β-カロテンを果実に蓄積させた組換えナスの論文

植物育種学研究室が大阪公立大学の小泉望教授らと共に取り組んだ、β-カロテンを果実に蓄積する遺伝子組換えナスの研究論文が、Plant Biotechnology誌に掲載されました。本研究ではラボラトリー専門助手の山本先生がβ-カロテン解析等を担当し、研究室卒業生の樋口君が卒業研究としてナスの栽培や遺伝子解析を行いました。

本研究では、果実特異的に発現するEEF48遺伝子プロモーターにフィトエン合成酵素をコードするcrtB遺伝子を連結した外来遺伝子を導入した組換えナスを人工気象室で栽培し、果実のβ-カロテン含量を調査しました。高機能型人工気象ユニットのメタルハライドランプを光源として栽培した場合には果実が良好に発達し、トマトと同程度のβ-カロテンを蓄積することを明らかにしました。

タイトル: High β-carotene accumulation in transgenic eggplant fruits grown under artificial light. Plant Biotechnology 41: 77-81
著者: Ryohei Yamamoto, Seigo Higuchi, Yuji Iwata, Satomi Takeda, Nozomu Koizumi, Kei-ichiro Mishiba

右が組換えナスの果実
右が組換えナスの果実

(植物育種学研究室:三柴)

植病研4年生が植物病理学会大会で発表しました!

 313日に仙台国際センターで開催された令和6年度日本植物病理学会大会で、当研究室4年生の内山実梨さんと園田崚君が発表しました。卒業式が315日と慌ただしい中でしたが、しっかりと準備をして落ち着いて発表していました。2人は4月から場所は異なりますが、県庁の農学職員として働きます。今回の経験は、今後のキャリア形成にとっても良い経験になったと思います。

演題:イチゴ炭疽病菌検出用LAMPプライマーの開発

「発表前はすごく緊張したけど、本番は思いのほか落ち着いて話せた。参考にしていた論文の著者に質問していただいて嬉しかった」(園田談)

演題:非栽培地の樹木におけるイチゴ炭疽病菌の潜伏感染

「発表時、息が上手く吸えないくらい緊張していたが、早口にならず、落ち着いて話すことを意識できたので良かった」(内山談)


共同研究者の宮井君(左端)、本多さん(右端)も学会に参加しました。

(植物病理学研究室 平山)



桂高校の皆さんを対象に「アグリカフェ」を実施

 先週3月21日に、桂高校の学生さんたちを対象に、農学部9号館の案内をした後、「アグリカフェ」を実施しました。

9号館は農学部が主に使用する実験棟で、28基の植物培養室や共焦点レーザー顕微鏡など先端研究に必要な機器を揃えています。高校にはないこうした先端機器を見てもらいました。

センチュウを顕微鏡で観察しました。初めて見るセンチュウに「かわいい」という声も。

先輩の研究の話(水俣での和紅茶ブランディング)を聞いています。

センチュウ観察中。

センチュウの観察方法を演示しています。

動物の温度センサーの発見は、2021年のノーベル賞を受賞しました。

9号館案内のため一階ロビーに集まっています。

随分前の「チコちゃんに叱られる」に出演した時のDVDを流しています。トウガラシネタでしたので。


ついで、2年生や3年生が使用する「基礎実験室」で、「アグリカフェ」を開催しました。俗にいうサイエンスカフェのことですが、広く農に関わることを提供しますので、アグリカフェと名付けています。

トウガラシをネタに、熱さを感知する(動物の)センサータンパク質の話、トウガラシを食害するセンチュウの話、そして実物の観察、を行いました。また、桂高校の出身の在学生がこの日1日の案内をしてくれたのですが、彼女が取り組む「熊本での和紅茶のブランディング」について、話をしてくれました。

アンケートは上々で、システム学科の学びに興味を持っている様子がわかりました。

実物を見る、触る、感じる、不思議だと思う、建物を見る、先輩の話を聞く、こうしたことで大学に向けての心が動き始めるのを大切にしたいですね。これを契機に、しっかり学んでください。そしていつか一緒に学問を楽しめたらと思います。

(古本)

高校生の研究をサポートしています!

