卒業式が行われました。

2022年3月18日、龍谷大学農学部および大学院農学研究科の卒業式が行われました。

9号館正面入り口の様子。教職員・校友会からのメッセージボードがありました。

ここでは植物生命科学科に関係する卒業式の様子をお伝えします。体育館でのコロナ禍対策下での全体の卒業式の後、各学科ごとに別れての卒業証書や成績表、記念品等の授与が行われました。

まず、学科主任の浅水先生からのお話に引き続き、表彰を受けた学生への賞状授与が行われました。この学年は4年間の大学生活のうち、最後の2年間がコロナ禍の時期と重なりました。特に、社会も大学も適切な対策法を模索していた2020年には厳しい外出制限・大学入構制限などのもと、初めてのオンライン授業や制限下での卒業研究開始など、とても大変な時期を過ごした学年だったとも言えます。その中でも頑張って学業を最後まで続けてやり抜き、この日を迎えた卒業生に、浅水先生からも労いの言葉がありました。

記念品の中には、龍大らしい?ふくさ(社会人になると持っていると重宝する!)や瀬田キャンパスには存在しないはず?の某店舗のタンブラーなどがあったようです。



その後は、各研究室ごとに別れての卒業証書や成績表の授与です。教員が研究室の卒業生一人一人に声をかけつつ、手渡ししていきます。いろんな性格、特徴を持った学生が居ていて、一人一人渡すたびに、それぞれの学生とのいろんな思い出が頭を巡りました。この日ばかりはさすがにみんないい笑顔ですね!

この日は学科のみならず、実は大学院(植物生命科学科の研究室は、大学院では「農業生産科学モデル」となっています)の卒業式も並行して行われていて、別室で修士課程終了の学位記授与が行われました。こちらはコロナ禍での2年間がそのまま修士課程在籍時期だったので、とても大変だったと思いますが、よく頑張ってこの日を迎えました!

そして、順次、研究室ごとの写真撮影大会が自然発生していきます。密を避けるための部屋の人数制限や座席指定制など厳しい感染対策のもと行われた卒業証書の授与式ですが、集合写真の時だけは最後の思い出に、大騒ぎしないよう細心の注意を払って、静かにマスクを外して粛々と記念撮影です。


全体での式の前後には、思い出の研究室で、集合写真を撮ったり、思い出(?)のカードゲームに耽ったり、思い出の先生と記念撮影を行ったり、と、それぞれ卒業生が思い思いの時間を過ごしたようです。4回生を見送りに来た3回生もいたり、、。卒業生の皆さんが、今後の何かの折にまた気軽に研究室に立ち寄ってくれる日を教員一同楽しみにしています。


本学大学院にさらに進学される卒業生・修了生も居られますが、今日、こうして卒業・修了を迎えられたみなさんが、龍谷大学農学部植物生命科学科で学ばれたことを力にして、幸せな人生を過ごしてくれることを学科教員一同、祈念しています。祝・御卒業!!



(別役)






資源生物科学科を志望する皆さんへ④ ~減肥料・減農薬でパンの原料となるコムギを栽培してみませんか~

 地球規模の気候変動や最近の世界情勢の変化により,食糧の安定生産技術の開発はとても重要な課題となっています.栽培技術の一つとして,有機(オーガニック)農業,Bio農業,生態農業という農法を聞いたことがあるでしょう.定義はいろいろですが,化学肥料や化学農薬を使わずに農作物を栽培する方法です.私たちの研究室では,パンの原料となるコムギを,肥料や農薬を使わないで栽培する技術について研究しています.その一つとして,ヘアリーベッチというマメ科作物とコムギをいっしょに栽培します.これを混作といいます(写真1).

写真1 コムギとヘアリーベッチ の混作
 マメ科は土の中にいる根粒菌と共生して,大気中の窒素ガスをアンモニアに還元します.これを窒素固定といいます(写真2).それをコムギもうまく利用できるように両作物を混作をします.牧草地では,クローバやアルファルファとイネ科の牧草類が,しばしばいっしょに栽培されていますので,北海道や長野県などの牧草地に行くことがあれば,注目してみてください.

