【植物生命科学科で扱う実験生物】No.11 仏教と樹木(ボダイジュ)

  植物生命科学では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

8月は、お盆のお墓参りや棚経など、日本仏教の伝統に触れる機会が増える時期ですね。真宗学研究室(打本)による今回のブログは「植物生命科学科で扱う実験生物」の番外編として、瀬田キャンパスの樹木と仏教にまつわるお話をお届けいたします。

この写真は瀬田キャンパス樹心館の横の樹木です。一見、普通の木に見えますが、実は仏教の開祖であるお釈迦様がこの樹下で悟りを開いたことから「菩提樹(ぼだいじゅ:菩提とは悟りの意)」の和名を持つ樹木なのです。

ただ、インドの菩提樹はクワ科イチジク属なのに対して、日本で一般に言われる菩提樹はアオイ科(旧シナノキ科)シナノキ属です。どうして日本の菩提樹とインド菩提樹が異なっているのでしょうか?

答えは、日本に菩提樹が伝わる以前、中国での出来事に遡ります。

インドの菩提樹は中国の屋外で越冬させることが難しかったそうです。それでもお釈迦様に思いを馳せた中国のお坊さんは、葉の形がよく似たシナノキ科の樹木を菩提樹としてお寺の境内に植えて大切にしていました。その種を中国(宋)に留学した鎌倉時代の僧侶・栄西(日本臨済宗の開祖)が持ち帰り、お寺の境内に植えたのが日本の菩提樹の始まりだとされています。

このような逸話のある菩提樹。まだ見たことがない方は、ぜひ瀬田キャンパス樹心館の横に足を運んで、樹木と仏教のつながりに思いを馳せながら眺めてみてください!

(打本)