 2024321日(木)、滋賀県立湖南農業高校の生徒さんたちが、ブルーベリー果汁の肥料化に向けて、その肥料成分の分析に来られました。

大量に廃棄されるブルーベリーを有効活用したいという思いから始まった研究のようですが、高校の設備では、その成分を分析することができませんでした。そこで相談を受けた玉井(植物栄養学研究室)が、生徒さんたち自身で肥料成分含量を測定するお手伝いをしました。

生徒さんたちは、初めて触れる実験器具や分析機器に興味津々で、楽しそうに実験を行っていました。今後も、様々な面でサポートしていきたいと考えています。


簡単な講義から始めました。


真剣に実験しています。

(植物栄養学研究室:玉井)


海外農業体験実習 ハワイ のプログラムの準備

 3月も卒業式の前となると、実験棟に出入りする学生の数も減ります。

そうした中で、次年度の教育プログラムを計画する動きが佳境を迎えています。

海外農業体験実習(ハワイ)は、これまでにこのブログでも何度かあげたことがありますが、ハワイ島(観光地のオワフ島ではありません)に行き、そこでの農産業を体験する学びです。農学部の4学科のそれぞれの教員が関係し、それぞれの視点から学びを深めるように工夫しています。

ハワイ島のホテルからの眺め

特にこの記事を書いている私の所属する生命科学科の視点では、ハワイで開発された遺伝子組み換えパパイヤ「レインボー」について、開発過程と栽培・販売までの住民をあげた激論の背景を事前学習で学んだ後に、現地での栽培の様子、流通の現場、実食をします。開発拠点となった研究所を訪ねもします。

レインボーパパイヤの生産者を訪ねる。ウイルス病が治り始めたので普通種の栽培も可能になってきたとのこと

圃場で、生産者自慢のパパイヤをいただきました

レインボー種の開発拠点だったUSDA研究所を訪問

農学科なら、火山島であるハワイの痩せた土地でも栽培できる、コーヒー(有名なコナコーヒー)産地を訪ね、小さな農園を経営する新規就農者を訪ねたり、日系一世の移民の苦しかったコーヒー栽培の生活様式を学んだり、UCCの中規模農園(といっても馬鹿でかい)を訪ねたりします。こうした農産物への線虫害の実際を見学します。

さらにこうした農業を始めた、日系移民の歴史や生活、それを支えた浄土真宗の寺院・墓地参拝など、内容は盛りだくさんです。

日系移民のパホア墓地に参拝しました

今年偶然担当いただいたNature ガイドの方が、特にハワイの自然に詳しい方で、火山島であるが故の成り立ちや、自生する動植物の紹介をしてくださいました。生態学・自然史といった分野でしょうか。担当教員ではカバーしきれないハワイの自然を教えてくれました。

こうした自然の上で人が土地を耕し農産物を収穫し生活しているのだなと実感できます。


溶岩流が木に当たって固まった溶岩の木、Lava tree。木のあった場所は空洞になっています。

コナに行く途中、山越のハイウェイを利用します。火山島であることが風景からわかります。

本年もこのかたにガイドしていただくことが決まりました。よく日本人の食の好みもご存知なので、肉から郷土食までバリエーション豊かに食の魅力を教えてくれるのも魅力です。
アメリカスタイルのBBQ
ハワイの郷土料理、里芋の葉で肉を包み蒸し焼きにしたもの。



このプログラムは1年生から4年生まで参加できます。英語に自信がなくても、英会話を無料で受講できるので、心強いです。

「先進国では農業と生活が離れすぎていて、つなげて理解することが難しい。ハワイくらいの適宜に田舎なところが、自然と農と人の生活のつながりがわかりやすいんだ。」というのが、この授業プログラムの開発者の退職した先生の言葉です。

この夏のハワイ、どんな実習にするか、どんな工夫をするか、ワクワクしながら準備しています。

(古本)