写真2 ヘアリーベッチ の根粒(赤いと窒素固定活性が高い)

 私たちが目指すのは,先ずは減肥料,減農薬,そして農業を通じた低炭素社会の実現です.混作による窒素肥料の削減量を数値として示すことが必要です(写真3).温暖化をはじめ,変動する気候条件下におけるマメ科作物の生産について,龍谷大学農学部農場の風景とともに下記のサイトにアップしていますので,そちらも閲覧してみてください.

https://adaptation-platform.nies.go.jp/articles/case_study/vol32_shiga.html


写真3 ヘアリーベッチ を刈るとコムギに窒素が供給される(緑が濃くなる)

(作物学研究室 大門)









菜の花フェスティバルに参加してきました!

 

3月20日に牧農場で開催された菜の花フェスティバルに、学生や大学院生と一緒に参加してきました。

第一部は菜の花教室ということで菜の花に関する勉強会でした。午後からの第二部では、田上中学校の吹奏楽部の皆さんの演奏会があり、その後、菜の花摘み体験をさせていただきました。
現在、学生達が摘んだ菜の花を使って、研究室で菜の花漬けを作っています。どのような漬物になるのか楽しみです。 フェスティバルの実行委員会の皆さま、上田上自治会の皆さま、本当に有難うございました。 島



資源生物科学科を志望する皆さんへ③~病害虫の侵入をSTOP!~

 ここ2年間はコロナ禍のため減少してはいますが、近年は海外からの農産物輸入や海外との人的交流がますます増加し、多様化する傾向にあります。このように海外との物流や交流が活発になりますと、海外の病害虫が日本へ侵入する機会が増えることになります。

 当研究室の研究対象である「線虫」という作物の寄生虫についても、2015年にジャガイモに寄生するジャガイモシロシストセンチュウが、2017年にはアブラナ科野菜などに寄生するテンサイシストセンチュウが相次いでわが国で初めて発見され、現地では大きな問題となっています。

 このような外来病害虫を水際で食い止めるべく検疫業務を行っているのが、農林水産省に属する植物防疫所です。日本の主要な国際空港や港に検査所が置かれ、日夜海外からの野菜・果実・切り花・鑑賞木などの病害虫検査を行っています。植物防疫官は専門的な病害虫同定の訓練を受け、輸入貨物の検査をするとともに、侵入した病害虫の検出や分布の調査を行います。

 応用線虫学研究室では、植物防疫所における病害虫調査の現場を実際に見学するため、横浜市にある横浜植物防疫所・調査研究部にお邪魔しました。



 植物防疫所の歴史と業務についての解説やDVDの視聴が行われた後、線虫担当の方と害虫担当の方に研究室や温室の設備を案内していただきました。線虫の形態学的な調査を行う面では恐らく日本で一番設備が整っているのではないでしょうか。高性能の顕微鏡や線虫分離の道具類が所狭しと並んでいました。当研究室のゼミ生にぜひ就職してもらいたい職場の1つです。
                             (応用線虫学研究室 岩堀)

学生の研究成果が商品になりました(植物生命・島研)

 「発酵食品」という名前はよく耳にしますが、どういうものかご存知ですか?龍谷大学農学部が位置する滋賀県は、発酵食品の生産・利用が伝統的に盛んな地域です。実は発酵食品は微生物の働きによって作られます。そのような「食」に関わる微生物を科学的に研究しているのが、植物生命科学科の島 純 先生が主宰される微生物科学研究室です。(余談ですが、「伝統」と述べたように、我々人類は微生物の存在が知られていなかった遥か昔から、経験的に自然界の微生物を選んで、飼い慣らして、発酵食品というものを作ってきたようです。想像してみてほしいですが、とてもすごいことですよね。)

