資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ㉓~種なしクッキングトマト品種の開発~

 

ブログをご覧の皆さん,普段,どんな風にトマトを食べられるでしょうか?「生のまま食べます」という人もいれば,「トマトの缶詰を料理に使います」という人もいるかもしれません.実はこの生食用トマトと缶詰に入った加工用トマトは大きく性質が異なります.例えば,生食用トマトは収穫するときたいてい果実にへたが付いていますが,加工用トマトはへたが付いていません.また,生食用トマトに比べ,加工用トマトでは果実の赤みが強かったり,水分含量が低かったりします.

野菜園芸学研究室では,この加工用トマト品種に似たクッキングトマト品種に単為結果性遺伝子を導入する取り組みを行っています.単為結果性は受粉なしに結実する性質のことですが,私たちが研究している単為結果性遺伝子pat-kは,単為結果を誘導するだけでなく,種子の形成を阻害したり,果実の糖度を上昇させたります.そのため,この遺伝子を導入したトマトは,ほとんど種がなく糖度が高い果実を生産できるようになる可能性があります.

2022年に試作した‘すずこま’

今回の品種育成の親として使用したクッキングトマト品種は‘すずこま’という名前で,加熱調理すると酸味,旨味などが引き立ち,生食用や缶詰とは比較にならないおいしさを発揮すると言われています.すでにpat-kの導入は終わっていて,来年の夏,4年生にこのpat-kを導入したpat-kすずこま(仮称)の特性調査をしてもらう予定です.どんな結果が出るか今からとても楽しみにしています.収穫できたらせっかくのクッキングトマトなので,トマトソースを作って,トマトパーティしたいですね.



試作した‘すずこま’でトマトソース作り,普通に美味しい!

(野菜園芸学研究室:滝澤)

フードドライブイベントを開催しました

 2022年10月24日、瀬田キャンパスのGlobal Lounge & Kitchen (旧シアトルズベストコーヒー)にて、山口ゼミの中川くんの卒業研究の一環でフードドライブ啓発イベントを実施しました。

ゼミ生と2回生が手伝ってくれました

フードドライブとは、家庭で余っていてまだ賞味期限に余裕のある食品を寄付する活動のことで、回収ポストはスーパーなどの事業所で目にすることができます。フードドライブ回収ポストに寄付された食品は、フードバンク事業者などが回収してその食品を必要とされているところに分配されます。

このコロナ禍では食品備蓄の必要性も高まっていて、なかなか寄付が集まらないのではないかと思っていたのですが、中川くんの調査によると、実は意外にもコロナ禍になってから食品の寄付は増えているのだそうです。しかし、フードバンク事業者の中にはマンパワーが足りなくてせっかく寄付された食品の回収がままならないケースもあるとのことで、学生ボランティアの力が求められているとのことでした。

中川くんが来場者にフードバンクの活動について説明しています

イベントでは、賞味期限が迫っていてもう配布できないアルファ米を来場者にプレゼントして、フードドライブとフードバンクについて知ってもらい、ボランティアの呼びかけを行いました。一方で、フードドライブポストも設置したのですが、事前の周知不足か食品の寄付はあまり集まりませんでした。

設置したフードドライブポスト

今回の活動は、環びわ湖大学・地域コンソーシアムの大学地域連携課題解決支援事業に採択されたプロジェクトの一環でもあります。このイベントを通して学んだことを、大学地域交流フェスタで活動報告したうえで、卒業論文にまとめてもらうことになります。その時の様子もまた投稿できればと考えています。乞うご期待!(山口)



総説論文が公開されました(植物生命:別役)

別役らによる以下の総説論文が公開されました。


In vivo imaging enables understanding of seamless plant defense responses to wounding and pathogen attack.

Toyota M, Betsuyaku S.  Plant Cell Physiol. 2022 Sep 27:pcac135. doi: 10.1093/pcp/pcac135. 


