久々の学外実習(その2)

 2021年6月27日、食料農業システム実習Aを受講する12名と教員1名が、現地実習先の高島市マキノ町森西地区で集落の共同資源管理作業に参加しました(記事その1はこちら)。当日は雨の予報だったのですが、日頃の行いが良かったのか?ちょうど良い曇り具合で作業日和となりました。

排水路の清掃

植栽の整備をお手伝い



稲山隧道の水路から土砂を取り除いています

森西地区は古くから水に恵まれず、明治時代に山の向こうからトンネル(稲山隧道)を掘り抜いて水を引くなどの苦労をされてきました。山からは土砂混じりの水が流れ込み、傾斜地の田んぼでは用水路・排水路とも土砂揚げが欠かせません。また、獣害対策として電気柵が設置されているのですが、電気柵の周りの草木を手入れしないと、そこを伝って猿などが柵を飛び越えてしまいます。地区では年に3回の普請の日に集落全戸でこうした作業を続けておられます。参加した学生は、汗だくになりながら棚田とその周辺の生活環境を維持する取り組みを体験しました。作業の意味や地域資源に対する思いなど、様々なお話をお聞きしながら作業できたことも学生にとって貴重な経験になったと思います。今年の普請は大学生が参加してくれるということで、現地ではいつもなら手が回らないエリアの草刈りまですることができたと好評でした。

実習に参加した学生の感想をいくつかご紹介します:

- 農家の現状を自分の目で見て、耳で聞くことがどれだけ大事なのかが分かりました。今の自分に何が出来るのか、これからの大学生活で何が出来るのか考えるきっかけにもなりました。

- 実習で地元の皆さんがどう行動しているか観察し、積極的に話しかけるといろんな「今」の情報が入ってくる。

- 農村といわれる地域でどのようなことが問題として取り上げられ、その地域の方たちはどう考えているのか農学部生として知っておかなければならないことを多く学ぶことができた。


参加者・引率者とも全員が事前にPCR検査を受けるなど細心の注意を払いつつ、久々の学外実習に出ることができ、学生のいきいきした表情を(マスク越しですが)対面で見られたことも収穫でした。コロナ禍のなかで綿密な受入れ計画を練っていただいた区長はじめ森西地区の役員の方々と、学生をこころよくご指導くださった区民の方々に厚く御礼を申し上げます。(山口)




植物生命科学実習(7/12,13,19,20)

 

7/12から2週間に渡り行った連続4回の実習では、DNAマーカーでのジェノタイピングと連鎖解析、さらにゲノム編集における変異の検出方法を学びました。(担当:土岐先生)


シロイヌナズナの葉にできる毛(トライコーム)の有り/無しという表現型に着目して実習を進めました。

材料には有毛の「Col-0」、トライコーム形成に関わるGL1遺伝子が変異して無毛になった「Ler(GL1変異体)」、さらに両者を掛け合わせて作成されたF2集団を使いました。



DNAマーカーを使うと、DNAの特定の領域の違いを検出することによって、その領域がどちらの親由来なのかを判別することができます。

今回の実習ではPCRDNAの一部の領域を増幅させる実験)によって、マーカー領域を増幅し、そのDNAのサイズの差で、Col-0型かLer型かを調べます。

結果は電気泳動という実験で検出しました。





電気泳動は何回も実習で行ったので、皆さんテクニックが身についている様子?!

電気泳動の結果は白黒の写真で出力されます。








明るく光るラインがDNAで、ほとんどのサンプルでPCRが成功したことがわかります。

実習初回に微量な液体を測り取るピペットマンの練習をした成果ですね。

 

電気泳動ではDNAのサイズに応じて泳動されます。

結果では上が大きく下が小さくなっています。

Col-0Lerではどのマーカーでもサイズが違います。

これに対して、F2ではどうなったでしょう?