このたび、微生物科学研究室の4回生・喜田美月さんの研究成果が、大津市の地元3団体(近江麦酒、近江おごとハーブガーデン、大津市企業局)との協力でクラフトビール「THE LOCAL」となって売り出されることになりました。

喜田美月さん(滋賀県庁での記者会見)


こんなビールです。

研究成果の詳細や、島先生と喜田さんによるコメント(農学部HP)

クラフトビール「THE LOCAL」に関する本学からのニュース

微生物科学研究室

島先生

このブログでも度々紹介しているように、「研究成果」は論文や学会での発表という形で公開されます。植物生命科学科で言うと、例え、小さなことでも「生命のしくみ」に関する新しい発見をしたことを国内外の研究者界隈や産業界に知らせることで、「生命のしくみ」の研究に生かされて、そういう活動が積み重なって誰も知らなかったような事実が明らかとなっていきます(そして、教科書に新しい項目が増えたり、書き変わったりして、受験生の新たな負担になってしまいますが、、笑)。そして、そういった発見が、いつかどこかで産業や医療に生かされたりすることで我々の生活に役立っています。

微生物科学研究室の4回生(右から二人目が喜田さん。今日は卒業式です)

今回の喜田さんの研究成果は、ダイレクトに新しい商品を生み出すことにつながっていて、とてもすごいことだと思います。でも、既に卒業された微生物科学研究室の先輩の研究成果が今回の研究の基盤となっていて、さらに多くの関係者のご協力があったことで生まれた成果であることも忘れてはいけません。いろんなこと、人、モノが繋がっているんですね。次に何か商品を生み出したり、そのタネとなる成果を挙げるのはあなたかもしれませんよ(そのためにもしっかり勉強しましょう!)。

(別役、写真提供・島)


学生が研究会で研究成果の発表

  2022317日(木)にオンラインでカメムシ研究会が開催され、応用昆虫学研究室修士1年の鳥飼悠紀君と4年生の阿南創君が研究成果の発表を行いました。鳥飼君は「イネカメムシ越冬成虫の活動開始時期」、阿南君は「クモヘリカメムシの卵寄生蜂と寄生バエの種と寄生率の推移」と題して発表をしました。沢山の質問もあり、今後の研究の進め方に非常に参考になったと思います。このカメムシ研究会ですが、毎年3月に開催されます。以前は対面で行われ、龍谷大学でも開催したこともありますが、コロナの影響で昨年からはオンラインで開催されています。オンラインだと、出張を伴わずに気軽に参加できることもあり、都府県試験研究機関の研究員の方々の参加も多く、色々な地域の農業現場の様子を知ることができ、有意義な時間を過ごすことができました。

(応用昆虫学研究室:樋口)




大学院生 鳥飼君が高校生と交流

 2022219日、応用昆虫学研究室所属の大学院生である鳥飼悠紀君が、京都府立須知高等学校の「大学院生と語る会」で高校生と交流をしました。まず、高校時代の学習や部活、大学での研究内容や大学院について紹介したのち、高校生たちからの色々な質問にも答えました。カメムシを研究対象にしたきっかけ、龍谷大学を受験することにした決め手、受験勉強の仕方、苦手な科目の克服方法など、質問は多岐にわたったようです。高校生からは「大学生活が具体的に分かった」、「進路実現に向けて聞いたお話を参考に頑張りたい」、「自分のやりたいことを明確にし、好きなことに熱中できるような大学生活を送りたい」というような感想が寄せられました。高校生と大学院生との交流を通じて、農学部へ、龍谷大学へ興味をもってくれる高校生が増えればいいと思います。

(応用昆虫学研究室:樋口)




Aroma Research の雑誌に載りました(同じ号に龍大関係者3件も!)