 顕微鏡を用いた観察手法は、顕微鏡そのものの技術開発と蛍光タンパク質の発見・改良によってここ20~30年余りの間に飛躍的に発展してきました。最近では単なる「観察」ではなく、「イメージング(imaging)」という言葉で呼ばれるようになってきています。


蛍光タンパク質を用いることの利点の一つは、肉眼では見えないような細胞状態の変化や細胞内のタンパク質分子を見ることができるようになることです。そしてもう一つの利点が、生きたままの組織を用いて非破壊的に観察することができることです(生きたまま観察することを「ライブイメージング」と言ったり、「in vivoイメージング」と呼んだりします。「in vivo」とは「生体の中で」といった意味です)。電動化した顕微鏡をコンピューターと組み合わせることで、一定期間の定点観察を自動で行うことも可能となっています。つまり、みなさんがスマホカメラでやるようなタイムラプス撮影を生き物の観察に用いることができるようになっているのです。


生物の状態は刻一刻と変化しています。植物においては、病原菌感染や昆虫食害、物理的な傷害などを受けた時には、植物はそれらストレスに対してダイナミックに応答して身を守ろうとしていることが知られてます。ストレスを受けた直後から数日間にわたってさまざまな応答が起き、それら応答は刺激を受けた場所(病原菌が感染した場所、昆虫が食べた場所、傷害を受けた場所、etc.)から全身的に広がっていくことも知られるようになってきています。つまり、植物のストレス応答は、「時間」的にも「空間」的にもダイナミックに変化しているのです。この仕組みをより深く理解することで、農作物のストレス耐性を高め、収量アップや減農薬などにつなげることも出来るようになるかもしれません。

植物免疫応答のイメージング例(別役研HPより)

植物のストレス応答のような生命現象の時空間的変化を詳細に捉えて、その仕組みを正しく理解しようとする研究には、最新のイメージング技術がとても便利なツールとなります。in vivoイメージングを用いた植物の病原菌感染や昆虫食害、傷害に対するストレス耐性研究の現状と将来の方向性に関して、植物の病原菌応答を研究している別役と、昆虫食害や傷害に対する植物の応答を研究しておられる豊田先生(埼玉大)との共著で総説論文としてまとめたのが上の論文になります。


百聞は一見に如かず。生物学の世界では「見る」ことによって、誰も想像さえしなかったことが次々と明らかにされてきました(例えば、有名な「細胞説」へと至る過程もそうです)。植物のストレス応答に限らず、イメージング技術は今後さらに重要度が増すと思われます。興味がある人はぜひ読んでみてください。


(別役)




【生命科学科・授業シリーズ】No.6 「微生物学I」

    【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】

大学ではどんな学びがあるんでしょうか?このブログでは、毎週、最も大学らしい授業である実習(実験)について紹介してきています。それ以外に、座学でもたくさんの大学ならではの専門的な授業があります。そんな中から、受験生の方々向けに生命科学科の教員が担当する授業を一つ一つ紹介していきます!


「微生物学I」は主に2回生が受講する講義です。微生物というと、どのようなイメージをもちますか。病気の原因になったり、食中毒の原因になったりするような悪玉の生き物をイメージされる方も多いと思います。現在でも、マスクをしなければならない状況が続いています。それは、新型コロナウイルスの感染防止のためですね(生物学的に言うと、ウイルスは微生物には含まれませんが、病気を引き起こすという意味では類似しています)。たしかに、微生物やウイルスが原因となる病気、すなわち感染症はたくさん存在しています。


その一方で、私たちの生活を支えてくれるような善玉の微生物も存在しています。たとえば、酵母や乳酸菌とよばれる微生物は、パンやヨーグルトなどの発酵食品をつくるのに必要です。麹菌(こうじきん、と読みます)というカビの一種は、味噌や醤油の製造で中心的な役割を果たしています。また、私たちの腸内では、乳酸菌やビフィズス菌という微生物が極めてたくさん存在していて、身体の調子を整えてくれているのです。