 

F2集団からは有毛と無毛の2個体を調べました。

今回使った3つのマーカーは、何番染色体のどの位置にあるか、わかっています。

F2ABのマーカーは各班でどちらの型になるかバラバラです。

一方、CのマーカーではF2無毛はLer型になっています。

CマーカーはGL1遺伝子に連鎖しているのです。

F2有毛はホモとヘテロを含むので、Col-0型のみか、Col-0型とLer型どちらも含むパターンがあります。)

 

また、ゲノム編集された個体のDNAを識別する実験では、CAPS解析を行いました。

CAPS解析では、DNA配列中にある制限酵素(特定の配列を認識してDNAを切断する酵素)を利用します。

Col-0にはHindIIIという制限酵素の認識配列があり、PCR断片が切断され短くなります。

しかしゲノム編集個体では認識配列が改変されているので、切断されなくなります。

今回用いたゲノム編集個体は相同染色体の片方のみ編集されているので、切断されなかったDNAも現れています。

 

最後にF2集団の有毛/無毛の個体数をカウントし、メンデルの遺伝法則に即しているか調べました。



少し難しい内容だったので、実習後には熱心に先生に質問している学生さんが多く見られました。

遺伝学の基礎的な内容と、DNAマーカーやゲノム編集といった最新の技術まで、幅広く学ぶことができました。

                                    (辻村)


【植物生命科学科で扱う実験生物】No.08 ダイズとウシ

 植物生命科学では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

生命データ科学研究室(小野木)はデータ解析が中心で、動物も含め様々なデータを扱います。今着目しているデータの1つが、ダイズのヒストリカルデータ(過去のデータ)です。日本では長年ダイズの品種改良が行われていますが、それら数十年分のデータを気象やゲノムの情報と関連させることで、新しい知識を得ようとしています。まさに温故知新です。

ダイズ圃場

ヒストリカルデータ(栽培結果がびっしりと記録されています)

ダイズの他に、肉用牛の黒毛和種の研究も行っています。黒毛和種は豊かな霜降りと風味が特色で、現在は海外でも注目を集めています。その品種改良には統計学が用いられていますが、それをゲノム情報を利用することで効率化する研究を行っています。

豊かな霜降りの黒毛和種
                                 (小野木 章雄)

久々の学外実習(その1)

 2021年6月26日、食料農業システム実習Aを受講する12名と教員1名が、現地実習先の高島市マキノ町森西地区を訪問しました。森西地区はメタセコイア並木から車で5分ほどのところにある小さな集落ですが、これまで1枚も耕作放棄地を出すことなく約16ha(うち傾斜度1/20以上の棚田は8.4ha)の棚田を維持・保全しておられます。

森西の棚田を見上げる

今回の実習は、集落の共有資源の管理作業に参加しながら、棚田の維持やブランド化について現地の方々の考えを伺い、地域農業の維持発展について考えることを目的としていました。参加した学生は、コロナ禍で学外実習ができない日々が続いたこともあり、貴重な機会に積極的に学ぼうとする姿勢がみられました。


実習では、まずメタセコイア並木で有名なマキノピックランドを訪れ、森西地区の農家の方も多く出品されている直売所を視察してその管理運営についてヒアリングを行いました。


ピックランド前のメタセコイア並木

ピックランド内の直売所を視察

換気に気をつけながら、桂田支配人(左)と峯森出荷協議会会長(森西区長)のお話を伺います

訪れた時間帯のせいもあって、すでに野菜は売り切れの棚も多くありました。マキノピックランドは旧マキノ町の果樹生産組合が運営管理する農業公園で、直売所の売上も果樹が圧倒的だそうです。棚田の生産物と言えば当然お米なのですが、個人出荷のお米を扱うようになったのはつい3年ほど前というお話でした。コロナ禍で観光バスの来訪がめっきり減った一方で、自家用車での来客が非常に伸びていて、訪れる客層や直売所での売れ方が変わってきているというお話も興味深かったです。

ちょっと休憩。ジェラートもピックランドの名物です。


ピックランドでの視察・ヒアリングを終えた一行は、いよいよ森西の棚田を視察に行きました。森西の棚田は、写真などでよく見る不整形な千枚田とは違い、圃場整備済みで大型の機械も入ることができます。一方で、それゆえに畦畔の段差が大きくなり(最大で7m!)、法面の草刈にはとても労力がかかります。現在は地下水をポンプアップして棚田の用水を補っていますが、圃場整備以前の森西は水に恵まれず、明治時代には山をくり抜いて水を引く難工事が行われました(稲山隧道)。そして一行は区長の案内でその山の上へ…

