【植物生命・卒研紹介シリーズ 最終回】4回生の卒業研究発表会を行いました

 1月21日の午後、植物生命科学科では4回生の卒業研究発表会を行いました。

現4回生が3回生後期に研究室に分属されてからの研究成果をまとめたもので、12月末に卒業論文要旨として提出し、今回がその発表です。全研究室の卒業論文要旨をまとめた冊子が数日前に出来上がりましたが、298ページにもおよぶ大きな冊子になりました。複数人で一つの研究課題に取り組む場合もありますので、全部で73の研究課題の成果の集大成です。




今年は龍谷大農学部としては4回目の卒業生になります。本来なら、卒業研究発表会は大きな会場で一堂に介して各研究室の4回生がそれぞれの卒業研究をポスター形式で発表します。しかし、今年も昨年度同様に、コロナ禍での感染拡大防止のため、オンラインで行うことにしました。

オンライン開催の様子

昨年度

一昨年度

全73課題を、オンラインで20会場を設定し、一人当たり40分の持ち時間で入れ替わり立ち替わり入ってくる聴衆相手に説明してもらいました。自宅で発表を行う学生もいれば、研究室や自習室で行う学生もいましたが、もう皆オンラインには慣れたもので、整然と滞りなく進みました。4回生と教員はもちろん、2回生(授業の一環としての参加)や3回生も参加し、開始時点で既に180名も参加しての大きな会でした(開催中に300名を超えたとの声も)。



研究室でのオンライン発表の様子(竹中研)

それぞれ工夫を凝らしたスライド・ポスターを用意して、十分に発表練習して臨んだようです。伝えたいことは伝わったでしょうか?ちゃんと質問には答えることが出来たでしょうか?


想像以上に上手くいった研究もあったでしょうし、中には全く上手くいかなかった研究もあったかもしれません。そういった研究活動を、良いことも悪いこともきちんと考察して卒論要旨として記録に残し、理路整然と発表して、質疑応答することが特別研究で課題とされていることです。その点、みなさん、卒業に値する発表が出来ていたようで安心しました。


よく言われることですが、卒論・修論・博論など、一つの仕事をまとめる作業をするといろいろと見える景色が変わってきます。特に卒業研究の場合は、実験作業に慣れることや、卒論としてまとめる経験などを積むことで、12月くらいに突然伸びだす学生が多くいます(中には「やっぱり大学院に進学したくなった」などと急に言い出す学生も、、)。みなさんが今回の経験を経て大きく成長した姿で卒業後の人生を歩んでほしいと思います。


発表を終えて一皮むけた後の喜びの図(塩尻研)


ただ、やはり残念だったのはオンラインの開催になってしまったことです。オンラインだとどうしても、発表する側は聴衆の様子を見ることが出来ず、誰に向けて発表しているのか混乱して難しくなってしまいます。そして聴衆は気軽に素朴な疑問を質問しにくくなってしまいます。一番困ったのが、見ることができる数が限られてしまうことでした。来年度以降、また対面で開催できるよう対策を講じつつ、社会状況の改善を期待したいと思います。

4回生のみなさん、お疲れさまでした!

3回生、2回生のみなさん、来年度、再来年度の皆さんの発表を教員一同楽しみにしています!


(別役)







研究成果が論文として公表されました(植物生命・別役研)

植物と聞いて思い浮かべるのは、緑の葉や綺麗な花、果実などの目に見える地上部だと思います。しかし、植物は土の中にも根を張り巡らせています。この植物根部は、単に地上部組織を支えたり、水や養分を土壌中から植物体全体に吸い上げるためだけの組織だと思われがちです。


しかし、最近の研究で、植物は根部で土壌中の環境変動を知覚し、その情報を地上部組織に伝えているという報告が相次いでいます。その一つが乾燥で、土壌が乾燥すると根部でCLE25と呼ばれる遺伝子が活性化し、合成されたタンパク質の一部がペプチドホルモンとして地上部に運ばれ、地上部で気孔を閉じさせるという一連の乾燥ストレス応答反応を誘導することが明らかにされました。このようなCLEペプチドを介した根部と地上部の間のシグナル伝達は、例えば、マメ科植物では必要以上に根粒ができないようにするメカニズムにも関わっています。CLEペプチドは、これまで茎頂・根端や維管束にある分裂組織の活性制御など、形態形成において比較的近い距離にある細胞間で作用するペプチドホルモンとされていましたが、環境応答や根部―地上部という長距離のシグナル伝達に関わるものもあることが徐々に知られつつあります(表1)。



