資源生物科学実習B ⑦

 623日の実習は果実の構造についての観察、24日の実習はカンキツ類の酸度測定を行いました。初日は落花生、トマト、ミニトマト、オレンジ、ミカン、レモン、ピーマン、スナップエンドウ、リンゴ…たくさんの果実が机に並びました。私たちが普段何気なく食べているこれらの果実ですが、植物学的にはいったいどの部分を食べていることになるのでしょうか。「偽果」という言葉が出てきましたが、柿や桃など子房壁が発達した果実(果皮の部分を食べている)と異なり、リンゴは普段食べる時に切り取る“芯”の部分が果皮に相当し、可食部は花托の部分です。“植物学的な意味での真の果実”の部分は“芯”として捨てている…また、リンゴの果頂部に残っているのが“がく”だと分かると、普段食べている果実は植物学的な構造からみると多様で不思議な感じがします。 

左上,上中:落花生の構造の講義中, 右上:心皮数の観察用
左下;マメ果実の莢は単一心皮で形成されるが…マメは2列, 右下:偽果とは?リンゴを例に講義中

次に24日の酸度測定では、一般的なカンキツ類のミカンと香酸カンキツの代表であるレモンを用いました。ビュレットなどコック付きの器具を普段あまり使わないので、先端に残る空気を抜いたり、滴下速度を調整したり…初めは滴定を止めるタイミングが分からずに何度か失敗する班も見られましたが、繰り返していくうちにコツをつかみ、最後には多くの人がうまく操作できていたようです。原理は理解できたでしょうか? また一方で、食品成分表によると果汁100 g 中の有機酸はレモンで6.7 g、オレンジでは1.1 gと記載されています。ミカンの記載がなく、また品種差もあるので完全な比較こそできませんが、今回の測定値(計算結果)はどうだったか思い返して比べてみてください。全く外れた数値にはなっていませんでしたか? ただ数値だけを書いて課題を出すのではなく少し調べてみると、近い値が出ていれば自信にもなりますし、色々理解が深まると思います。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)より

(右上:適正な滴定量,左下:滴下オーバー)

山本

資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ⑮ ~国外研究-フルーツの香り~

 出張のため収穫後生理学研究室(Postharvest)は留守にしていますが、本研究室では収穫後の青果物の品質に関する研究を行っています。主に果実の香りについて調べています。

皆さんは何かを食べるときにその食べ物の「おいしさ」について考えたことがありますでしょうか?知っている方もいるかもしれませんが、私たちが食べ物を「おいしい」と感じるのには、その食べ物の「香り」が深く関わっています。

食べ物をおいしく感じるには、「味」、「テクスチャー」、「外観」、「色」だけではなく「香り」もとても大事です。鼻で嗅ぐ香りと口の中で感じる香りがおいしさに大きく影響します。好みもあると思いますが、「香り」は食べ物をよりおいしくするためにとても重要です。

果実は成熟するとともに香りの成分が生成されますが、中には香りを作らないものもあります。それは果実細胞の中で香りが生成される代謝系に違いがあるためです。

果物には多くの栄養が含まれていて健康を維持するために一日200g以上の摂取が推奨(日本)されていますが、現在その値は下回っているといわれています。香りに関する研究が進めば、農業だけではなく消費者の健康にも良い影響を与えることが期待できるので、卒業研究でも香りについて研究を進めています。

現在、私はアメリカ(ミシガン州立大学;MSUDepartment of Horticulture - Postharvest研究室)で果物の香りについて研究をしています。リンゴやバナナなどの果物の実験を多く行っている研究室で、楽しく仕事をしています。

MSUキャンパスはとても広く、春には桜やリンゴなどのいろんな花が咲いていて、綺麗です。キャンパスの景色を少し写真で紹介します。

Wendakoon S.K.(収穫後生理学研究室)




  MSU時計台
  MSUミュージアム
Malus(リンゴ花ー5月)
桜ー4月中旬
バラー5月上旬



















新潟大学理学部 石崎研の大学院生・大学生との交流

6月22日に、セージブラシの植物間コミュニケーションの研究で、長年、私(塩尻)と共同研究をしてきている新潟大学の石崎智美先生が、学生さん4名をつれて、訪問してくれました。で、せっかくですので、石崎先生と学生さん1名にセミナーをしてもらいました。