 2022年 第23巻 第1号の Aroma Research (香りの機能性<生理・心理的作用等>と紅葉の学際的専門誌 に、龍大農学部関係者の論文が3つ載りました。

https://www.fragrance-j.co.jp/book/b601079.html


一つ目:小特集「人と暮らす 匂いと暮らす」に

・匂いを介した植物間コミュニケーションを農業に展開する:塩尻かおり

で、植物が傷つけられた植物の匂いを受容すると、病害虫に対する抵抗性を高めるという機能をもちいて、それをイネやダイズ栽培に活かした実証研究を紹介しました。


2つ目:小特集トピックス

・香辛料の香りをつかった衛生害虫防除:川東卓就・塩尻かおり

で、農学部の1期生がハウス食品と製品開発プロジェクトで、スパイスを使用した新たな製品考案を目指したものです。そこで、カルダモンの香りがショウジョウバエを忌避することを見つけました。


3つ目:報文

・年代によりバラの香りが人に与える影響を客観的・主観的に評価する:水野久代・山崎正幸ら(他8名)

で、社会人大学院生の水野さんの研究が論文になったものです。バラの香りをかぐとリラックスすることを科学的に証明したものです。興味深いことに、年齢によって効果が異なることも明らかになりました。


また、最後に、書評として、私のかいた「かおりの生態学」が出ていました。山口大の松井健二教授が書いてくださっていました。やったー!


(塩尻)







永野先生のプロジェクトがJST創発的研究支援事業に採択!

 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は数々の大きな学術研究費の配分を行なっている組織です。JSTに限らず、研究費配分機関からの公募制研究費(競争的研究資金などと呼ばれます)は、ほとんどの場合、3年程度(長くても5年程度)の限られた研究期間のみ研究費を支援するシステムになっています。

しかし、研究活動とは、どんなに素晴らしい計画でもそもそもなかなか予定通りに進むようなものではありませんし、一つ課題が解決してもすぐ次の課題が出てくるようなものです。さらにもっと言うと、その研究を続けたければ3年毎に研究者は研究費に応募し続けなければいけない、ということにもなっています。

こういった問題点を解決するために、JSTにおいて「創発的研究支援事業」という新たな事業が創設され、特に優れた研究提案に対して原則7年、更なる審査を経て最長10年間の研究費支援を約束する枠組みが作られました。とても素晴らしい取り組みですが、「特に優れた」とあるようにとても狭き門となっています。

この創発的研究支援事業に、植物生命科学科の永野惇准教授による「野外トランスクリプトームの化学的制御手法の確立」と題したプロジェクトが採択されたことが先日、発表されました。

採択者一覧


永野先生からのコメントです。

「今回、採択いただいた研究はこれまで農水省やJSTの支援で進めてきたものを更に発展させるものです。実際の野外圃場を用いた研究は、年に一度しか栽培の機会がないので、どうしても時間がかかります。そのため、7年以上の長期にわたって支援していただけるのはとてもありがたいです。」

植物生命科学科の教員として、ぜひこの大きな研究プロジェクトを成功させ、ぜひ植物生命科学を一新するような新しい研究成果を発表していただきたいですね!

余談ですが、このプロジェクトでは研究プロジェクトに関わる大学院生への支援も含まれており、研究推進のみならず、人材育成と言う意味でも重要なものです。永野研での大学院研究に関しては永野先生に相談してみて下さい。




(別役)




岡田清孝 元教授が「みどりの学術賞」を受賞!

 我が国には、国内の植物(森林、緑地、造園、自然保護なども含む)に関わる研究や技術開発に大きな功績のあった方々を表彰する「みどりの学術賞」というものがあります。

その「みどりの学術賞」の令和4年(第16回)受賞者として、植物生命科学科の元教授である岡田清孝先生が選ばれました。

(農学部HPより)




岡田先生は2015年の本学農学部開設以来、植物生命科学科で特任教授として指導に当たられ、2018年度をもって退官なされた後、本学Ryukoku Extension Center(REC)でフェロー、顧問と歴任なさっています。