植物の長距離シグナル伝達でよく知られたものの一つとして、全身獲得抵抗性と呼ばれる現象があります。これは、一部組織が病原体に感染すると非感染部位でも抵抗性反応が誘導され、二次的な感染に対して強くなるという現象です。この感染部位から非感染部位へのシグナル伝達に関わる分子が明らかとなれば、農作物の病害防除にも大きく貢献する可能性があり、盛んな研究が進められてきました。これまでにいろいろな分子が明らかにされてきましたが、その仕組みはまだまだよくわかっていません。


そこで、我々のグループは、特に根から地上部へと伝わる長距離免疫誘導シグナルにCLEペプチドが関わっていないかどうかを調べました。植物を植えている土壌に植物免疫ホルモンであるサリチル酸(SA)を処理すると、地上部で防御応答が誘導される現象が知られています。我々は、土壌SA処理によって植物の全身獲得抵抗性反応の制御因子であるWRKY33と呼ばれる転写因子遺伝子が地上部で活性化されることを見出しました。また、土壌SA処理により植物根部維管束ではCLE3遺伝子の発現が誘導され、この根部特異的なCLE3発現が地上部でのWRKY33発現に必要であることも見出しました。さらに、CLE3遺伝子発現はSAのみならず、植物免疫を誘導する病原菌由来分子(PAMPsと総称されます)の処理によっても誘導されました。これらの発見は、根から地上部への防御シグナル伝達物質がCLE3ペプチドであること、そして、地上部で誘導される防御応答がWRKY33を介した全身獲得抵抗性に似た防御応答であることを強く示唆しています(図1)。微生物が多く存在し、病原菌リソースにもなりうる土壌環境(病原微生物の存在)を根で検知し、地上部での抵抗性を誘導するシステムかもしれません。今後、この仕組みが明らかになることで植物の生態がより深く理解できるようになったり、また、新たな農作物病害の予防や防除法の開発につながることが期待されます。


Root-specific CLE3 expression is required for WRKY33 activation in Arabidopsis shoots.

Ma D, Endo S, Betsuyaku E, Fujiwara T, Betsuyaku S, Fukuda H.

Plant Mol Biol. 2022 Jan 17. doi: 10.1007/s11103-021-01234-9.




なお、本研究は京都先端科学大学および東京大学との共同研究で行われました。また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)ERATO野村集団微生物制御プロジェクト、および、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18016)の結果得られたものです。

(別役)

基礎演習Ⅰでオンライン講演会

基礎演習1の第14回に「Global Food Security and Challenge of Agricultural Research」と題して、国立研究開発法人国際農林水産業研修センター生産環境・畜産領域プロジェクトリーダー、筑波大学客員准教授の村中聡様に講演をしていただきました。コロナ感染拡大防止のため、オンライン実施となりましたが、学生に聴講しやすくするため、オンデマンド配信としました。アフリカをはじめ開発途上国の農業問題やご自身の海外での仕事で実施した研究内容などが説明されました。そして、世界の食糧・栄養供給、農業研究の重要性、研究から開発、その利用までの道筋についても紹介されました。世界の食糧事情が抱える問題を解決するためにどのような農業研究をすればよいのか、また、近年注目されているSDGsと農業についても説明され、大変わかりやすい講演でした。

学生からのアンケートに、「これからの社会では言語的な問題だけでなく世界規模の視野で物事を考える事が必要である。多様性を受け入れる柔軟な思考を持った人材であることが求められると感じた。自分が農学部で何を学びたいのかを考え直すいい機会となった。」などのコメントも多かったです。

今後の勉強や就職活動などに活かしてくれることを期待します。この講演をきっかけに、国境を越えて国際的に活躍できる社会人になってほしいと思います。


(収穫後生理学研究室 ウェンダコーン)



基礎化学実験(1/17,18)

今回の2回生の基礎化学実験は酵素化学実験でした(担当教員:塩尻先生)。酵素反応の基礎を学び、これまでに酵素に関する講義等で履修した内容を実験で再確認することにより基本的な知識を整理します。

