3月に農学部の通用口の花壇に植えたホップが大きくなり毬花を咲かせました.ホップはピールの香りづけに欠かせないアサ科の植物です.雄株と雌株があるそうですが,雌株の毬花の中にできるホップ腺にあるルプリンという物質が爽快な香りと苦みをもたらすとか.
どこに花があるか分りますか?松ぼっくりのような形をしたのが毬花です.
3月に農学部の通用口の花壇に植えたホップが大きくなり毬花を咲かせました.ホップはピールの香りづけに欠かせないアサ科の植物です.雄株と雌株があるそうですが,雌株の毬花の中にできるホップ腺にあるルプリンという物質が爽快な香りと苦みをもたらすとか.
どこに花があるか分りますか?黒毛和種は和牛の一種で、霜降りと豊かな風味を特徴とする肉用種です。最近は海外でも「Wagyu」として人気があり、日本の重要な輸出農産物の一つとなっています。
その黒毛和種の品種改良に、近年は遺伝子の情報が利用されています。品種改良は好ましい性質を持つ個体を選抜し、繁殖に用いることで進められます。そのため、おいしい牛肉を効率よく生産するためには、どの個体を選抜するかが重要になります。ただ肉のおいしさや肉量はと畜しないとわかりません。しかしと畜すると子孫を残せません。そのため、生きている間に肉のおいしさや肉量を予測し個体を選抜する必要があります。
この問題を解決するために遺伝子を用います。生物はたくさんの遺伝子を持つため、肉のおいしさや肉量に対しての遺伝子の累積的な(より専門的には相加的な)効果が高い個体を選抜します。この手法はゲノミックセレクションと呼ばれ、現在家畜や作物の品種改良で広く用いられています。
たくさんの遺伝子の累積的な効果の他に、遺伝子には相互作用があるため、遺伝子の組み合わせによっても、おいしさや肉量は変わるかもしれません。もしそうであれば、組み合わせの情報を使うことで、個体の選抜がより正確になるかもしれません。しかしこの「組み合わせの妙」が、おいしさや肉量にどの程度寄与しているのかまだ研究されていませんでした。
今回の研究はこの遺伝子の「組み合わせの妙」が、累積的な効果の1/4から1/3程度、牛肉に関する様々な性質に寄与していることを明らかにしました。これはなかなか無視できない値です。
しかし一方でこの組み合わせの情報を用いても、高い肉量や肉質を備えた個体の予測は、累積的な効果のみを用いた場合と比べて良化しませんでした。この結果は残念ですが、おそらく遺伝子の数が多いため組み合わせの数が非常に多くなり、新しい組み合わせが予測される個体に常に生じるためと考えられました。
今回の結果では「遺伝子の情報を用いて牛の性質を完全に予測し選抜する」というゴールにはたどり着きませんでしたが、今後も研究を続け、より効率的な品種改良の手法につなげていけたらと考えています。
Genomic prediction with non-additive effects in beef cattle: stability of variance component and genetic effect estimates against population size
Akio Onogi, Toshio Watanabe, Atsushi Ogino, Kazuhito Kurogi, and Kenji Togashi
BMC Genomics
First published: 07 July 2021 https://doi.org/10.1186/s12864-021-07792-y
本研究は(一社)家畜改良事業団との共同研究です
植物生命科学では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。
梶井基次郎(1901-1932)はかつて「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」と書きました。桜の美しさに魅了されるとともに恐怖した梶井は、桜が地中に横たわる屍体から流れ出す「水晶のような液」を養分としているからこそ、こんなにも見事に咲くことができると想像したのです。
日本では屍体が埋まっているのは桜の樹の下ですが、さてイギリス(アイルランド)では? イギリス(アイルランド)では、ひょっとすると薔薇の花の下に死者が眠っているかも知れません…。
というわけで、今回は趣向を変え、エリザベス・ボウエン(1899-1973)というアイルランド人作家の短編物語「あの薔薇を見てよ」(1941)に出てくる薔薇について紹介します。この季節にふさわしいちょっと怖い話になるので、ブルっと震えて暑気払いとしていただけましたら幸いです。
「あの薔薇を見てよ」の主人公ルウは、恋人エドワード(実は妻が別にいる!)と出かけたイギリス東部への週末旅行の帰り道、ひょんなことから色とりどりの薔薇が咲き乱れる家にひとり取り残されることになります。その家にはメイザー夫人とその娘ジョゼフィーンが世間からは隔絶された生活を送っているのですが、ジョゼフィーンは背骨を傷めて寝たきりの状態です。どうやらそれは父親のせいらしく、その後父親は家を出たきり二度と戻らなかったと言うのです。ルウはそんな彼女らの話を聞きながら庭の見事な薔薇を見やり、「メイザー氏があの薔薇の根元に横たわっている……」と不気味な幻想と戯れます。
