基礎化学実習(11/20、21)

122021日の基礎化学実習では、植物からの色素抽出と薄層クロマトグラフィーを使った色素の分離を行いました(担当:三柴先生)。


植物には様々な色素が含まれており、緑色1つとっても、クロロフィルaとクロロフィルbという2種類があります。

今回抽出する色素は、ベンゼン環や炭素鎖から成る有機化合物で、水にはほとんど溶けません。

そこで有機溶媒(ジエチルエーテルとメタノール)を使って色素の抽出を試みました。

材料には、ホウレンソウ、ニンジン、イシクラゲ(シアノバクテリア)を使いました。


材料を細かくきって、チューブに詰め、ペッスルですり潰します。

また、組織から出てくる水分を除くために、乾燥剤(シリカゲル)を添加しました。


ペッスルを使ってよくすり潰したら、有機溶媒を加えます。

すると、溶媒に色素が溶けだしてきます。

一晩放置して、さらに抽出を促します。

 

また、メタノールで抽出したホウレンソウの色素を使って、吸収スペクトルを測定しました。



分光光度計はこれまでの実習でも使いましたが、単一の波長の測定でした。

今回は、波長の大きさを連続的に変えて測定します。

この時の吸光度の値の変化を吸収スペクトルといいます。

吸収スペクトルを測定することで、その溶液がどんな色を吸収するのかを調べることができます。

                        (色見本はWikipediaから引用)

ここで少し知識が必要になります。

光とは電磁波の一種です。小さな粒が波のように押し寄せていると考えてみて下さい。

その波線の山と山の間の距離が波長です。

色は、光の波長の大きさによって決まります。

吸光度は、物質にある波長の光を透過させたときに、どれくらい光が吸収されたのかを表します。

結果を見ると、400nm500nmの間と650nm750nmの間にピークが見られます。

この波長は、紫~青とオレンジ~赤に対応します。

そしてピークが下がる波長、すなわち500nm600nmにあたる緑は吸収していません。つまり反射しているのです。なので、この溶液は緑色に見えるのです。

 


2日目は、前日に抽出した色素溶液を、TLC板を使ってクロマトグラフィーによる分離を行いました。

TLC板にはシリカゲルが薄く塗ってあります。

そこに混合物(ここでは色素溶液)を付着させて、先端下側を溶媒(展開溶媒といいます)に浸けると、展開溶媒がシリカゲルの面を上昇していきます。

付着させた混合物のうち、展開溶媒に良く溶ける物質は速く上昇していきますが、溶けにくい物質は移動速度が遅くなります。

この性質を利用して、混合物を分けることができます。

 

まずはTLC板に鉛筆で印をつけて、色素溶液を付着させる場所を決めます。



細いガラス管を使って色素溶液を吸い上げ、TLC板に付着させます。


付着させたら、溶媒に浸け、展開します。

溶媒に浸けた下から上へと色素が分離されていく様子がわかります。

予め決めていた位置まで溶媒前線が到達したら、展開漕からTLC板を取り出し、結果を観察しました。

左からホウレンソウ、シアノバクテリア、ニンジンの結果です。

サンプルによって、含まれる色素の違いが明瞭にわかります。


1日目に吸収スペクトルを測った時は単純に緑に見えていた溶液にも、黄色や緑、オレンジの色素が含まれていることがわかります。

ホウレンソウでは、過去の研究結果から中央上側の青緑の色素がクロロフィルa、その下の緑の色素がクロロフィルbであることが分かっています。

溶媒前線に対する各色素の移動度の割合を求めて(Rf値といいます)、どのような色素が分離できたかを分析を行いました。 

                                        (辻村)

基礎化学実習(12/14)

