今回の2回生の基礎化学実習(担当教員:塩尻先生)は「揮発性物質と匂い」でした。
揮発性物質とは<通常の温度(常温・20℃程度)、圧力(1 気圧)で揮発しやすく、空気中に気体状態で存在できるもの>とされており、「匂い」は揮発性物質の一部です。数十万種類あるといわれる「匂い」を、ヒトはどのように識別しているのでしょうか? 嗅覚の仕組みとして、ニオイ分子を取り込む構造を持った嗅覚受容体があり、そこにニオイ分子が吸着することで、嗅細胞が刺激され電気信号へと変換されます。ヒトの嗅覚受容体の遺伝子は約1000種類あり、そのうち約400種類が機能しているといわれています。さらに、「匂い」は単一の化学成分で構成されているわけではなく、一般的に複数の揮発性分子の混合物です。そして「匂い」の違いは、匂い物質の、分子の骨格の違い・官能基の違い・立体異性体の違いが関係しています。
レモンなどの柑橘類の皮に含まれる芳香成分のリモネンを例に挙げます。
リモネンは光学異性体で構造が異なる(化学式は同じだが物性が異なる)d-リモネンおよび
l-リモネンがあり、それぞれ匂いも異なります。実際に嗅いでみると、d-リモネンはいわゆるレモン系のフレッシュな匂い、l-リモネンはいわゆる樹木系の匂いがします。
上記のことを踏まえて、今回の実習では各自でクラフトコーラの匂いをつくる実験を行いました。配布された匂い物質は、レモンエッセンス、バニラエッセンス、シナモンエッセンスの三種類で、コーラの匂いを主に構成する芳香成分です。
各自で、よりコーラの匂いに近くなる配合を試しました。運良く(!?)一度で正解した班もいれば、なかなかコーラの匂いを再現できずに苦戦している班もありました。たった1滴の差で異なる匂いになるのを実感したことと思います。「匂い」への関心が高まったのではないでしょうか。
ちなみに、今回の条件下での配合の正解は………ここに書くのは控えておきますので、現1回生の皆さんはぜひ次年度の実習で確かめてください!