酵素は触媒活性を有するタンパク質で、酵素によって触媒される化学反応を酵素反応といいます。生物の営むほとんどすべての反応にそれぞれ応じた酵素があり、反応は生体の生存可能な条件下で円滑に行われることで生命は維持されています。酵素活性の測定実験は性科学研究において最も基本的で重要な解析法のひとつです。

酵素活性は反応温度、pH、イオン強度、共存する生成物の濃度等に依存するため、各々の酵素に適した反応条件を設定します。この実験では反応条件を変えることによって酵素活性がいかに変化するかを確認します。

1日目は、反応生成物であるpNPp-nitorophenol)の濃度を吸光度から求めるための検量線を作成しました。




2日目は、反応時間と反応生成物量の関係を見るための実験を行いました。

反応生成物量は反応時間に比例してどこまでも直線的に増加することはありません。直線部分を過ぎるといくつかの理由により反応速度は低下して、酵素活性の測定には不適当な条件となることを、実際に実験を行うことで確認しました。実験終了後は1日目に作成した検量線を元に反応生成物量を求めます。反応時間が長くなるとグラフが直線にならない理由を考察し、レポートにまとめることで酵素反応の理解を深めました。





今回で今年度の基礎生物学実習・基礎化学実習は終わりですが、3回生に進級してからも実験実習は続きます。この半年間で学んだことを忘れずにこれからの実習に臨んでください。

(中田)

【植物生命・卒研紹介シリーズ】No. 8 微生物科学研究室

  寒い日が続いていますが、 植物生命科学科の各研究室では卒業研究が佳境を迎え、4回生が熱い日々を過ごしています。学科の卒業研究発表会まで残り二ヶ月、各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?


微生物の力で人も環境に元気に!

微生物科学研究室(島)では、ワインを美味しくする乳酸菌の研究をしています!



 ワインつくりは農業と言われることがあります。甘い糖をいっぱい含むブドウが原料として重要というような意味です。そのため、品質のよいブドウが採れた年に、優れたワインが作られることになります。19xx年のワインは名品だと言われたりしますね。

 私たちの研究室では、卒業研究の一環としてワインを美味しくする乳酸菌を探しました。お酒をつくるのは酵母の役割ではと思われるかもしれません。たしかに、ブドウに含まれる糖をアルコールに変えてくれるのは酵母という微生物です。

 でも、乳酸菌という微生物の力でワインの美味しさをアップすることができるのです。ワインの醸造のあとに、リンゴ酸とよばれるすっぱい酸がいくらか残ります。酸味を好まれる方もいるのですが、すっぱさがないワインを好まれる方も多くいます。乳酸菌の中には、リンゴ酸を分解して乳酸というまろやかな味の酸に変えてくれる種類がいることが知られています。少し難しい言葉ですが、マロラクティック発酵とよびます。

 滋賀県の発酵食品から分離された乳酸菌の中にも、リンゴ酸を分解する種類がいるのではないかと考えました。卒論生が頑張って実験をして、目的にかなう乳酸菌を見つけてくれました。特徴のあるワインつくりに応用できますので、今後、地産のワインつくりに役立てられればと思っています。

                                       (島)

恒例のキャリアイベントを開催しました

 2022年1月19日

食料農業システム学科恒例のキャリアイベントを開催しました。


このイベントはこれから就活を本格化させる三回生が就活を終えた四回生の先輩から就活の実際や業界の情報を教えていただくものです。



今回は、感染症対策を徹底しながら、以下の六つのブースを作り、そこに四回生を2~3名配置し、三回生がそれぞれのブースを訪問するというスタイルで実施しました。

・公務員

・JA

・小売

・農業関連資材

・外食産業・食品メーカー

・金融・その他

就活の生の情報は先輩から教えていただくのが一番です。三回生は積極的に様々な質問をし、四回生は堂々と受け答えをしていました。

よいイベントになったと思います。

(学科キャリア委員:香川)



研究成果が論文として公表されました(植物生命・小野木研)