森西の棚田が見渡せる場所から、区長の説明を受けます

稲山隧道に至る山道の途中から、森西のシンボルの1つでもある田屋城跡(標高310m)に登ると、棚田を超えて琵琶湖や竹生島を望むことができます。この日は曇り空でしたが、眼下の景色は抜群でした。田屋城は室町時代から戦国時代にかけての山城で、浅井氏と姻戚関係を結んだ田屋氏の拠点であったと伝えられています。森西地区ではこうした歴史も大事に語り継いでおられます。

田屋城跡から眼下を見下ろしています

田屋城跡から琵琶湖・竹生島を望む

写真では簡単に登ったように見えますが、なかなかの傾斜でした。登山道の整備なども、集落で行われているそうです。

現地視察後、集落の役員の方々から棚田の維持管理やブランド化についてヒアリングを実施しました。棚田で採れたお米は管内のお米と特に区別されずに出荷されているというお話や、一方で山の水で育てた森西の棚田米は琵琶湖の水で育った米とは一味違うというお話など、さまざまなお話を伺うことができました。なかでも、米そのもので差別化をはかることは簡単ではないが、実際に棚田を使って米を作って販売しようという人を集落外から呼び込んで、宿泊や集落との関係づくりなどを全面的にサポートする「お試し就農パッケージ」のような取り組みを行うことで、差別化だけでなく新規就農や後継者の育成・確保につなげたいというアイデアはとても興味深かったです。

換気抜群のヒアリング会場

受講生は、日を改めて地域の共有資源管理活動にも参加しました。その模様はまた改めてご紹介します。(山口)




食料農業システム学科1年生・学科交流会を実施

7月2日、食料農業システム学科の一回生が集合して、対面で学科交流会が行われました。





ソーシャルディスタンスを考慮して、教室は3箇所に分かれましたが、学科の全教員による研究紹介とクイズで盛り上がりました!


例年は、「共食」を通して交流を深めていましたが、
今年度はそれが叶わないため、
おみやげとして、瓦せんべいと龍大ハンドタオルを用意。


学生同士や教員との直接的な交流の機会が少ない中、有意義な時間を過ごせたと思います!!
(中田)

醤油蔵のオンライン見学をしました

2021年7月13日、落合ゼミの選択参加型フィールドワーク「醤油プロジェクト」を実施しました。これは、食文化をささえる地域企業の活動を学ぶためのとりくみのひとつです。

今回は堀河屋野村18代当主の野村圭佑先生のご指導のもと、3回生6名と4回生1名が、醤油蔵をオンライン見学しました。

事前活動:7月1日、堀河屋野村さんから、試食用の醤油と径山寺味噌の商品サンプル、ダイズやコムギ、塩などの原料サンプル、さらにパンフレットなど詰まった小箱が瀬田キャンパスに到着しました。


さっそく中身をチェック。
 
学生たちは商品サンプルを自宅に持ち帰って試食し、その様子を写真撮影するとともに、気づきをメモします。これは3回生内山舞乃さんの写真で、ふだん使っている醤油と比べています。同封のパンフレットも熟読しておきます。

当日の活動:13時30分に和歌山県御坊市の堀川屋野村さんとオンラインで接続し、野村圭佑先生やアシスタントの浦野さんと対面します。

前半第1部では、野村先生から、元禄元年以来の会社の歴史や、「手麹」を使い、添加物一切なし、薪で火を入れ、木桶で熟成させる醤油の特徴やその歴史、さらには野村先生ご自身のライフヒストリーについて、お話をお聞きしました。




後半第2部では、堀河屋野村さんが開発したバーチャル蔵見学システム「蔵人船 cloud-ship」を活用し、蔵内部のようすを細かく観察しました。さらに、蔵の各所で実践される醤油づくりのプロセスを動画で視聴しました。


最後は、インタビューの時間。3回生は原料の選び方や蔵で使われている道具などについて質問し、4回生は卒論に関係した疑問点をお聞きしました。野村先生にていねいにお答えいただき、16時30分にすべてのプログラムを完了しました。