メイザー氏は娘を傷つけてしまったことに耐えきれず家を出たのか、それともメイザー夫人の手によって庭に埋められてしまったのか…。
ルウの幻想の真偽は謎のまま、この物語は終わります。ラテン語には「薔薇の下で、秘密に」を意味する‘sub rosa’という言葉があるのですが(古い習慣として、食堂の天井に薔薇の花を彫り、宴席での話は一切他言しないことを求めたことに由来します)、まさにこの言葉の通り、メイザー家の庭に咲く薔薇の下は絶対の秘密なのです。
薔薇は愛と美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)や聖母マリアの象徴であり、王家・国家の紋章であり、教会建築にその形象が用いられたり、文学作品にも古くか繰り返し描かれたり、西洋では特別な花とみなされています。それはちょうど日本における桜と同じようなものでしょう。
(垣口)
植物生命科学では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。
8月は、お盆のお墓参りや棚経など、日本仏教の伝統に触れる機会が増える時期ですね。真宗学研究室(打本)による今回のブログは「植物生命科学科で扱う実験生物」の番外編として、瀬田キャンパスの樹木と仏教にまつわるお話をお届けいたします。
この写真は瀬田キャンパス樹心館の横の樹木です。一見、普通の木に見えますが、実は仏教の開祖であるお釈迦様がこの樹下で悟りを開いたことから「菩提樹(ぼだいじゅ:菩提とは悟りの意)」の和名を持つ樹木なのです。ただ、インドの菩提樹はクワ科イチジク属なのに対して、日本で一般に言われる菩提樹はアオイ科(旧シナノキ科)シナノキ属です。どうして日本の菩提樹とインド菩提樹が異なっているのでしょうか?
答えは、日本に菩提樹が伝わる以前、中国での出来事に遡ります。
インドの菩提樹は中国の屋外で越冬させることが難しかったそうです。それでもお釈迦様に思いを馳せた中国のお坊さんは、葉の形がよく似たシナノキ科の樹木を菩提樹としてお寺の境内に植えて大切にしていました。その種を中国(宋)に留学した鎌倉時代の僧侶・栄西(日本臨済宗の開祖)が持ち帰り、お寺の境内に植えたのが日本の菩提樹の始まりだとされています。
このような逸話のある菩提樹。まだ見たことがない方は、ぜひ瀬田キャンパス樹心館の横に足を運んで、樹木と仏教のつながりに思いを馳せながら眺めてみてください!
(打本)
農学部必修科目「食の循環実習」では、学科の壁を超えて人間関係を構築し、学生が主体的に学ぶ姿勢を養いながら、作物栽培の本質を学ぶことを目的として、農場実習での班活動を取り入れています。各班は割り当てられた圃場で、好きな作物を栽培します。班員はLINEで情報共有し、実習時間以外も協力して栽培管理を行い、収穫までいたっています。
その成果発表会を、7月20日と7月27日の二日に分けて実施しました。各班の発表は素晴らしく、限られた発表時間しかないことが残念なほどでした。失敗から学ぶことが多かったようで、今後、各分野において、それらの経験が活かされるものと思います。
何よりも、学生達の楽しそうに取り組む姿が印象的でした。
学生による投票、教員の採点の合計点によって評価されました。 |
発表後には学生間で活発な質疑応答もありました。 |
1日目最優秀賞のA2班です。 |
2日目最優秀賞のC4班です。 |
(「食の循環実習」農場実習担当 玉井)
植物生命科学科の古本の研究室では、基礎研究に加え、地域の期待に応える活動もしようということで、ここ数年、湖南市から依頼を受けや新しい特産品作りのプロジェクトを進めています。
古本が個人的に趣味としていた養蜂からアイデアをえて、「Konann Honey」の販売を始め、今では、養蜂の上で欠かせない花粉源や蜜源となる植物を植えるところまで話が進んでいます。
選んだ植物は「カラシナ」。これからは、「蜜」と「花粉」と「種子」を得ることができます。
地元の方の協力を得て、学生たちと訪問し、2月には畑を起し、苗を植え付け、成長を見守り、初夏には収穫を行いました。
収穫されたカラシナ種子から、和からしを自作し、すでにある特産品と掛け合わせていく予定です。
蜂蜜と掛け合わせれば「Honey masterd」、
マヨネーズと掛け合わせれば「からしマヨネーズ」、
湖南市の特産品である下田茄子と掛け合わせれば「下田茄子の辛子漬け」
ができるのではないか。
この企画には、湖南市下田の漬物屋さん「やまじょう」も協力していただけることになり、下田ナスの収穫体験のほか、工場見学と今後の指導をお願いすることになりました。
「もうひとつの学外実習」の第二弾は、7月24日に京都府の京丹波町にある篠ファームで実施されました。
篠ファームは、世界一辛い唐辛子としてギネスブックに載ったことがあるハバネロを日本で初めて栽培したことで有名です。しばしばテレビ番組などで紹介されています。
はじめに契約農家さんの圃場へ行き、ハバネロをみることができました。「試しにかじってみて」と差し出されたハバネロを少しかじった(勇気ある?)学生の反応・・・それをみただけで、あとに続くものはいなくなりました。マスクをしたまま切り口の香りを嗅いだだけで強烈な辛さがわかりました。この辛さゆえに、猪や鹿などに食べられるという獣害に遭うことがなく、中山間地帯に適した作物です。