岡田先生の業績はいろいろなところで目にすることが出来ますが、植物形態形成機構解明に関わる数々のご研究成果はもちろん、忘れてはならないのがシロイヌナズナというモデル植物を用いた研究分野の立ち上げに、国内外で尽力されたことでしょうか。


農作物など様々な植物の研究が大切なのはもちろんですが、世界中の研究者が一つのモデル植物を用いて、形態形成や環境応答などさまざまな観点で遺伝学を基盤とした研究を進めようとした活動はとても意義のあることだったと思います。現在、高校・大学で扱うような教科書では、例えば、花形成のABCモデルなど、植物という生き物のしくみが当然のように記載されていますが、こういった知識もシロイヌナズナ無しではまだ我々にもたらされていなかったかもしれません。特に、シロイヌナズナを中心とした日本の植物生命科学研究は世界的に見てもレベルが高いと認識されてきましたが、その礎を作られた重要なおひとりだったと言っても全く過言ではないと思います。


この賞は、コロナ禍以降オンラインでの受賞記念講演などが行われるようになっています。今回はまだ情報がありませんが、もしオンライン講演などが行われるようでしたら、またここでアナウンスしますのでぜひ聴講してみてください。


いずれにせよ、学生の皆さんは、そのような先生がこの学科で教鞭を執られていたことをぜひ覚えておいて下さいね。まだ歴史の浅い本学農学部植物生命科学科の、忘れてはならない「歴史」の一つです。ちなみに先生はまだRECフェローとしてご在籍なので、瀬田キャンパスでお見かけすることもあるかもしれませんよ。




(別役)


テレビ番組に協力?

卒業式を控えた3月初頭、別役・塩尻で某テレビ局の取材に協力しました。


圃場の農作物はもちろん、雑草も含めて、自然界の植物はさまざまなストレスに曝されています。病害虫による害はもちろん、気象条件や栄養条件など多岐にわたります。植物の特徴の一つとして、根を張るという生き方を選んでしまったが故に移動することが出来ないことが挙げられます。このことは動物のように嫌なもの、嫌な条件から移動して逃げることが出来ないことを意味します。それにも関わらず、地球上の至るところで植物は栄えており、そんな植物が持つ高い環境応答能力(ストレス対応能力)の仕組みを明らかにする研究が世界中で進められています。今回の番組企画は、今明らかになりつつある植物の環境応答能力を一般にわかりやすく紹介する目的とのことで、生物の素晴らしさを伝える数回シリーズ内での一つとして企画されているそうです。


植物の環境応答の一つとして、今回は農業でもよく問題になる昆虫の食害に注目します。昆虫食害は植物に防御応答を引き起こすことが知られていますが、その防御応答は植物個体の組織の中で、いつ、どこで活性化するのでしょうか?食害部のみ?それとも全身?そんな疑問に、別役研で用いている植物免疫関係遺伝子の発現を可視化できる植物を、塩尻研で研究対象として扱っている食害昆虫に食害させて、植物の防御応答が活性化する様子の一部始終を捉えることを目指しました。

別役研の研究内容

塩尻研の研究内容

テレビ放送に耐えるような高精細な像を撮影するため、今回は横河電機さんのご協力も得て、高解像度で美しく撮影できる特別な装置を研究室の顕微鏡に取り付けて撮影に挑みました。大改造作業でしたが、手早くスムーズにやっていただき、びっくりするくらい綺麗な像を高速撮影することができるようになりました。放送決定前なので、どんな様子だったかだけチラ見せです(図)。

図. 今回の改造顕微鏡
(蛍光撮影のため手作り暗室状態にしています。画像は放送までナイショです。)


実際の撮影作業では、別役研で予め用意した撮影用の免疫遺伝子発現可視化植物に対して、塩尻先生が蟲使いのような手慣れた作業で食害させ、その様子の撮影を繰り返しました。さて、その結果やいかに?