 収量やストレス耐性など、作物の様々な性質は遺伝と環境双方の影響を受けます。さらに「品種Aは湿潤な環境ではよく育つが乾燥に弱く、逆に品種Bは湿潤な環境に弱く乾燥には強い」といった、品種による「得手不得手」も存在します。このような「得手不得手」は専門的には「遺伝と環境の交互作用」といいます。

では「遺伝と環境の交互作用」はどのような遺伝子により調節されているのでしょうか。またどのような環境刺激(気温・降水量・日長など)がどの成育段階(播種期・出芽期・開花期など)に作用することで、交互作用が生じるのでしょうか。

作物にとって重要で根源的なこれらの疑問は長年研究が続けられてきていますが、いまだ全容を解明するに至っていません。

今回の論文ではこれらの疑問を少しでも明らかにするための新たな手法を提案しています。その手法を「Environmental Covariant search affecting Genetic Correlations」の略でECGCと名付けました。

論文リンク

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fgene.2021.803636/full


ECGCは完全にデータ駆動型、つまりデータとその解析を通じて真実に迫ろうとするアプローチです。今回はダイズの品種改良で得られた全国41試験地・過去55年分の栽培データ、気温や降水量などの栽培時の気象情報、624品種のゲノム情報を統合し解析することで

  • 品種の「得手不得手」にはどのような気象条件がいつ関わるか
  • その「得手不得手」にはどのような遺伝子が関与しているか
の一部を明らかにすることに成功しました。1例として、収量の「得手不得手」には播種期の降水量が関わっており(つまり播種期に多雨な状況に耐えられる品種とそうでない品種があり)、その「得手不得手」には12番染色体上の遺伝子が関与していました。


収穫が近いダイズ圃場

作物の「得手不得手」を理解するには、まだまだ多くの研究努力が必要だと考えられますが、データ解析を通じて少しでも貢献できればと考えています。


(生命データ科学研究室 小野木)

【植物生命・卒研紹介シリーズ】No. 7 生命データ科学研究室

 寒い日が続いていますが、 植物生命科学科の各研究室では卒業研究が佳境を迎え、4回生が熱い日々を過ごしています。学科の卒業研究発表会まで残り二ヶ月、各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?


データから生命や農業の新たな知識を得る

生命データ科学研究室(小野木)では、生命や農業に関係するデータの解析を通して新たな知識を得ることを目的としています。そのためゼミはデータ解析の手法や技術を身に付けることに主眼が置かれます。

3年生のゼミの様子です。この回はベイズ推定という統計学の一つの枠組みについて、パソコンを使った演習を交えて説明を受けています(難しかったようですが・・・)。


研究室で主に使うのはRというプログラミング言語です。無料で使用することができ、様々なパッケージ(目的に合わせたツールキットのようなもの)が用意されているので、生物学の分野でよく使われています。Rは以下から入手可能です。


ゼミ生は週一回のゼミや課題をこなしつつ、少しずつRのプログラミングを習得していきます。

ではどのような研究をしているか、具体例として4年生の寺本さんの卒業研究を紹介します。この研究ではダイズの品種改良で得られた過去55年分のデータを用いて、DVR(developmental rate)モデルという作物の開花期を予測するための数理モデルを最適化しました。DVRモデルは以下のような式をしています。
この式のAは気温感応性、Bは日長感応性、ThはDVR が半分に減る温度、Pcは生育が進む限界日長を表すパラメータです。ここにその日の平均気温(T)と日長(P)を入力すると、その日のDVRが出力されます。このDVRを出芽から累積していき、閾値Gを超えると開花するとします。一度これら5つのパラメータ(ABThPcG)を実際のデータに合わせて最適化すると、任意の気温・日長のもとで(つまり任意の環境での)開花日が予測できます。

このパラメータの最適化はコンピュータで行うのですが難しいことが知られています。そこで最適化の手法としてNelder-Mead法・群粒子最適化法・遺伝的アリゴリズムを比較し、どの手法が最もよいか調べました。結果、群粒子最適化法による最適化が僅かな差であるものの、最も良い開花日予測を与えることがわかりました。
Rスクリプトの例

またパラメータの最適化は品種ごとに行うため、最適化されたパラメータ値は品種の特性も表します。日本の多数の品種について最適化をしたところ、品種の適応地域によりパラメータ値に傾向があることもわかりました。以上の結果は作物学的に興味深く、現在寺本さんとともに投稿論文を準備しているところです。

(小野木)

土岐先生がEMBO Workshop “Plant Genome Stability Change (PGSC) 2020”を開催!

