生命科学セミナー(第30回)

岡山大学資源植物科学研究所の坂本亘教授をお招きし、龍谷生命科学セミナー「植物の母性遺伝から考える葉緑体DNAの存在意義受け継ぐDNAと壊されるDNA―」を開催しました。



植物の細胞質には、光合成を行う葉緑体や、呼吸を担うミトコンドリアという細胞小器官(オルガネラ)が存在します。

これらは、はるか昔に別の生物だったバクテリアが細胞の中に取り込まれたことに由来すると考えられています。

そのため、葉緑体とミトコンドリアは、現在でも自分自身のDNAを持っています。

多くの植物では、これらオルガネラのDNAは、父親(花粉親)側からはほとんど伝わらず、母親側から子どもへ受け継がれます。

これを母性遺伝と言います。

一方で、被子植物の20%程度は葉緑体DNAが両性遺伝すると考えられています。

両性遺伝する植物では、花粉からも子孫へ葉緑体が伝わります。


坂本先生は、「葉緑体がどのように作られ、その働きをどのように保っているのか?」について、遺伝学や植物生理学、発生学といったさまざまな手法を用いて研究されています。

今回は、これまでの多岐にわたる研究成果の中から、「DPD1」という遺伝子を中心に講演していただきました。

DPD1には、花粉が成熟する過程で葉緑体DNAを分解する働きがあります。

DPD1によるDNA分解は、葉緑体DNAの「母性遺伝」を支える仕組みの一つと考えられています。

ところが、DPD1DNAを壊すのは花粉の中だけではありません。

古くなった葉でも、DPD1は葉緑体DNAを積極的に分解します。

DNAは、植物の生育に欠かせないリン(P)を構成成分として含んでいます。

坂本先生はこの点に着目し、「古くなった葉のDNAを分解することで、その中に含まれるリンを回収し、植物体内で再利用しているのではないか?」と考えられています。

一つの葉緑体には、葉緑体DNAが多数のコピーとして存在しています。

葉緑体DNAは、「遺伝情報を保存するもの」であるだけでなく、「Pを蓄えておく貯蔵庫」としての役割も持っているのかもしれない――DNAの新たな役割について考える、とてもエキサイティングなお話でした。


セミナーは、オルガネラの共生進化という基本的な話から始まりました。

オルガネラDNAがどのように発見され、そして、どのように遺伝するのかについてご説明下さり、一方で、その原則に当てはまらない事例も存在することが紹介されました。

そこから「では、植物は、どのような仕組みで母性遺伝を支えているのか?」という問いへとつながり、一連の研究のストーリーとして分かりやすく説明してくださいました。

研究成果だけでなく、研究テーマがどのように生まれ、次の研究へとつながっていくのかについても知ることのできる、大変興味深いセミナーとなりました。

坂本先生、ありがとうございました!





                                  辻村



海外農業体験実習 ハワイ 6日目

6日目はまず本派本願寺ヒロ別院で日曜礼拝に参加しました。

ハワイ島は日系移民の方々が多く、特に一世の方々は大変苦労されたと聞きます。彼らの心の拠り所として浄土真宗が深く根付いています。ハワイで浄土真宗の開教が始まったのが1889年。ヒロ別院はその年に創建された寺院の一つで、今日まで多くの日系移民の方々によって大切に護持されてきました。

ヒロ別院の代表(輪番)高橋さんは龍谷大学文学部の卒業生で、今年も笑顔で我々を迎えてくださいました。日本では全くお寺にお参りしない私が、ハワイで毎年のように礼拝しているのはおかしな話です。

ヒロ別院の参拝を済ませた後、ファーマーズマーケットとビッグアイランドキャンディーズに立ち寄ってお土産などを物色しました。古本先生は、この後で訪れるパホアの日本人墓地にお供えするお花を買われていました。

午後、パホアの日本人墓地の参拝を行いました。

この墓地は1900年ごろ広島や熊本などから移住した人々により開設されました。ところが2014年のキラウェア火山活動による溶岩流によって墓地のかなりの部分が溶岩に飲み込まれてしまいました。奇跡的に埋没を逃れた墓石が、今は冷え固まった溶岩流の間に立っているのを見ると心が絞めつけられる思いです。