今回の2回生の基礎化学実習(担当教員:塩尻先生)は「揮発性物質と匂い」でした。

揮発性物質とは<通常の温度(常温・20℃程度)、圧力(1 気圧)で揮発しやすく、空気中に気体状態で存在できるもの>とされており、「匂い」は揮発性物質の一部です。数十万種類あるといわれる「匂い」を、ヒトはどのように識別しているのでしょうか? 嗅覚の仕組みとして、ニオイ分子を取り込む構造を持った嗅覚受容体があり、そこにニオイ分子が吸着することで、嗅細胞が刺激され電気信号へと変換されます。ヒトの嗅覚受容体の遺伝子は約1000種類あり、そのうち約400種類が機能しているといわれています。さらに、「匂い」は単一の化学成分で構成されているわけではなく、一般的に複数の揮発性分子の混合物です。そして「匂い」の違いは、匂い物質の、分子の骨格の違い・官能基の違い・立体異性体の違いが関係しています。

レモンなどの柑橘類の皮に含まれる芳香成分のリモネンを例に挙げます。

リモネンは光学異性体で構造が異なる(化学式は同じだが物性が異なる)d-リモネンおよび l-リモネンがあり、それぞれ匂いも異なります。実際に嗅いでみると、d-リモネンはいわゆるレモン系のフレッシュな匂い、l-リモネンはいわゆる樹木系の匂いがします。

 


 上記のことを踏まえて、今回の実習では各自でクラフトコーラの匂いをつくる実験を行いました。配布された匂い物質は、レモンエッセンス、バニラエッセンス、シナモンエッセンスの三種類で、コーラの匂いを主に構成する芳香成分です。

各自で、よりコーラの匂いに近くなる配合を試しました。運良く(!?)一度で正解した班もいれば、なかなかコーラの匂いを再現できずに苦戦している班もありました。たった1滴の差で異なる匂いになるのを実感したことと思います。「匂い」への関心が高まったのではないでしょうか。

ちなみに、今回の条件下での配合の正解は………ここに書くのは控えておきますので、現1回生の皆さんはぜひ次年度の実習で確かめてください!

 (中田)

【植物生命・卒研紹介シリーズ】No. 6 植物遺伝学研究室

寒い日が続いていますが、 植物生命科学科の各研究室では卒業研究が佳境を迎え、4回生が熱い日々を過ごしています。学科の卒業研究発表会まで残り二ヶ月、各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?


コムギ遺伝資源の有効利用​

植物遺伝学研究室(竹中)では、コムギとその近縁種を研究材料として扱っています.コムギに様々なストレスを与えて生育に与える影響を調査したり,ちょっと変わった特徴を持った系統と標準系統を交配し,その形質がどのような遺伝子によって制御されているのかを明らかにすることを目指して研究をしています。

 まずは最近のガラス室のようすから,今年も400系統をこえるコムギを栽培しています


コムギは秋に種をまき,春に収穫する冬作物です。毎年,研究室に配属された3年生は自分たちが卒業研究でつかうコムギの栽培から開始します。

栽培はガラス温室だけでなく龍谷大学牧農場でも行っています。

食の循環実習で経験しているとはいえ,なれない農作業に四苦八苦しながら栽培準備をしています。そろそろ卒業研究をまとめる時期ですが,昨年に経験済みの4年生が手伝ってくれました。経験者がいると心強いです!しかし,4年生はそろそろ卒業研究をまとめる時期,こんなことをしていて大丈夫なのでしょうか?

 

 
冬作物はどうしても植物の生育期間が就職活動と重なってしまいますが,ちゃんと試料を保存しておけば大丈夫,春に就職活動の合間を縫って採集していたコムギの葉を顕微鏡で観察するために染色中。


種子を使った実験は年中行うことができます。水ストレスを与えた発芽試験の結果を測定中。はじめはぎこちない手つきでしたが,もう慣れたものです。


卒論の締め切りは今週の金曜日(24日の17時),とうとう締め切りまで1週間を切ってしまいました。気持ちよくクリスマスと新年を迎えるためあとひと頑張り!


