日本動物遺伝育種学会第24回年次大会で発表しました(生命・小野木研)

 1118日に東海大学阿蘇くまもと臨空キャンパスで行われた日本動物遺伝育種学会第24回年次大会において、当研究室(生命データ科学研究室)4年生の山田光輝さんがポスター発表を行いました。演題名は「サラブレッドにおけるレース中の心房細動発症に対する要因解析」でした。

サラブレッドがレース中に心房細動を発症すると、競争を中止したり大差がついた状態でゴールしたりするなどし、アニマルウェルフェアやレースの公平性の観点から好ましくありません。しかしレース中の発症リスクにどのような要因が関与するかは、あまりよくわかっていませんでした。

本研究では日本中央競馬会の過去約10年分のデータを用い、ロジスティック回帰という手法で、様々な要因の疾患リスクを計算しました。その結果、レースの距離や性別、斤量(馬が背負う重量)、馬体重などが発症リスクを左右することがわかりました。例えばレースの距離は1000m増えるごとに発症リスクはおよそ3倍に、雄を去勢すると発症リスクがおよそ2倍になることがわかりました。

 

ポスター発表の様子

ポスターの前で5分間発表の後質疑応答を1分受けるという発表形式でしたが、発表・質疑応答ともにこなすことができました。学部生で学会発表することは大変なのですが、真面目に努力してきた成果がでたと思います。お疲れ様でした。

発表を終えて一安心

                                     小野木

牧地区でのカキ調査

 以前、このブログで食料農業システム学科の実習の記事で、龍谷大付属農場のある牧地区の干し柿つくりのことが出ていましたが、この干し柿用の果実を穫るのに、牧地区では『田上(たなかみ)』と呼ばれる特定の系統を栽培しているとのことで、地域果樹資源探索の観点から、果樹園芸学研究室も牧のカキ資源についての調査を始めました。

地区農事組合「ふぁ~む牧」の古市組合長や、牧の歴史や民俗にくわしい真光寺先代住職の東郷さんにお話をお聞きしました。特に東郷さんには、地区内の『田上』樹をご案内いただき、山の上にある地区で最も古い樹にも連れていっていただきました。

くわしいところは本年度の研究室の卒論研究でまとめたいと思いますが、『田上』の大きな特徴として、種子がほとんど形成されません。これは干し柿つくりには大変有利な形質です。渋柿の全国品種である『西条』との類縁が推測される伝承があり、果実の大きさおよびアウトラインは『西条』に似ています。『西条』は広島県発祥で、中国地方で大産地を形成するメジャーな干し柿用品種ですが、種子を形成します。ただ、「無核西条」といった変異系もあるらしく、『田上』イコール無核西条の可能性もあります。『西条』は果実に4本の縦溝が入る特徴がありますが、『田上』の果実の溝は『西条』より浅いように思います。

牧地区の『田上』十数本を見ましたが、いずれも接ぎ木結合部があり、すなわち、元の樹から穂木を取って接ぎ木した樹です。地区で最も古い樹というのも接ぎ木されていました。穂木を取った元の樹がどこにあったのかは不明で、岡山県から『岡山西条』なる品種を導入したという言い伝えがあるらしいので、古い時代に他の地方から穂木が持ち込まれたのかもしれません。地区一番の古木は背が高く、100歳樹と言われても不思議でないくらいに思えました。その樹の接ぎ木がなされたのは明治時代、もしかしたら江戸時代ではないでしょうか。

「田上のたねなしカキ」と称して販売することもあったようです。しかし、本格的に専業果樹園経営をするようなものではなく、コメ農家が、畦の崩れを防ぐために水田の排水口(=尻水門[しりみと])近くに植え、成った果実は各戸で吊るして自家利用していました。

今、牧で栽培されているカキはいずれもほぼ放任です。甘柿は『富有』、干し柿用の渋柿が『田上』、熟し柿(樹上で渋が抜けるまで軟化させる)用の渋柿が『てんだい(漢字不明)』、これに『寺柿』と呼ばれ8月から可食という極早生の甘柿(滋賀県発祥の早生甘柿品種『西村早生』の可能性あり)が少数植えられています。『田上』と『てんだい』の果実品質はなかなかのもので、とくに『田上』はたねなしという特徴があります。摘果して果実をもっと大型化させる必要があるかもしれませんが、世の中には干し柿の好きな人が意外に多く存在し根強い需要がありますから、地域産品としての価値は十分にあると思います。

(果樹園芸学研究室 尾形凡生)