来年度中旬くらいに放送予定とのことですが、そのまま放送に採用されても十分なクオリティのものが撮れたんじゃないかと思います。普段の研究では考えることもないレベルの精細さ、スピードが可能となり、あんなことやこんなことも?と次々に夢が湧いてきました。長いようで短い一週間でしたが、テレビ局、顕微鏡会社、そして龍大の別役、塩尻といった全く別の研究をしている研究者らのコラボ作業で出来た貴重な体験でした。実際に放送されることになれば、またここで紹介しますので楽しみにしていてください!!


(別役)


資源生物科学科を志望する皆さんへ② 〜木とケンカしない果樹栽培をめざして〜

 

果樹園芸学は、『木になるおいしい果実』と『おいしい果実をならせる木』を探求し、生産活動につなぐ園芸分野です。

植物にとって、降りそそぐ太陽光を独り占めできれば、他の植物が成長しにくくなるので、結果として養水分も独り占めできます。木本植物は、この生存戦略に則り、背を高く伸ばして他人のアタマの上に枝を出し葉を広げようと生きています。

果樹も木ですから、基本的に上に伸びたがっており、早く背が高くなりたいと願っています。しかし、彼らを栽培管理する人間としては、あんまり高くなると手が届かなくなる(ハシゴを使えばいいが、作業性が悪くなる)ので、手の届かない部分を切ってしまったり、横にひんまげたりします。そして、上に伸びようとする果樹との激しいケンカが始まります。

キウイフルーツはつる性果樹で、本来、他の植物に巻きついて上へ上へとよじ登ります。管理作業の手が届くよう、倒したり、針金に縛り付けたりして、水平方向に仕立てようとすると、いじられた枝はつむじを曲げてしまい伸びなくなり、基部から新しい枝を吹いて、その枝で自分の思い通りの方向を目指し直すという性格があります。

そこで、私たちは、キウイフルーツの枝をまっすぐ上に伸ばせばどのくらいキウイが喜ぶかを確かめるため、垂直に枝を伸ばすことのできる崖下(農学部横にある温室テラスの土台)に株を置き、水平にひんまげて育てる株と成長の諸様相を比較してみることにしました。キウイフルーツはどうやって喜びを表現するのかって?それは、今年調査をしてみてのお楽しみ。(果樹園芸学研究室 尾形 凡生)



キウイは、なかなか素直に真っ直ぐ伸びてくれない

農学部横のテラス上の温室群
農学部横のテラス上の温室群


温室テラス土台に置いたキウイフルーツの鉢植え





「物理学概論・実験」ー授業ダイジェストー

植物生命科学科と資源生物科学科では、中学校教諭一種(理科)と高等学校教諭一種(理科)の教員免許状の取得が可能です。

農学部専攻科目「物理学概論」と「物理学実験」のふたつは本免許取得のために必要な教職課程科目として位置付けられ、相互に関連させて進められています。(担当教員:舟橋春彦先生)「物理学 概論・実験」の授業の様子をダイジェストでご紹介します。

2021年度の受講生は、高校で物理基礎のみ履修し、センター試験(現:共通テスト)では物理を受験しなかった方が多数派でした。「物理学 概論・実験」では高校物理の履修を前提にせず、「公式」を丸暗記して計算するだけと誤解して敬遠されがちな「物理」のイメージをくつがえします。

『まずは(将来の)先生たちにたのしく物理を学んでもらいたい、その体験無くして、どうして(将来の)生徒さんたちにたのしい授業ができるでしょうか。』(舟橋先生 談)

自然科学の典型である物理学の考え方・方法・概要の体験的理解を目的として講義が行われていきます。力学や熱・光・波動・電気磁気・原子等を題材に、実験を交えながら授業が進みます。

