「植物-微生物相互作用学」の外部講師として、玉木秀幸さん(産業技術総合研究所)をお招きしました。
この授業では、植物とその周りの微生物との関係(相互作用)のメカニズムを分子レベルで理解することが主題となっています。植物の周りには良い微生物も居ますが悪い微生物もいて、普段の授業ではおもに植物に病気を引き起こす病原微生物を中心に話題提供しています。しかし、そもそも植物の周りには数多の「何をしているかよくわからない」微生物が存在しています。この「良い」、「悪い」というのも、あくまで人間にとって農作物に良い影響を及ぼすか、悪い影響を及ぼすかを基準にしたもので、何をしているかよくわからない微生物たちも、彼らの人(微生物?)生を、いきものとして過ごしているわけです。
玉木さんは植物に限らず、そういった環境中に存在している多数の無名の微生物たちを見つけ出し、その生きざまを調べ、我々人類の生活に役立たせるところまで幅広く研究されている方で、植物中心の普段の授業とは異なる切り口で、そのほとんどは人間にとっては未知とも言える「微生物ワールド」の一端をご紹介いただきました。
分類学的な観点から見た微生物グループの多様性の紹介から始まり、培養という手段の重要性やその手法に頼るからこその限界、そしてその限界を広げるための研究の数々を、わかりやすい例示などとともに紹介いただきました。その上で、玉木さんらが見つけてこられた微生物を、ヒトや植物そのものの健康や成長、さらにはヒトの生活を支える社会インフラにどのように有効利用しようとされているかをご紹介いただき、最後には、生物の進化の歴史に関する定説を根本から覆すような新たな微生物の発見に関してもご紹介いただき、受講生一同、そのスケールの大きさに圧倒されて聞き入っていました。
学生の感想(抜粋)
「今回の話を聞いて、微生物の可能性はまだまだ広がるのだなと感じた。人の近くで生きている腸内細菌や農作物の微生物に目が行きがちだけど環境全体を見たり探すことで、新たな発見が生まれるのかなと思った。微生物についてもっと研究が進むことで私たちの生活が変わっていくと面白いなと思った。」
「未だ多くの微生物が培養されていないことに、これからの技術発展だけでなく、生命の起源の研究の新たな発見が多くありそうで、非常に現実的なロマンがあるなと、興味深かったです。また、有用な植物形質をもたらす微生物叢の開拓にも興味を持ちました。毒を以て毒を制すではないですが、非常に似てるなと感じ、興味深かったです。」
また、せっかくつくばから来ていたいたので、第12回生命科学セミナー「未知の微生物を”培養”して新たな生命機能を探る~Cultivation Renaissance in the post-metagenomics era: combining the new and old~」と題して、農学部教員や院生ら向けにも話題提供していただきました。授業とほぼ同じスライドながらも、こちらは研究のプロ向けに、サイエンスとしての面白さを凝縮した話題提供をしていただき、質疑も盛り上がりました。
玉木さん、講演x2と長時間にわたる学生との研究談義、本当にどうもありがとうございました!
(別役)