トマトの種まき

 資源生物科学実習Bの私の担当回では,例年,DNAマーカーによる単為結果性トマトの判別実験を行っています。これまで判別した植物体はそのままゴミ箱に捨てられていましたが,今年の実習からラボラトリー専門助手や農場専門技術助手の先生方にご協力頂き,単為結果性を判別したトマトを牧農場で栽培することになりました。

実習中にトマト果実の収穫までしようとすると5月上旬には定植する必要があります。そうすると苗の移植は4月上・中旬で,播種は3月上旬ということになります。そんな訳で,本日,128穴セルトレイ,3枚分(384粒)の播種を行いました。部屋で1人黙々と種を播いているとほんの少しのやるせない感があります。来年の資源生物科学実習Bの受講生で種まきしてみたい人がいればぜひ手を挙げてください。

実習で使用するトマトの種

竹ぐしのお尻に種をつける

種を播く

指で土をかぶせる

乾燥を防ぐために新聞紙をかぶせて発芽まで静置

野菜園芸学研究室(滝澤)

北海道十勝地域で調査実習を行いました

 2024年3月1日

2024年2月19日から22日まで、香川ゼミ恒例の北海道調査実習を実施しました。参加したのは3回生11名と教員1名です。主な調査先は畑作農家、JA、乳製品メーカー、穀物商社。毎日、朝から晩まで調査をしたので大変でしたが、学生達はとてもよい経験をしたようです。

訪問前が暖かかったようで雪は少なめでした


大規模畑作地域では珍しい施設栽培でパクチーやルッコリ等の新作物の生産に取り組んでいる農業経営。新作物導入に関わる意思決定のプロセスについて教えていただきました。需要と供給の状況、収益に占める経費の比率等を精緻に見定めておられました。また、自分の経営のことだけでなく他者への貢献も考えながら経営を実践していると言っておられました。



摘み取ってその場で試食、美味しい

地元で生産された馬鈴薯を菓子やコロッケ、デンプン等に加工しているJA。菓子やコロッケは有名企業のOEMです。一般的なJAとは異なり、事業の柱の一つは食品メーカー的なもの。これまで学生が持っていたJAのイメージを一新するような事例でした。食品メーカーへの就職を希望している学生にとっては、目から鱗であり、選択肢が一つ増えたようです。


全部ジャガイモですが、これでもほんの一部


有機栽培を組み込んだ経営を実践している農業法人。倉庫で車座になって話を聞かせていただきました。ここでも経営計算をとても重視しておられました。有機栽培による販売単価の上昇と収量の低下、経費の変動、販路拡大やマーケティングに費やす時間・労力、これらの組み合わせを考慮して生産量(作付面積)を決定しているとのことでした。


この日は寒かった


北海道産の原料にこだわった製品生産を行っている乳業メーカー。北海道の酪農経営を支援することを大切にしておられます。香料や余分な添加物等を使わず、原料のポテンシャルを最大限引き出すことに努力しておられます。製品の差別化や市場開拓についても教えていただきました。「凄い会社だ」という感想を持った学生が多数いました。



製品を試飲させていただきました

小麦の製粉や小豆の加工も行っている食品商社。この会社の小麦粉や餡は高級食パンや「おたべ」に使われています。「地域の農業を元気にすることで会社も発展できる」という理念を持ちながら、その他にも様々な新しい事業に取り組んでおられます。「この会社が近畿にあれば」という学生が多数。



この会社には毎回お世話になっています


現場の農業者の方々が授業で学んだ理論や概念を普通に使っていることに学生達は感心していました。当たり前といえば当たり前なのですが、大学の勉強が机上のものではなく、実学であることを改めて認識したようです。

また、農業の実態、農業と関連組織・企業との連携の実態を勉強することで、考えなければならない本当に大切なテーマは何であるのかについて大きなヒントを得ることができたようです。

ブドウ・ブドウ酒研究所の施設見学


今回の調査も帯広市経済部商業労働課の皆様に全面的にお世話になりました。帯広市の皆様、調査を受け入れてくださった皆様、本当にありがとうございました。

(文責:香川)