卒業研究でやっている内容と似たこともあったので、「私達はここでこういう結果だったので、それ以降は、、、のようにしているけど」とか、「ここについては、どうしたらいいとおもうか?」など、具体的な研究方法の話や、「じゃあ、これについては、私達がこの方法でやってみて、データを出すので、そっちでは~をしてみて、一緒に検討して、まとめましょうか」など、共同研究の話も進みました。


ようやくコロナも落ち着いた(?)ので、少しずつでも、他の大学の方たちとも交流がもてると研究も視野も拡がるので、これからも、他大学との交流をしていけたらと思います。

(塩尻)

植物生命科学実習(6/6-7,6/14,6/20-21)

6/6から2週に渡る別役先生の実習では、「アグロバクテリウムを介した植物形質転換と組換え蛍光タンパク質の精製」を行いました。


遺伝子組換え植物を作成し、発現物質の解析まで行うという長丁場の実験の始まりです。

各工程をレポートしたいと思います!


アグロバクテリウムの培養

プレート上で育てたアグロバクテリウムを液体培地へ播種します。

培養液には抗生物質が添加されているので、対応するアグロ株の組み合わせを間違わないようにします。

一晩培養して濁度を測定し、感染に適した濃度に調整します。


インフィルトレーション法による遺伝子の導入

用意してもらったベンサミアナタバコに、濃度調整したアグロバクテリウム溶液を感染させます。

シリンジに最適濃度の希釈したアグロバクテリウム溶液を吸い取り、葉の裏に押し当てます。


本実習の見どころの一つです。

皆さん、上手くできましたか?


導入遺伝子の一過的発現


感染させてから一週間が経ちました。

所々、葉の色が変わっていますが、無事枯れずに育ってくれたようです。

この葉にUVライトを当て暗所で観察すると、、、



室内の蛍光灯下では差がなかったのに、UVライト下では3種間で明らかに違いがありますね。

この差は、形質転換に使ったアグロ株の違いです。

YFP(黄色蛍光タンパク質)RFP(赤色蛍光タンパク質)が発現している葉の違いがわかりますか?

今回の実験では、YFPRFPを大量に作らせるために、植物の免疫システム(RNAサイレンシング)を抑制するタンパク質の遺伝子も同時に加えています。

このひと工夫で、より多くの導入遺伝子の発現=蛍光タンパク質の蓄積が期待できます。


タンパク質の回収・精製

それではタンパク質を抽出します。

液体窒素を使い、瞬間凍結させたものをすり潰していきます。


抽出液を加え、サンプルを回収します。
 


回収した液体から、カラムを使って発現させたタンパク質のみを回収します。

ここにも、ひと工夫があります。

抽出液には元々植物が持っている大量のタンパク質が含まれています。

その中から、遺伝子組換えで作らせたタンパク質だけを回収してこなくてはいけません。

今回の組換えタンパク質はYFPRFPですが、そのタンパク質にはエピトープタグと呼ばれる余分な8個のアミノ酸が付加されています。

このタグが吸着するカラムに抽出液をろ過することで、全タンパク質から目的タンパクだけを選り分けることができます。




精製タンパク質の性状解析

タンパク質は本当に抽出できたのでしょうか?また、精製は上手くいったのでしょうか?

確認するために、今回はSDS-PAGEという方法で調べました。

 

SDS-PGAEでは、タンパク質をSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)によって帯電させ、更に加熱変性して立体構造を解いたものを、電気泳動によって分子量の大きさでふるい分けします。

これまでの実習で何回か行ったDNAのアガロース電気泳動よりも、ふるいが小さいアクリルアミドゲルを使って泳動します。

初めてのゲルですが、うまくアプライできましたか?