微生物は、善玉、悪玉、そのどちらでもないものなど、幅広い生物の集団です。したがって、大学の様々な学部で微生物に関する教育・研究が行われています。医学部や薬学部などの医療系の学部では、主に悪玉微生物に関することを学びます。一方、農学部では、主に人間の役に立つ善玉微生物について学びます。ただし、植物に対して害を及ぼすような植物病原菌は農学部で学ぶ領域です。善玉微生物を学ぶにしても、悪玉微生物を学ぶにしても、その基礎になる知識は共通です。そのため、「微生物学Ⅰ」では、微生物に関する基礎的な部分を学習してもらうように設計しています。

微生物学Ⅰで学習した事項を下敷きにして、卒業研究では、さまざまな微生物に関する研究をして頂きたいなと考えています。


みなさんが受講してくれる日が来るのを待っています!!


(島)

資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ㉒ ~フローサイトメトリー解析~

 フローサイトメトリーは、流体中を流れる細胞などの微小な粒子にレーザー光を当て、生じた蛍光や散乱光から個々の粒子の性質を測定する手法です。植物研究では、細胞核のDNA量を測定する目的にフローサイトメトリーが広く用いられています。農学部では昨年度よりフローサイトメトリー解析装置が導入され、私たちの研究室では大いに利用しています。

核DNA量の解析方法

 解析方法は図のように、葉などの植物組織を核の単離溶液中で細断し、残渣を取り除いて解析装置に供試します。例えば、2倍体や4倍体などの倍数性が異なる植物を比較するためには、これまでは根端細胞の染色体を観察していましたが、核DNA量を解析することにより容易に倍数性を判定することが出来ます。

カブ横断面を正方形に切り分けて解析に供試した

 私たちの研究室では、植物の分化組織で細胞が倍数化するpolysomatyという現象に興味を持ち、フローサイトメトリーを用いた研究を行っています。Polysomatyは珍しいものではなく、食料として利用されるトウモロコシの胚乳やトマトの果実でも観察されます。私たちは卒業研究テーマの一つとして、カブの肥大した胚軸組織のpolysomatyを調査しています。カブの横断面を正方形に切り分けて、各組織片をフローサイトメトリー解析します。

1Cは配偶子のゲノムDNA量を示し2倍体の体細胞は2Cになるが、
カブの胚軸組織では2Cはほとんどみられず、
8C(8倍体)や16C(16倍体)の核が観察された

 その結果、図のように、polysomatyにより8倍体や16倍体といった倍数化した細胞が含まれていることがわかりました。どうしてpolysomatyが生じるのかについては十分に解明されていませんが、倍数化した細胞は大きくなる傾向があり、器官を大きくしたり、栄養分を貯蔵したりするのに役立っているのではないかと考えられています。

(植物育種学研究室:三柴)

深草キャンパスでのマーケットプレースに参加しました

  古本ゼミでは、研究の一環で「養蜂」をしています。副産物として蜂蜜も採れます。

 今年はこの研究を進める大学院生が、一年の休学(この間に養蜂業の専門家について、養蜂業を学んでいました)をあけ、ラボに戻ってきましたので、蜂の管理がとてもうまくいき、過去にない規模での飼養ができていました。もちろん、副産物もたくさん採れました。

 この副産物をマーケットプレースへの参加をお誘いいただいたので、販売しました。

 ちょうどこの後期から、3年生のラボ配属が始まり、新しいメンバーが増えます。まだ彼らのキャラを把握できていませんが、彼らにマーケットプレースでの販売のお手伝いをお願いし、ついては他に売りたいものがあれば申し出るように頼んでみました。すると、「実家で栽培し、収穫、精米した米を売りたい」というものが現れました。

