れて,6月の終わりくらいからになりそうです。


(滝澤)

鳥居啓子さん講演会開催

鳥居啓子さんは、著名な植物学者です。

現在、テキサス大学オースティン校 分子細胞生物学 ハワードヒューズ医学研究所 教授(ジョンソン・エンド・ジョンソンセンテニアル冠教授)、名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 主任研究員・客員教授などを兼任されています。

2024年春の紫綬褒章受賞に合わせて帰国された折に、龍谷大学理事で元植物生命科学科 教授の岡田清孝先生を訪問されることになり、講演をお願いして実現しました。

講演会は、516日(木)12:30-13:303回生の「基礎演習II」の一環としておこないました。農学部全体に公開され、会場の教室は満席となりました。

「葉の気孔から発生の謎に迫る」というタイトルで、モデル植物シロイヌナズナで発見したMUTE, SPEECHLESS, SCREAMなど因子が、気孔形成過程で働くメカニズムをお話しいただきました。気孔は、植物の葉の裏でガス交換をおこなう器官で、植物の口といえます。鳥居さんは、発見した因子に口に関係する単語を用いています。

複雑なメカニズムを噛み砕いて、ユーモアを交えながら解説いただきました。例えばERECTAというペプチド(短いタンパク質)が2種類あり、競合することで気孔ができたりできなかったりすることを、姉妹が消しゴム付き鉛筆を引っ張りあっている可愛いイラストで表現されていました(鳥居さんのHPで見ることができます:https://www.plant-stomata.org)。

形質転換によって因子を過剰発現させたり、因子が欠損した変異体を使ったりして、気孔だらけになったり、気孔がなくなったりする表皮の顕微鏡写真がとても美しかったです。顕微鏡写真は、学術雑誌の表紙に何度も採用されたそうです。

植物の進化と気孔の関係についてもお話しいただき、海草アマモでは気孔を作る遺伝子一式が失われ、気孔がないというお話も印象的でした。

学生たちは、研究内容の面白さはもちろん、鳥居さんがとても楽しそうに研究の話をされる様子にも感銘を受けたようです。インスピレーションや刺激を受けてもらえたでしょうか。

鳥居さんより、「たくさんの学生さんに聴講してもらって嬉しかった」とのコメントをいただきました。

鳥居さん、お忙しいなか貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

(浅水)



 

 

【生命科学科・実習シリーズ】 古本先生

 422日からは4回に渡って、古本先生の実習が行われました。

「光合成ストロマ反応の鍵酵素RubisCOの小サブユニット遺伝子のmRNA発現を調べる」という内容です。

植物からgenomeDNAの回収、mRNAの回収と逆転写、更にPCRと電気泳動を行います。

分子生物学実験の基本技術が詰まった実習です。



材料はブロッコリースプラウトを使いました。

ここから根・茎・葉の3つの組織に分けて、DNA抽出・RNA抽出作業を行いました。



回収した核酸には、その材料が持つ全てのDNAまたはRNAが含まれています。

そこで、RubisCO遺伝子だけを特別に増やし、増え方の違いを調べます。

増やす手段として、PCRPolymerase Chain Reaction法を使いました。

PCRの原理を学び、2のべき乗で増えるとはどういうことかを考えました。

 

ドラえもんの小道具「バイバイン」は2のべき乗で増える例です。

5分で2倍に増えるペースだと、7時間後には地球の体積を超える、という計算になります。

PCRも同じ勢いで増幅できます。

 

増やしたRubisCO遺伝子の検出は、アガロース電気泳動で行います。

どのサンプルをどこに入れるのか、間違わないようにそれぞれの班で工夫が見られます。

正確に結果を考察するために大事なことですね。



先生から泳動結果について解説してもらいました。

各班、自分たちの結果を考察して課題を解きます。

Genomic DNAmRNA、イントロン、エキソンなど、分子生物学で常用されるキーワードについて理解を深め、PCRや電気泳動などの技術についても理解できたのではないでしょうか。


                                    (辻村)


【生命科学科・実習シリーズ】 塩尻先生①

生命科学科では、3年次前期の月曜・火曜の午後に実験実習が行われています。

57日は、アブラナ科植物についてや、その植食性昆虫の共進化についてなどを学び、実際にアブラナ科蔬菜を栽培する準備を行いました。





4月に種から発芽させておいたアブラナ科植物(今回はダイコン、コマツナ、キャベツ)の苗を鉢に植え替えて栽培し、6月の実習で植物についている虫を観察します。栽培中、虫がついていたらどんな虫種なのか、よく観察して記録しておいてください。ひとまず枯らしてしまわないように…班員で協力して世話をしていきましょう。




(中田)


播種したトマトたちの出番がやってきました。

  35日に播種したトマトを使った実験が412日から始まりました。1回目と2回目の実験はトマトの葉からのDNA抽出、PCR、制限酵素処理、電気泳動にトマト苗の移植と盛りだくさんです。DNAマーカーによる遺伝子型調査から単為結果性か非単為結果性か判別し、各遺伝子型の苗をポットに移植します。

左から3月11日,14日,21日の苗の様子

トマトの葉からDNAを抽出後、PCRにより目的領域の塩基配列を増幅します。増幅したPCR産物をアガロースゲルのウェルへ入れていきますが、久しぶりのピペットマンの操作で、皆さん、緊張しながらの作業でした。

ピペットマンでPCR産物をウェルに注入

上だけバンドが出ているのが野生型ホモ(非単為結果性)、二本バンドが出ているのがヘテロ、下のみバンドが出ているのが変異型ホモです(単為結果性)。少しバンドの分離が悪いチームもありましたが、皆さん、きっちりバンドは出ていました。移植した苗は牧農場に移動し、59日に定植予定です。とりあえず当日、雨でないことを願うばかりです。

Del22の電気泳動写真

野菜園芸学研究室 滝澤