サンプルはタンパク質粗抽出液(精製前のもの)と、カラム精製した後のものを泳動しました。

精製前と後では、検出されるバンドの様子が大きく異なります。

分子量マーカーや重量マーカーと比較して、実験結果の考察を行います。


最後に、タンパク質を加熱することでどのような変化が生じるか調べました。

加熱することで、蛍光は変化したでしょうか?


植物生命実習も中盤になり、回数を重ねるごとに皆さん実験に慣れてきました。

たくさんの工程がありますが、班員で作業を分担したり、空き時間に次の作業の準備をしたり、だんだん効率よく作業を進められるようになってきました。


                                   (辻村)

資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ⑭〜外の世界を知る~

  龍谷大学農学部はまだ新しく設備も整っており、すばらしい研究環境です。お客さんが来られて設備のあちこちを見ていただくと、いつも施設のきれいさと機器の充実さに感心していただけます。

 しかし井の中の蛙になってはいけません。世界は広いです。自分のいる研究室以外の場所を見聞することは非常に参考になります。同じ実験をするにしても、研究室・研究者によってやり方も違いますし、使う器具・道具も違います。「こんなやり方があったのか!」と発見があることもしばしばです。当研究室では外の世界を知るべく、積極的に他の研究所の見学や作業のお手伝いを行っています。

 当研究室のテーマの一つである「ナス遺伝資源の線虫抵抗性評価」は、農研機構・野菜花き研究部門・施設野菜花き育種グループとの共同研究です。先月、情報交換とナス定植のお手伝いのため、大学院生とともに三重県津市の安濃野菜研究拠点を訪問しました。この日は宮武グループ長に施設の案内をしていただいた後、ナスの定植を行いました。

農研機構 安濃野菜研究拠点

 また、殺線虫剤の効果判定試験の現場を学ぶため、4年生とともに滋賀県甲賀市の油日アグロリサーチ研究農場を訪問しました。油日アグロリサーチさんには1期生の学生からお世話になっており、毎年5月と10月に調査のお手伝いをさせていただいています。今年はショウガのネコブセンチュウに対する殺線虫剤の効果試験を行っており、担当・蒲原さんの説明の後、薬剤処理、耕耘、均平、マルチ張り、植え付けの一連の作業を行いました。

油日アグロリサーチ

油日アグロリサーチ②

 コロナの状況もまだ落ち着かず、日ごろは実験室と培養室の往復で建物に籠りがちな学生さんに、外に出て日の光を浴びてもらいました。自分の大学以外の場所での研究・調査の現場を体験することで視野は大きく広がり、自らの卒業研究、修士博士研究に大いに活かされるものと思います。(応用線虫学研究室 岩堀)

入門ゼミで京大付属農場を見学しました

 6月4日(土)、資源生物科学科入門ゼミの一回生約70名が、京都府木津川市にある京都大学大学院農学研究科附属農場を見学しました。最初に、中崎先生から農場全体の概要や研究内容を説明していただき、その後、各担当の先生方からイチゴやバラの栽培施設、果樹選果施設と果樹園、ライスセンターなどで説明を受けながら見学をしました。
バラ栽培施設では、土壌と隔離したロックウール栽培が行われており、気化熱を利用した温度制御やアーチング法と呼ばれる仕立て方法について説明していただきました。
ダリアなどの鉢花の施設では、エブ・アンド・フロー方式によるかん水方法や、移動式の栽培ベンチを見学しました。
果樹の選果場では、果実の大きさ、形状などをカメラで撮影して自動で仕分けする計測装置や、光センサーで糖度を調べる非破壊計測装置などを見学しました。
学生にとって最新の研究や設備を知る良い機会になったと思います。ご対応いただいた先生方、ほんとうに有難うございました。
(平山)



資源生物科学実習B ⑥

 6月16日と17日の2回の実習では、遺伝子組換え実験の基礎を学びました。オワンクラゲが持っているGFPGreen Fluorescent Protein)という緑色蛍光タンパク質をコードするGFP遺伝子を大腸菌に導入して、形質転換により“光る大腸菌”を作り出し、蛍光タンパク質の発現を観察しようというものです。資源生物科学科の3回生は(生命科学科は別日に実施しました)4月の初めの実習で「遺伝子組換え講習」を受けましたが、今回の実習では“従事者”に該当するので1時間の講習を受講する必要がありました。ようやくその時が来たと言ったところでしょうか。