 ついては、ゼミ生たちで、ラベルデザインや販売規模、値段などを話し合い、そのお米も販売しました。



 深草キャンパスは、普段私たちがいる瀬田キャンパスとは異なる場所にあります。大きな通りに面した場所で、一般の通行人や、学生・教職員に対して販売します。
 
 普段、行かないキャンパスなので、学生はそれだけで真新しさを感じているようでした。逆に、深草の関係者も物珍しいイベントなので参加してくださり、こちらが想定しているようりも多く売れました。

 養蜂をしている学生は、一般の方にどうゆう理由で養蜂を始めているのか、今後の養蜂業は、など話し込んでいます。お米の販売に力を入れている学生は、パッケージデザインの説明やお米に込めた(彼の父の)想いを説明しています。

 ラボに閉じこもっているだけでなく、こうして外に開いて他の方に触れることで、彼らの意識が変わっていくような気がしました。

 また、深草キャンパスには、異動して今は他部署におられる過去に農学部の設立に関与した職員や、そうした経緯はなくても農学部を気にかけてくださる職員のかたがおられます。そうした方が産物を買いに来てくださいました。

 農学部の学生が販売する姿を見ていただけるだけで、感謝したい気持ちになりました。
秋晴れの1日、楽しい時間でした。

 次回は、11月11日、瀬田キャンパスと深草キャンパスで、出店者を増やしての同時開催です。

(古本)


【生命科学科・授業シリーズ】No.5 「遺伝学I」

   【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】

大学ではどんな学びがあるんでしょうか?このブログでは、毎週、最も大学らしい授業である実習(実験)について紹介してきています。それ以外に、座学でもたくさんの大学ならではの専門的な授業があります。そんな中から、受験生の方々向けに生命科学科の教員が担当する授業を一つ一つ紹介していきます!


「遺伝学I」は主に1回生が受講する講義です。遺伝(heredity, inheritance)とは,親の形質が子に伝わることです。この現象を研究する学問領域が遺伝学(genetics)です。生命科学科では「遺伝学Ⅰ」が必修科目に位置付けられています。火曜日の3講時目と金曜日の1講時目の2クラスに分けて開講されており(講義内容は全く同じ),生命科学科の学生に加え,農学科の学生も受講可能です。2クラス合わせて,約250名が受講しています。

初回の講義後のアンケートによると『遺伝って1:2:1ってやつでしょ?』『高校で遺伝子の話がよくわからなかった』『品種改良に興味がある』という受講生が多いようです。「遺伝学Ⅰ」の講義では①細胞分裂(特に減数分裂)を理解する,②メンデル遺伝学を理解する,③遺伝を支配する物質が染色体を構成するDNAであることを理解するの3つを目標にしています。龍谷大学農学部では遺伝・育種に関する専門的な講義がたくさん開講されていますが,「遺伝学Ⅰ」はこれらの講義の最も基礎になるものです。

高校で生物が未履修であったり,大学入試で生物を選択しなかった受講生も多くいます。少しでも学生の理解が深まるように,最初は講義に関連する歴史的な流れの紹介から入るようにしています。



講義資料から 

メンデルがエンドウマメの交配実験から遺伝の法則を発表したころ,日本ではちょうど幕末の動乱期でした。思ったよりも昔の出来事と感じるか,意外と最近の出来事と感じるか,学生の皆さんの感想が違っているのがおもしろいです。

講義の途中では5分程度の休憩時間をとり,毎回3つの作物の学名の紹介を行っています。1回の講義ではたった3つだけですが,全講義終了後には45種になります。「遺伝学Ⅰ」の講義が終わるころには,「食の循環実習」で栽培する作物やスーパーの野菜売り場に並んでいるほぼ全ての作物の学名がわかるようになっているはずです。(遺伝学とは関係ないかもしれませんが)身近な作物を何気なく学名で呼べたら農学部の学生らしくて,ちょっとかっこいいですね。


みなさんが受講してくれる日が来るのを待っています!!