付属農場横の大戸川の土手にも『田上』が植えられている。


『田上』の果実。ほぼ放任なので「成り年」には小さな果実がたくさんつき、「不成り年」には果実があまりつかない隔年結果現象がはげしい。


『田上』の古木を指さす東郷さん。今はスギが林立しているが、かつては棚田であったという。


ほとんどの樹に、このような接ぎ木の形跡が残る。


多くの果実をつけた『田上』。



現在、地区婦人会が2000果実ほどの干し柿を毎年つくり、グループ内で販売している。剥皮した『田上』果実2個をシュロの葉でつなぎ、硫黄で燻蒸して表面を殺菌したのち、干し棚につるす。







湖南市 ウツクシマツ保全活動 芽生えを促す「地掻き」

  11月5日の日曜日、秋晴れの湖南市で、ウツクシマツの保全活動を行いました。

 京都翔英高校の学生たち20名ほどと、滋賀県樹木医会、松を守る会、の20名ほどの皆さん合計40名ほどで、天然記念物指定された平松のウツクシマツ保全地域に入り、「地掻き作業」を行いました。天然記念物指定地域には勝手に入ることはできません。保全地域に足を踏み入れること自体、結構、レアな体験です。

 この作業を行うことで、天然記念物のマツの実生が生じやすくなります。マツクイムシや線虫による成木のマツ枯れを防ぐと同時に、新しい実生を誘導し、松林を年月をかけて保全しようという計画です。

 この作業の成果は、次年度の春に実生が現れることです。みんなの力で芽生えた実生は、地域の宝になります。

 高校生たちはそれぞれのペースで参加してくれました。とてもありがたかったです。次は1月にもあるそうなので、引き続き、一緒に作業できればと思います。

 ゼミの学生たちは卒論に向けての研究で忙しく、今回は誘えませんでした。次回なら卒論発表後なので参加してもらえるかもしれません。大学生の姿もぜひ高校生たちに見せたいところですし、ゼミ生にも湖南市の活動に参加してもらおうと思っています。高大連携と地域連携を一緒にできればいいなと考えています。

 以下、順に写真を貼り、説明を付します。

(古本)

天然記念物指定されている領域の隣接地を歩きます。

隣接地で作業説明を受けました。
いよいよ保全地に登り、樹木医会の中西先生から「地掻き」作業の説明を受けます。
枯れ葉が降り積もった層には、ササの根が張っていて、これがなかなかの曲者です。すっかり表面を削りとり、このくらいに地面を露出させるとマツが発芽するようになるとのこと。複数の区画が定められているので、それぞれに配置し、作業を行いました。

若者たちより高齢者の方たちの方が作業がスムーズです。力任せではない体の使い方があるのでしょうか。

40分間の作業で、まだやり残しはあるものの、ずいぶんはぎ取ることができました。高校生の手にはマメができ、皮も破れており、一生懸命に取り組んでくれたことがわかります。



作業後は道具を片付けて、しばし休憩。ミカンやカキを頂きました。



ひき続いて、ウツクシマツの周りの植物を観察する「植物観察会」を開いていただきました。アカマンマ、マメアサガオ、ツユクサなどの花を観察し、クズやフジの蔓の巻き方などを教えてもらいました。ウツクシマツの樹形を間近にみ、一遺伝子変異による不思議な形を実感しました。

最後に記念写真を撮りました。

ウツクシマツの最寄りは草津線の「甲西駅」です。草津線は単線です。今日は、時節に合わない暖かい1日でしたが、やはり日の落ちるのは早くなりました。みなさま、本当にお疲れ様でした。








ソーラーシェアリング型市民農園で芋掘り

2023年10月21日、食料農業システム学科竹歳ゼミ3回生が、宝塚市西谷地区にあるソーラーシェアリング型市民農園で、コープこうべの会員さん・職員さん、近畿大学藤田ゼミの学生さんたちといっしょに、芋掘りのお手伝いをしました。

ここでは、今年5月に苗植えを、7月にはつる返しもそれぞれ体験させていただきました。今回はつるを切るところから始めて、スコップ、ショベルなどでサツマイモを収穫しました。この畑は、上部にソーラパネルを設置し発電・売電(コープさんに)を行う「ソーラーシェアリング」の畑であるため、一定の収穫量があったことを記録しておかなければなりません。

そのお手伝いなどもした後、このソーラーシェアリングの取り組みを行っている宝塚すみれ発電の井上社長、近畿大学の藤田先生、そして竹歳も講師となって、勉強会を開催しました。終了後は収穫したサツマイモのおすそ分けをいただいて帰途につきました。収穫したサツマイモの多くは、「宝塚芋人」という焼酎になります。