            初回の落下実験での集合写真


「他人の脳ミソも使って考える」

授業は「仮説実験授業」の研究成果を活用し「問題提起→予想(議論)→実験」のステップを積み上げて行われます。

「こんな実験をしたら結果はどうなるか?」と問題が与えられ、結果の予想を選択肢の中から選びます。

クラス全体ではどう考えている人が多いのか、自分は多数派か少数派かを把握し、その後、なぜその予想を選んだのか、どんな理由も自由に発言していきます。

出してもらった理由に質問や反論が展開されることもあります。他人の発言を聞いて自分の予想を変更することも自由です。

「物理」は、具体的な内容よりも、その考え方に価値があります。「他人の脳ミソも使って考える」活発な議論を行うことで科学的な思考を鍛えます。




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*斜面の運動*

斜面の運動も落下運動のなぞを解くカギであると考えたガリレオの研究を辿ります。

予想と議論と実験を重ねながら「落下の法則を表す数式」を確かめ受け入れていく過程は、コウシキマルアンキとは全く違った脳ミソの使い方の体験です。



*電磁波*

電磁波の単元では外に出てバネを使って波を再現して貰いました。波長の短い波は、振動数が多いことを自分たちで感じます

ここでの予想・実験・体験に、<モデル>が活躍します。               モデルを通して見えないものが見えてくる、とても大事な、ものの観方・考え方です。



*スペクトル*

万有引力で有名なニュートンは、実は光と色についての研究でも偉大な成果を残しています。

彼はプリズムを使って光を分けて、光の色の性質を徹底的に調べ上げました。このプリズムで分けた光の色の帯を「スペクトル」と言います。

授業ではプリズムの代わりに回折格子を使って光を分けて観察しました。



*身の周りの放射線*

目で見ることができる光の波長は限られています。

電波や赤外線も見ることができませんが、携帯電話には受信を示すマークがあるし、赤外線ストーブでは暖かさを感じることができます。

放射線は人の目には見えませんし、感じることもできません。ですが「霧箱」という実験装置を使うと放射線の飛跡が観察できます。

「物理学実験」の一環として、自分の装置を組み立てる過程の記録を「他人」に伝わるようしっかり付けるトレーニングとしても取り組んでもらいました。

画像には、先端に取り付けた閃ウラン鉱から出ている放射線の飛跡が白くはっきり写っています。


*力学台車*

この単元では、力と加速度について学びました。

実験ではセンサーを力学台車に取り付け、レールを走らせたときにかかる力と位置をモニターします。センサーはパソコンにワイヤレス接続されており、リアルタイムにグラフが表示されます。

各班のデータを集めて、どんな法則が存在するのか検証しました。


今期の授業では在宅で受講する学生さんもいたため、オンラインでハイフレックス授業も実施しました。

実験室の学生さんが進んでカメラワークを行ってくれたおかげで、実験にも参加して貰うことができました。



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教員免許の取得を目指す学生さんが多いため、演示実験の見せ方にも気を付けています。

教員を目指す皆さんが、将来教壇に立った時に、本授業を思い出してたのしい授業の工夫に役立てて貰えたらと思います。


                                    (辻村)





資源生物科学科を志望する皆さんへ① 〜カミナリで環境に優しい農業を〜

 カミナリは、昔から「稲妻」や「稲光」と呼ばれています。それは、カミナリの多い年は稲が豊作になることが経験的に知られていたからです。カミナリはプラズマの一種であるため、プラズマによって大気中の窒素ガスが硝酸などに変化し雨水に溶け込み、それが窒素肥料となって稲の成長を良くしたものと考えられます。

 私たちは、この現象をフロー式プラズマ発生装置を用いて実験室内で再現し、大気中の窒素ガスから窒素肥料を作り出すことに成功しています。この装置により、必要な場所で、必要な時に、必要な量の窒素肥料を作り出すことができれば、窒素肥料の無駄がなくなり、土壌中に流出する窒素が減って、環境に優しい農業ができると考えています。

 環境問題に興味のある人は、一緒に研究してみませんか?

(植物栄養学研究室 玉井)

フロー式プラズマ発生装置

プラズマ点灯中

プラズマ処理水を用いたリーフレタスの栽培
左:
プラズマ処理水無し 右:プラズマ処理水有り