お墓参りの後は日系移民三世の佐東さん宅にお呼ばれされ、昼食をごちそうになりました。学生達も日本語がある程度話せる方と日本語と英語交じりの会話で和んでいました。

佐東さん宅を後にし、プナ本願寺に向かいました。こちらもヒロ別院に負けないくらいに大きなお寺です。代表の富岡さんもまた龍谷大学国際文化学部のご出身で、非常に親身にご対応していただきました。

広い境内にはインドボダイジュ(お釈迦様がその樹の下で悟りを開いた)の大木があり、近くで見ると圧倒されました。先日、瀬田キャンパスにもインドボダイジュがやってきましたが、こちらは鉢植えで1mほど。プナ本願寺のサイズになるのはいつの日のことでしょうか。

ハワイ実習はこれですべてのプログラムを終えました。途中、少々熱が出てしまい、アクティビティに参加できない日もあった学生もいましたが、最後は全員元気にヒロ空港から帰国することができました。

ハワイ島でのプログラムにご協力いただいた関係者の皆様のご尽力で今年も充実した実習を行うことができました。この場を借りて深く御礼申し上げます。(岩堀)

海外農業体験実習 ハワイ 5日目

5日目は湿地再生のボランティアに参加しました。

かつてハワイ島ではハワイアン達が沿岸部を石垣で囲い、そこで魚の養殖をしていました。そのような養殖はこの数十年ですっかり廃れてしまい、現在は放置状態の湿地に外来種の草が生い茂っています。この雑草を引き抜いて湿地を再生し、水鳥たちの楽園に戻すことがこのボランティア活動の目的です。

ハワイ実習のドライバー兼ネイチャーガイドの長谷川さんは、このボランティア活動を行うNPO法人の代表でもあります。他の参加者の方々と共にお昼まで活動を行いました。

目の前には広大な雑草地が広がっており、この草がなくなる日が来るのだろうかと呆然と見つめていた私達ですが、ハワイのことわざ「ʻAʻOHE HANA NUI KE ALU ʻIA.(みんなで取り組めば、大きな仕事も成し遂げられる)」を胸に頑張りました。

9時の開始時にはかなり雨が降っていましたが、1時間ほどすると天気は回復、今度はハワイの暑い日差しが戻ってきました。学生達は腰まで泥に沈みながらも雑草を根こそぎ掘り採る作業を続けました。

昼食後は過酷な労働のご褒美として、少しだけ海水浴を楽しみました。地元の人々でにぎわうローカルな入江のビーチ(と言ってもほとんど砂浜はありません)はとても青く美しく、学生たちは迷い込んできたウミガメを写真に収めていました。(岩堀)

卒業生の研究成果が論文として公開されました(生命・小野木研)

 一昨年度卒業した研究室4期生・大屋佑貴さんの研究成果が、論文としてGenetics Selection Evolution誌に掲載されました。

 

Heritability of behavioral traits and their genetic correlations with carcass traits in beef cattle

(肉牛における行動形質の遺伝率と枝肉形質との遺伝相関)

小野木章雄・大屋佑貴他

https://link.springer.com/article/10.1186/s12711-026-01082-5

(リンクからどなたでも論文を見ることができます)

この研究は、ウェアラブルセンサーによりウシ(黒毛和種の肥育牛)の行動をリアルタイムで記録し、その記録から定義した行動形質、例えば1日の平均採食時間や、反芻の回数、動き回った時間など、に対して、遺伝学的な解析を行ったものです。

 

首にセンサーを装着したウシ                                      共同研究をしている(一社)家畜改良事業団の広島産肉検定場にて撮影

ウシの行動には個体差がありますが、その差がどの程度遺伝子によって決まっているのか、またよく動くウシや食べるウシといった行動の差が、どの程度産肉性(肉量や肉質)に関わるのか、という点について、これまでほとんど知見はありませんでした。

 

本研究はこのような観点から行動を解析し、今後の品種改良や飼養方法の改善に役立てることを目的としました。その結果、様々な行動形質について、その多様性がある程度遺伝的であることと、産肉性の多様性との間に弱いながらも有意な関連があることを見出しました。例えば、頻繁かつ長時間反芻をし、動き回らないウシほど、肉量が多い傾向があることがわかりました。

 