 16日の実習で大腸菌の形質転換を行いましたが、この時にGFP遺伝子と、アンピシリン(抗生物質)に対する耐性遺伝子をベクターとしてプラスミドを使って大腸菌に導入しました。今日は、LB基本培地と、アンピシリンを加えたLB培地、さらにアラビノース(単糖)を加えた培地で培養しましたが、しっかり違いが見られたでしょうか。通常の大腸菌(-DNA)はアンピシリン含有培地では生育しませんでしたが、形質転換した大腸菌(+DNA)はコロニーが観察できたのではないでしょうか。また、アンピシリンとアラビノースの入ったLB培地で培養した大腸菌のみ、紫外線の照射によって発光している様子が確認できたと思います。培地の違いによる大腸菌の生育の違いについては、今回どのようなプラスミドを導入したのかよくテキストを読み返して、レポート課題に取り組みましょう。

コロニーのチェックと形質転換効率の計算中
左から-NDA(-amp), -DNA(+amp),+DNA(+amp), +DNA(+amp, ara)
一番右側のみ紫外線照射で発光

山本

中川ゼミ(食シス):ゲスト講義:食と環境、SDGsについての学び

6月3日、食料農業システム学科の中川ゼミ(3年生)において、ゲスト講義を行っていただきました。講師は、3年連続で講義をお引き受けいただいた、鹿児島県の重富海岸に位置する「くすの木自然館」の浜本麦さんです。



ゴカイ研究者でもあり、メデイア出演も多い浜本さんのお話は大変興味深く、また熱い語りに引き込まれました。テーマは、「食べ物から考える生き物のつながり:持続可能な未来とは?」です。

持続可能性、SDGsということばが広がり、関心が高まるなか、どこか現実離れし、「流行りもの」のように使われることもしばしば見受けられます。

今回、浜本さんの実生活に基づいたエピソードの数々からは、多くのことを学べることができました。

例えば、外国産の安価な食べ物と国産の少し高めの食べ物、さぁ、どちらを選びますか?という問いや、ある日の食事画像をもとに50年後に食べられなくなる食材はどれでしょう?などなど。

普段、「知ったつもりになっていること」や「気づいてはいるけれど、見て見ぬ振りをしていること」に関する話題には、ゼミ生、教員共にも、ハッとさせられることも少なくなく、自らの行動を振り返る機会となったように思います。


<学生の感想より>

・今回特に印象に残った言葉は、(中略)買い物は投資というところです。ただ安い外国産を選ぶのではなく、生産者を応援するという意味で国産を買うという考え方があると知って、これからの生活にも生かせるなと思いました。

・持続可能な環境やそれを支える社会を作り、維持していく必要性を学ぶことができた。特に、陸や海の生き物のつながりのところでは、食物連鎖の形でそれぞれの生き物や環境が互いに影響し合いながら生存していることが改めてわかった。また、鰻の事例でもあったように、人間は増やしたいものだけを増やそうとし、生き物全体あるいは海・川などの環境全体で考えないことから、結局は増やせていないと学んだ。人間の欲望を満たす勝手な行動で、生態系に悪影響が出ていると実感できた。 

・社会や政治を変えるにはまず自分たちが動くことが大切だと思いました。可能な限り日本産のものを買う、環境に配慮した買い物をするなど、自分たちが動かなければ変わらないことが身近にたくさんあり、すぐにでも実践しようと思いました。 また、SDGsのそれぞれの目標の意味を考えることも大切だと思いました。ただ注目されているからするのではなく、意味を理解した上で動かないと意味がないと感じました。


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中川ゼミでは、地域マネジメントを大きなテーマとして、観光、食、環境という三つの視点を軸にしたグループに分かれ、活動しています。今回は特に、環境グループに学びの多い機会になったと思います。

浜本さん、ありがとうございました。(中川)


最後にみんなで記念撮影