ハバネロをみる |
香りで十分辛さがわかります |
ハバネロのソースをもって記念撮影 |
2021年7月31日、大津プリンスホテルで開催された「滋賀テックプラングランプリ」において、チーム「ドラゴンアグリ(資源生物科学科 植物栄養学研究室)」が「滋賀銀行賞」と「橋本グループ賞」の二つをいただきました。
「琵琶湖を中心とした循環型農業の実現〜過去と未来をつないで〜」というテーマで、水草堆肥とプラズマ発生装置を併用し、琵琶湖の環境保全と農業振興を両立させる研究内容を発表しました。
企業賞とは別に、中高生を含む来場者の投票もあり、それでは得票数が1位となりました。一般の方々にとっても興味関心の高い研究であることがわかりましたので、今後ますます研究に力を入れていきたいと考えています。
(植物栄養学研究室 玉井)
奥永源寺の集落を視察 |
ムラサキの栽培圃場 |
7月26、27日の3回生の植物生命科学実習(担当:小野木先生)は、「プログラミング言語Rを用いた実験データの解析」でした。普段の実験室ではなく、情報処理室での実習です。
Rとは、統計解析を得意とするプログラミング言語です。データ分析に用いられ、とくに生物学で人気があります。今回はRStudioというソフトウェアからRを使用し、データサイエンスの理解と知識を深めました。
講義を受けながら、実際に各自でスクリプトを書きます。今回は、データを可視化するためのヒストグラムや箱ひげ図などのグラフの描画、t検定、分散分析、回帰分析などの統計解析の練習をしました。
実習のまとめとして与えられた、条件式を作るレポート課題に皆、苦戦しました。
今回で前期の植物生命科学実習がすべて終わりました。3回生の皆さん、研究室に配属されてからも、これまで実習で学んだ知識や技術を活かして卒業研究を頑張ってください。
追記:
6月に行った「アブラナ科蔬菜につく昆虫の調査」(塩尻先生担当)の実習で植えたダイコンとコマツナを、鉢に植え替えて助手室で育てました。
Before
およそひと月で食べられる大きさにまで成長しました!
(中田)
植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。
農学部(瀬田キャンパス)のある滋賀県には、世界第3位の古い歴史をもつ琵琶湖があります。私は、この琵琶湖に住む微生物をテーマに研究をしています。今回は、植物プランクトンを紹介したいと思います。
比叡山から撮影した琵琶湖の風景。遠くに薄く小さく写る島は日本の淡水湖唯一の有人島 沖島です。琵琶湖の全体像はおさめられませんでした。
琵琶湖には、数百種類の植物プランクトンが出現することが知られています。優占種は、季節によってダイナミックに変化します。
これは孔径約20μmのプランクトンネットで引いた2019年10月の琵琶湖北湖の表水層サンプルの顕微鏡画像です。様々な種類の植物プランクトンが見られます。この日は緑藻(Staurastrum dorsidentiferum)が中心です。
これから、夏~秋にかけて話題になる種と言えば、ミクロキスティス(Microcystis spp.)。上図は琵琶湖でみられたミクロキスティスの群体です。アオコを形成し、水道の悪臭の原因になるなど、琵琶湖の富栄養化の象徴にもされている種の1つです。ミクロキスティスは藍藻類という、原核タイプの植物プランクトンの一種です。悪いイメージもある藍藻類ですが、琵琶湖にも近縁種がいるSynechococcus elongatus(PCC 7942株)は、世界の生物時計研究のモデル生物になっています。私は、ミクロキスティスなど野外にいる藍藻類の概日リズムに興味を持っています。
(吉山洋子)
匂いを介した植物間コミュニケーションの研究の多くが、草本かつ室内・温室などの非自然環境下で行われています。そのため、実際の野外における匂い有効距離というのは、明らかになっていませんでした。そこで、私達は、樹木(ブナ)を対象に自然環境下での匂いコミュニケーションを明らかにし、さらに匂いの有効距離も明らかにしました。
(図)匂い放出個体からの距離別の葉の被害度度
縦軸が被害度、横軸の数字が匂い個体からの距離を示す。
コントロールにくらべて、距離が近いほど被害が少なくなっていることがわかる。
本研究は、龍谷大学大学院修士課程一期生(現在、京都大学大学院博士課程)の研究で、Ecology and Evolution に2021年8月に掲載されました。
(塩尻)
Effective distance of volatile cues for plant–plant communication in beech
Tomika Hagiwara1,2, Masae Iwamoto
Ishihara3, Junji Takabayashi4, Tsutom Hiura5, Kaori Shiojiri1*
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ece3.7990