今後はさらに研究をすすめ、例えば暑熱ストレスと行動との関連など、行動が関わる様々な側面を明らかにしていきたいと考えています。

小野木


海外農業体験実習 ハワイ 4日目

 本日のアクティビティーは、これまでこのプログラムに欠けていた「大学生との交流」という部分を埋める、今年初めて挑戦する活動です。

旅行を取り仕切ってくださるナオミ社長の繋がりで、ハワイ大学コミュニティーカレッジ(HCC)のSusanne Kazama学長(当時)とLew Nakamura先生に昨年お会いすることができました。Lew Nakamura先生は、Farm-to-Tableを基本にした農業活動を実践・教育されています。水耕栽培でレタスやキュウリを育て、学内のカフェテリアに提供し、食事として食べてもらうという活動です。我々の「食の循環」という概念に共通する部分があります。昨年のうちに、Nakamura先生の活動を見学させていただき、本年、初めてLew Nakamura先生を中心としたHCCの学生さんたちと交流することになりました。

ハワイ流のWelcome Ceremonyを準備しています、と事前に聞いていましたが、その詳細は当日、知りました。「Kīpaepae(キーパエパエ)」という儀式をしてくださいました。

ハワイ島という新しい領域に訪問者である我々が領域に入り込む際の、受け入れ・訪問のそれぞれの側のやりとりを儀式化したもの(と理解しました)のようです。

https://hilo.hawaii.edu/hawaii-papa-o-ke-ao/kipaepae/?utm_source=chatgpt.com

ハワイ語での祝詞(Chant)を通して、「訪問してもいいですか」という我々の問いかけと、「どうぞお入りください」という受け入れ側のやりとりがあり、法螺貝、椰子の木で作った太鼓、でのリズムの中で入場し、首飾りのLeiをいただきました。

この法螺貝は、深い海の底のもの(海によって繋がっている他の場所とハワイを象徴しているとのこと)、太鼓は母の心音(生まれる時に聞く初源のリズム)をそれぞれ表しているとか。

その後、フラにより、心の中のPere(火の神、情熱の象徴)を保っているかという問いかけを受け、さらにハワイ島の中で訪問すべき場所を提示されて、儀式は終わりました。

以下のリンクはその一部ですが、Hawai`i Community CollegeのInstaに上がっていましたので、リンクを示します。https://www.instagram.com/p/DcmqFNPGYcY/?img_index=3

以上は、HCCで学ぶ日本人の学生が翻訳・説明してくれたものをメモしたものを元に記事にしましたが、全部正しく記載できたか自信はありません。不正確でしょうが、自然への敬意、そこに生きる人を含めた生き物・文化への敬意、その領域に入り込んで学ぶことの意識を持っているか、ということを教えていただいたと感じました。儀式を受けている側ですので、写真などを撮ることができませんでした。これはNetで得る情報ではなく、ハワイ島に行き、実際に受けるべきものなのだと思いました。



引き続いて、先方の学生によるFarm-to-Tableの活動の説明のあと、我々の調査した「ポケ」と「マカダミアナッツ」についての結果を説明し、さらに「食の循環実習」について紹介しました。午前中はホテルで練習したのですが、その時よりも格段にいいプレゼンができました。Nakamura先生のプログラム構成などで緊張がほぐれたのが良かったのかと思います。

最後に、USDAのDr, Meyersさんに線虫について講演いただきました。

その後は、カフェテリアで提供されている「カルア・ポーク・アンド・キャベッジ(豚肉の蒸したものとキャベツの炒め物)」を中心に食事をいただきました。


その後、Nakamura先生のフィールドを訪ね、水耕栽培の様子や圃場を見学させていただきました。

ここ何年かハワイ島にはこの実習の引率で来ていますが、今回、初めての大学訪問で、発表時の「火事場のくそ力」のような学生たちの逞しさも垣間見ることができました。ただ、その後、2人が発熱し、この夜から体調を崩しました。知恵熱という言葉が頭をよぎりましたが、原因不明です。帰国までには復帰してくれたのが何よりでした。

Nakamura先生、Kazama先生、この2人を繋いでくださったNaomiさん、Anneさんには本当に感謝してもしきれません。ありがとうございました。この繋がりを広げていくように活動したいと思います。

(古本)