(竹中)


今年も柿祭りをお手伝いしました

2021年11月28日、食料農業システム学科が連携協定を結んでいる(ブログ記事ニュースリリース)高島市今津町南深清水地域で、今年で4回目となる柿祭りが開催されました(第1回の様子第2回の様子)。今年も山口ゼミを中心に、10名の学生がボランティアスタッフとしてイベントをお手伝いしました。

前日は雹まで降る荒天でしたが、イベント当日はこれ以上ない快晴で、スタッフも美しい風景を堪能しながらの作業となりました。 
テント設営から作業はスタートしました
受付のお手伝い

学生スタッフは、100名近い来場者の案内や柿もぎ体験補助などに大活躍しました。今年度はGrowという学生団体もイベントの企画から参加していて、他大学の学生との交流の機会にもなったようです。連携活動の取り組みの輪が、少しずつ大きくなってきていることを実感しました。

コロナ禍で地域のイベントも中止や延期が多いなかで、柿祭りは地域の方も参加するイベントとしてその重要性を増してきています。現地は柿の収穫が大詰めに入っていて皆さん大忙しのため、学生スタッフの存在は欠かせません。参加学生の中には深清水を初めて訪れた学生も少なくありませんでしたが、自らもイベントを楽しみながら、地域活性化の取り組みを現場で体験しながら学びました。

スタッフも一緒に柿もぎ

当日の様子は、滋賀県のホームページでも紹介されています。ぜひご覧ください。(山口)

【植物生命・卒研紹介シリーズ】No. 5 化学生態学研究室

寒い日が続いていますが、 植物生命科学科の各研究室では卒業研究が佳境を迎え、4回生が熱い日々を過ごしています。学科の卒業研究発表会まで残り二ヶ月、各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?


植物の“かおり”がつなぐ生き物の関係​】

化学生態学研究室(塩尻)では、植物の香りが他の生物(昆虫、植物、人)に与える影響を調べています。


まずは、綺麗な写真から。
昨年、一昨年とバラの香りが人に与える影響をしらべました。今年は、スズランの香りをつかって研究をしていますが、それ以外にも、良い香りのバラを掛け合わせることで新しい良い香りの品種を作る研究を進めています。
バラ農家さんのバラ園で、バラの害虫であるアザミウマのトラップを開発する研究をしています。


匂いを介したコミュニケーションの研究の一つとして、セイタカアワダチソウが血縁を匂いで認識できるのか?をテーマに取り組んでいます。この写真は、セイタカアワダチソウを定植するために、畝をつくりそれ以外のところは雑草が生えないように防草シートを張ったところです。(セイタカをわざわざ植えて育てるの?!と思われるのは重々承知しておりますが、セイタカは実験材料に適している&研究対象として面白いのです)






樹木の匂いを介したコミュニケーションの調査の一つです。龍谷の森に、樹木の苗を配置しました。調査では、やぶ蚊になやまされたり、植物のくっつき虫に付かれたりして散々なこともありましたが、興味深い結果が取れました。



イネの苗に匂いを受容させて成長をみる実験です。ここで作業をした後、人工気象室に運びます。

今回の紹介では、主に野外でやっている作業をお見せしましたが、野外調査をしたり、処理した植物を実験室にもちかえり、匂い分析したり、植物ホルモンを調べたりと、室内での作業もあります。それは、また次回に紹介させてもらいます。


これは、最近の写真です。卒業論文に必死で取り組んでいます。何回も教員とやりとりを繰り返します。卒論締め切りは、12月24日です。
すっきりして、良いクリスマスと良い年を迎えましょう!

(塩尻)

「追いホップ」でビールはおいしく?!

  農学部通用口で育てたホップ毬花を使って「追いホップ」ビール食味試験を行ないました.

「追いホップ」というのは,ビールに生の毬花を浮かべてホップの香気や味が溶け込むのを楽しむ飲酒方法です.今回の試験は収穫後生理学研究室のウェンダコーン先生に教えて頂いて,ルプリンが壊れないように液体窒素で凍結保存してあったホップをビールやノンアルコールビールに裂いて入れ,時間と共に変化するにおいと味を観察するというもの.

           「追いホップ」ビール:見た目も素敵です.

飲んでみると確かに,香気が増し,甘さや苦さが変化してゆきます.試験の結果は卒論発表会で!モチロン,「土壌学研究研究室」なので,ホップ栽培土壌の研究結果も発表します.   

 

            
           「試験への協力ありがとうございました!」

 ビール好きのゼミ生が始めた構内ホップ栽培は,ゼミの後輩に「弟子」が出来たとかで,来年も続くそうです.「土」の事も忘れないでね!    