(竹中)

【生命科学科・授業シリーズ】No.4 「分子育種学」

  【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】

大学ではどんな学びがあるんでしょうか?このブログでは、毎週、最も大学らしい授業である実習(実験)について紹介してきています。それ以外に、座学でもたくさんの大学ならではの専門的な授業があります。そんな中から、受験生の方々向けに生命科学科の教員が担当する授業を一つ一つ紹介していきます!


「分子育種学」というと、どのような学問分野を想像されるでしょうか?

 「育種学」は品種改良に関する学問分野のことを指し、そこに「分子」が付いているので、「分子生物学の知見に基づいた育種学」と捉えていただいて良いと思います。


 また、このブログをお読み頂いている皆さんは、高等学校では生物で「遺伝」を学ばれると思いますが、育種学は遺伝育種学と言われることからもわかる様に、育種は遺伝学の理解のもとに行われています。そのように考えると分子育種学を受講される学生さんには先に「遺伝学」「分子生物学」「育種学」を勉強して欲しいと思っていますが、「分子育種学」の講義は「分子育種学I」と「分子育種学II」に分かれているので、「分子育種学I」では遺伝学と分子生物学の基礎のおさらいから講義をしています。


 遺伝学の基礎となるメンデルの法則も、例えば丸いエンドウ豆としわの有るエンドウ豆の形質の分離から導き出された法則ですが、「しわ」はでんぷん枝付け酵素遺伝子の変異に起因し(この酵素が欠損すると種子へのでんぷんの蓄積が悪くなりしわを生じ)、その変異もトランスポゾンと呼ばれる「動く遺伝子」が澱粉枝付酵素遺伝子に飛び込み、遺伝子を分断したため起きる、というような分子レベルの理解ができると、遺伝子の変異と形質の関係がよりスッキリと頭に入るのではないかと思います。


 また育種法としては「交配育種」と「突然変異育種法」が2大育種法としてありますが、「交配育種」は減数分裂期の相同性を利用した組換え(相同組換え)により両親由来の染色体DNAが組換わる現象を利用していますが、現在の交配育種は「マーカー育種」により、両親由来の染色体が望むべき部位で組み換わった植物体を効率的に選抜することはできても、組換えが起きる部位は制御できていないことが分かると、交配育種法の発展のためには相同組換えのメカニズムの分子レベルの理解が必要なことを気付いて頂けるのではないでしょうか?


 生物学は好きでも遺伝学は嫌いという学生さんも少なくはないと聞きますが、遺伝学も分子レベルでの説明がされると理解しやすくなると思いますし、分子生物学・遺伝学の知見がどのように育種に活かされているか理解できると、これらの基礎科目を学ぶのも楽しくなると思います。


農学部の学生さんが分子レベルでの生物の理解から現場の育種まで、一気通貫で学び理解して頂けるような講義をしたいと考えています。


みなさんが受講してくれる日が来るのを待っています!!


(土岐)

資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ㉑~堂農場

 龍谷大学農学部には,実験農場として,主に実習に使われる牧農場と,主に調査研究に使われる堂農場があります。堂農場のほうは丘の上のキャンパスから雑木林の中を歩いておりたところにあります。雑草学研究室(三浦ゼミ,旧・農業自然史研究室)も堂農場を拠点に研究活動や地元との交流活動をおこなってきており,そのようすはこのブログでも何回か紹介してきました。たとえば…

https://ryukokuagr.blogspot.com/2018/10/blog-post_31.html

https://ryukokuagr.blogspot.com/2021/04/blog-post.html

今日は3年生を連れて,堂農場で行われている卒業研究の見学に行きました。本多君はクサネムという水田雑草の就眠運動(夜になると葉を閉じる現象)を調べています。3年生相手にレクチャーしてもらいましたが,4年生も後期にはいると,いつの間にか研究者の顔つきを見せるようになっていました。


もともと水田地帯だった堂農場のまわりは野生動植物がいっぱいです。今日はサクラのようなうすべに色の花を咲かせるサクラタデが田んぼのあぜを彩っていました。秋もしだいに深まり,植物も人も,実りの季節に向かってまっしぐら?