 「科学研究」は、大学や研究所、企業といった世界中の研究機関で行われています。そして、そういった研究活動を支える組織というものも世界中に存在しています。

それらのうち、ヨーロッパではEMBO(European Molecular Biology Organization)が、生命科学・分子生物学といった研究分野を支える組織として有名で、関連分野の研究の振興(各種シンポジウムや、最新の知識・技術習得のためのワークショップ開催、著名な研究論文雑誌発行、さらには各種研究費の管理・配分など)を一手に担っています。

そんなEMBOが開催しているWorkshopのうち、ゲノム編集に関するものがこの年末に開催され、植物生命科学科の土岐先生が共同オーガナイザーとして開催に尽力されました。以下、土岐先生からの開催概要を紹介します。最先端の生命科学研究現場の雰囲気を感じてください!

(別役)

>>>>>>>>>>>>>>以下、土岐先生からの開催概要<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

2021年12月5日から8日の日程で、EMBO Workshop “Plant Genome Stability Change (PGSC) 2020”が開催されました。PGSCは1998年から2~3年おきに開催され、植物のゲノムの安定性の維持機構を研究する基礎研究者と、植物ゲノム編集技術を開発する応用研究者が集う意欲的なワークショップです。

PGSC2020のホームページ(https://meetings.embo.org/event/20-plant-genome)には本ワークショップの開催目的として以下のような文章が書かれています。

About the Workshop

The aim of this meeting is to bring together the scientific community working with plants on subjects around genome stability and modification: DNA recombination and repair, chromosome stability, meiosis, replication, epigenetics and applications in plant breeding and genome engineering.

In a world faced with increasing populations and climatic change, the importance of understanding the fundamental processes used by plants to maintain and repair their genomes is of ever-increasing importance and urgency. These processes underlie both "classical" plant breeding and the development of novel technologies for crop improvement. The great success and rapid implementation of CRISPR/Cas approaches in model and cultivated plants underlines the importance of this meeting. Increasing fundamental knowledge on DNA repair and plant genome stability and development of novel biotechnological approaches will lead to optimized applications for crop plants such as cereals and vegetables.


私は2016年に本シンポジウムを湘南で開催し、今回はco-organizerとして開催に関わりましたが、コロナ禍で2020年開催予定だったのが1年延期になり、さらにオランダのライデンで通常開催の予定がオンライン開催になり、local organizerはかなり苦労されたと思います。

一方、オンライン学会の開催システムもこの1-2年でかなり進歩し、参加者はバーチャルで参加証を受け取り、会場のドアを開けて会場に入り講演を視聴し、休憩時間は別室で研究者と交流できるなど、リアルな開催にかなり近いシンポジウムが開催でき、シンポジウムは盛況でした。日本時間の夜8時からの開催のため睡眠不足になりましたが、久しぶりに国際ワークショップへの雰囲気を楽しむことができました。

具体的な発表内容についてはclosed symposium のため詳しくは報告できませんが、例えば、細菌から植物細胞に運ばれたT-DNAとよばれる一本鎖DNAが、植物ゲノムに組込まれる際に働く新たな因子が解明されたという発表がアグロバクテリウムのセッションである一方、ゲノム編集のセッションで組込みに働く因子の抑制により、T-DNAのランダム挿入が抑えられ、ジーンターゲッティングの効率が向上したという発表があるなど、基礎から応用まで一気通貫のワークショップならではの、ワクワクする時間でした。

次回は東欧の某国で開催する方向で話が進んでいますが、やはりリアルな開催が可能になり、世界中の研究者と直接ディスカッションしたいと願ってます。


EMBO Workshopについて

EMBOはEuropean Molecular Biology Organization(欧州分子生物学機構)という組織でヨーロッパにおける分子生物学の発展に寄与してきており、その活動はヨーロッパに留まらず、グローバルなものとなっています。またEMBOが発行するEMBO Journal誌(Impact Factor 11.598 (2020))は,分子生物学およびその関連分野における重要な論文が掲載される雑誌となっており、EMBOが開催するEMBO Workshopは分子生物学分野をリードする科学者が集う国際研究集会として有名です。