(土壌学研究室 森泉)


3回生による研究室紹介(基礎演習I)

基礎演習Iは、2回生後期の科目です。今回初の試みとして、この後期に研究室に分属したばかりの3回生に「研究室紹介」をしてもらいました。

トップバッターは緊張気味です。

教員の人となりを紹介するラボが多くありました。意外な一面をうかがい知れたのではないでしょうか。



高度な研究内容を噛み砕いて解説するラボもありました。


研究内容に加えて、ラボでのレク活動の様子も紹介されました。


受講生の感想です。

・教員の話を聞くだけでは分からない研究室の雰囲気を知ることができた。
・研究室ごとに個性があり、研究室の人たちとの関わりも楽しみになった。
・学生目線での研究紹介が分かりやすかった。
 
と好評でした。来月には、4回生の卒研発表会を聴講してもらう予定です。研究室に入る気分を盛り上げていきます。
(浅水)


基礎化学実習(12/6)

今回の基礎化学実習(担当教員:三柴先生)は「緩衝液の性質」でした。緩衝液の緩衝作用を測定し、pHメーターの適切な取扱いを身に付けます。


水に強酸や強塩基を少量加えるとpHが大きく変化しますが、少量の酸や塩基を加えてもpHがほぼ一定に保たれる働きを緩衝作用といい、緩衝作用のある溶液を緩衝液といいます。一般に、弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合水溶液が緩衝液になります。今回の実験で用いるTrisC4H11NO3)は緩衝剤の一つで、分子生物学や核酸関連の生化学で用いられる緩衝液の成分として使われています。

実験の手順として、最初にpHメーターの準備をします。あらかじめセンサー部分(写真・本体の下部分)を水道水に浸してから校正を行います。pHメーターは、溶液に浸けるとH+が通過できる膜の内外の電位差を測定し、pHが計算されて表示される仕組みです。

次に、20 mM Tris-HCl(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)(pH7.5)の緩衝液を各自で調整し、2つのビーカーに100 mLずつ分けます。1つの緩衝液には、0.1N HCl をマイクロピペットを使って1mLずつ加え、合計5 mL加えるまで操作を繰り返します。同時に、もう一方の緩衝液には、0.1 NaOH 1 mLずつ加えて、pHメーターでpHを測定します。こちらも合計5 mL加えるまで操作を繰り返します。いずれもマグネチックスターラーで攪拌しながらpHを測定します。平均値をとるため、それぞれ複数回実験を行いました。また、比較実験として、水道水のみのpH測定実験も同様の手順で行いました。

試薬を間違えないように注意します

pHメーターで測定中

マイクロピペットの操作にも慣れてきました

 

最後に、複数回行ったpHの測定値から平均値を算出し、滴定曲線の作図をしました。緩衝液の作用を確認することができました。(中田)

卒業生によるキャリアセミナー

植物生命の2回生対象に、キャリアセミナーを行いました。 農学部植物生命の卒業生3名に、その道を選んだ理由や、今の仕事、大学時代の話をしてもらいました。 社会人3年目、2年目、大学院修士2回生の3名だったのですが、プレゼンの上手さに圧倒されました。 「立派になったなあ~。」と親戚の子にあったときのように、声かけしてしまったりもしてしまいました。
「自分で判断し自分で道を決める。」ってことを3名とも言っており、納得して進路をきめていることが分かりました。 2回生にとって、良い刺激になったのではないかと思います。
以下、学生さんの感想を抜粋します。

 ・講演をしてくださった人はそれぞれ学生時代に力を注いだことが明確にあると言う点です。私もこれを受けて今現在受けている講義の内容の意義をしっかりと理解し、意思を持って受けてこれからに生かしていきたいと考えました。

 ・自分で決めること、責任をとること、逃げ道を作らないこと、それが心にすごく刺さりました。ありがとうございました。 

 ・会社員の雰囲気(自分がやっていけそうか)を判断材料に入れる、というのはとても参考になった。

 ・大学院に進学すると勉強だけでなく、その後に活きる社会的な視野も広がるのだと感じました。

 (文責:塩尻)