(雑草学研究室:三浦)

研究成果が論文として公表されました(植物生命:塩尻)

 Entomologia Experimentalis et Applicataという論文に、

Unidirectional trichomes in rice and prickles in Andropogon virginicus protect meristems from herbivory" というタイトルで、研究成果が掲載されました。

これは UC Davisのリチャード・カルバン教授と京都大学の高林純示教授との共同研究で、イネ科の植物にあるトライコームが一定方向にむいているのは何のためなのかを、明らかにしたものです。イネ科のトライコームは、葉の先に向かって並んでおり、葉の先端にむかって手をすべらせると、滑らかなのですが、逆方向(根本に向かう方)に滑らそうとすると引っかかります。この理由の一つとして、植食性昆虫に生長点の方向に向かわせないためなのではないかという仮説をたて、それを野外研究で実証しました。

実験はいたって簡単で、100円均一などでうっている激落ちくんをつかって、トライコームを一部なくしてみたり、葉をマスキングテープで折り曲げたりと処理をしたあとに、虫がどこの部分を食べるかなどを調べました。

写真は、牧圃場で、カルバンと一緒に被害の場所を調べているところです。


リチャード・カルバンとの研究は、いつもちょっとした不思議をとっても簡単な実験で明らかにしていくのがとても面白く、アイディア勝負なところがとても好きなのです。

DOI: 10.1111/eea.13212


(文責:塩尻)






「土壌医のススメ」講演

 

普段の授業よりも真剣な眼差しの学生達

資源生物科学科の2年生達が土壌医の活動を三重土壌医の会会長近藤芳弘先生(三重県農政事務所)からお聞きしました.土壌のpHを改善するために,石灰散布の方法などに工夫をし,小麦の収量を1.5倍にした普及員としての体験談などをお聞きし,学生達は興味津々でした.自分たちが勉強していることが農業に役立つ現場を知って,将来の夢にも現実感が出てきたようです.「私,土壌の化学が大好きなんですよ.皆さんも自分の得意分野を持って下さい.」という先生の言葉に刺激を受けて,感想文には「勉強します!」の文字が並んでいました.

(土壌学研究室 森泉)

【生命科学科・授業シリーズ】No.3 「ゲノム情報学」

 【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】

大学ではどんな学びがあるんでしょうか?このブログでは、毎週、最も大学らしい授業である実習(実験)について紹介してきています。それ以外に、座学でもたくさんの大学ならではの専門的な授業があります。そんな中から、受験生の方々向けに生命科学科の教員が担当する授業を一つ一つ紹介していきます!


「ゲノム情報学I」は主に2回生が受講する講義です。ゲノム情報学、という名前は多くの学生さんにとってあまり耳なじみのないものかもしれません。(実は講義を担当している私にとってもそんなに耳なじみのある講義名ではありません。)「ゲノム」は生物の持つすべての遺伝情報を指す言葉です。農学部では他の講義でも良く出てくる単語かと思います。「情報学」の方は、とても広い意味の言葉ですが、ここではコンピュータを用いた大量の情報処理や、関連する統計、機械学習などに関することを扱っています。


近年、あらゆる分野でデータが爆発的に増えています。生物学でも、大量のDNAの配列を解読できる装置や、高性能の顕微鏡、ドローンなどによって、膨大な塩基配列情報や画像情報が日常的に得られるようになりました。もはや人間がひとつひとつ見ていくことは不可能な量ですので、必然的にコンピュータや統計、機械学習の助けが必要になります。この講義では、生物学、農学の分野で大量の情報を取得するための技術やそれを活用した研究にどんなものがあるか、幅広く紹介していきます。


コロナの影響があった2020年、2021年はオンラインでの開講でした。そこで作成した講義動画を生かして、今年度は、反転学習的な講義を試みています。受講生は事前にそれぞれ講義動画で学習をしておき、質問をウェブに登録しておきます。講義当日は、寄せられた質問を(質問者が分からない形で)みなで共有しつつ、質問に答えたり補足説明をしたりしていきます。内容によっては、議論をしてみるのもいいかもしれません。新しい試みなので、色々試行錯誤をしながら、改善していこうと思っています。


みなさんが受講してくれる日が来るのを待っています!!


(永野)

カタシモワイナリーの見学

 2022年9月21日(水)、竹歳ゼミの3年生13名と、大阪府柏原市にあるカタシモワインフード株式会社を訪問しました。

まず、高井利洋社長から、柏原地域でのブドウ生産やワイン作りの歴史、現在の取り組みについて、お話を伺いました。当地では明治の初め頃からブドウ作りが始まり、大正の初めに当社がワイン作りに成功、その後の困難も乗り越えて現在に至っているということでした。


次に、自社のブドウ畑を見学させていただきました。ちょうどブドウが実っている時期でもあり、ワイン用に使われているブドウや、これからワイン用にするために開発中のブドウも、少し味見させていただきました。


さらにブドウ畑から集落の中を少し歩いて、奈良時代に遡る地域の歴史についてもご説明いただきました。


最後に、ワイナリーに戻って、雰囲気のある和室にてワイン・テイスティング。ワインに関心がある学生も、飲んだことがないという学生も、高井社長の元気なトークのもと、和気藹々とした時間を持ちました。


「よいブドウでよいワインを作るだけでは、外国産など他にもそういうワインは多くあって競争力がない。テロワール、つまりこの地域の地理や歴史の物語をいかに加えて価値を高めていくかが重要」、という高井社長のお話が印象に残りました。

なお、今回の見学は、龍谷大学と近畿農政局との包括連携協定に基づいて、近畿農政局よりご紹介いただいたことによるものです。当日は近畿農政局の3名の職員の方々も参加されました。当日の様子は近畿農政局のHPにも掲載されています。→こちら 

(竹歳)

農業生産科学モデル・修士論文中間報告会を行いました。

9月1日、大学院農学研究科・農業生産科学モデルの修士論文中間報告会を行いました。(農業生産科学モデルは、学部で言うと植物生命科学科と資源生物科学科の研究室に相当します。)


この中間報告会は次の春に修士修了予定の修士2回生が対象で、農業生産科学モデルでは9名が該当します。修士課程は2年しかありませんが、学部での卒業研究などで経験も積んだ大学院生にとっては、その経験・知識をもとにさらに大きな課題に取り組むには十分な時間です。そんな研究過程でも、例えば、想定外の発見があってテーマの方向性が変わったり、想像以上の壁があったり、と一筋縄ではいかないのが研究で、そこを試行錯誤して乗り越えることが大学院生に求められる経験でもあります。

発表会の様子(一部抜粋)


修士2回生にとっては残り半年も切り、それぞれの試行錯誤の成果を修士論文としてまとめることを考える時期にきています。この時期に中間報告会を開催することで、各自の修士論文の方向性を検討してもらい、足りない実験・考察等を明確にして、残りの修士期間を有意義に過ごしてもらうことも一つの大きな目的となっています。


対象の9名は、それぞれの研究活動の成果を、修士論文をイメージしながらしっかりと発表してくれました。質疑でも、植物生命科学科と資源生物科学科の枠を超えた、深い議論が行われました。普段、研究室単位での活動が多い中、他の研究室、他の学科の研究課題に触れることが刺激となり、新たな相互作用が生まれていました。教員のみならず、学生からの質問も数多くあり、農業生産科学モデルの学生さんらの研究活動が、今後、学部生も交えてさらに盛り上がっていく予感がしました。今回発表された皆さんが、今回の報告会で得たフィードバックをもとに、それぞれ修士論文報告会に向けて準備していただければと思います。みなさんの報告会を教員一同楽しみにしています!


(別役)