落合ゼミでは、これまでに1期生と2期生が御坊市の蔵にお伺いし、現地で見学をしてきました。コロナ禍でその実施が困難となっていた中、野村先生に相談したところ、「蔵人船」システムがちょうど開発されたとのことで、幸いにも今回のオンライン・フィールドワークを実施することができました。リアルな3D映像と動画との組み合わせ、そしてていねいな解説が、現場で観察する以上の学習効果を生んでいたものと思います。

事前学習から当日の実施まで、一貫して手厚いご指導をいただきました野村圭佑先生、そして、先生と学生とのコミュニケーションを準備段階からサポートいただきました浦野純一様に心より御礼申し上げます。(落合)







基礎演習Ⅱ「特別講義Ⅲ」(植物生命)

 

7/8、京都工芸繊維大学 応用生物学過程 半場裕子教授に「ヒートアイランドと植物の役割」というタイトルで、講演いただきました。



 ヒートアイランド現象やドライアイランド現象の要因について、詳しく説明されたあと、そのような都会の環境における街路樹の役割について紹介されました。難波にある、なんばパークスの例や、自身の調査から、どのような環境下にどの樹種がよいかなどを話されました。

 

また、当日、学生さんからの質問も多数あり、その場で質問できなかった学生さんに対しては、後日、半場さんからの回答もしていただきました。




 以下、学生さんの感想の一部です。しっかり理解し、興味をもってもらえたことがわかります。

― 体感では気温はそこまで上がっていないし降水量も変わっていないように感じていて、スライドに示されたデータを見て減少の幅が年々大きくなっているのが示されるとかなり驚いた。植物生理学というと実験室内で行う研究活動がメインだと思っていたが、都市の植物を研究対象にして活動できているのはとても意外だった。

― 二酸化炭素を減らすために植物を利用することは知っていたが、外観が好ましい植物を使用していて二酸化炭素の吸収率をあまり考慮していない、という話が印象に残った。なぜ植物を植えようとしているのか本質的なところを忘れないようにしないといけないなと思った。

― 私は植物のストレスについて興味があったので、都市の環境と街路樹のストレス研究内容についてすごく興味を持てて、面白そうだと思った。街路樹の必要性について今まであまり考えていなかったため理解することができてよかった。

 

(塩尻)

オンライン授業で、ミツバチについて学ぶ

7/2、食料農業システム学科の1年生対象の「入門ゼミ」において、7組、8組が合同で、ゲスト講義をオンラインで受けました。

今回は、総合地球環境学研究所の外来研究員である、真貝理香さんをお迎えし、「ミツバチがつなぐ食卓と都市」というテーマで、ご講演いただきました。




日本や西欧におけるミツバチの歴史を学びつつ、





フードシステムにおけるポリネーター(送粉者)としての役割など、興味深い話題が続き、



「今までみつばちは、はちみつを作っているだけと思っていましたが、みつばちは私たちと深く関わっていて、生活を支えてくれている大事な存在だと改めて勉強になりました」という声が、学生から聞かれました。

また、

「ミツバチはどのくらいの距離を飛ぶんですか」
「日本ミツバチはおとなしいと聞いたことがあるのですがそれは事実ですか?」

といったミツバチの生態にかかわるものや、

「ミツバチを育てるために資格はいるのですか?」
「ハウス栽培以外は、蜂の種類や量が調整できないと思いますが、それは大丈夫なのでしょうか?」

といった養蜂に関するものまで、さまざまな質問が飛び出しました。

講義後の感想には、「田舎に住んでいるので、たまにミツバチを飛んでいるのを見るのを見て邪魔だなと思っていたのですが、今回の講義でミツバチの可愛さや習性を知れてミツバチに対しての見方が変わりました。 一度ミツバチを育ててみたいと思いました」と、受講前との意識の変化を記してくれる学生もいたり、

「自分もミツバチを飼育してみようか」と思って、インターネットで必要な手続きと方法を検索した」という学生がいたりと、大きな刺激を受けたようです。

真貝さんの講義を通して、食料農業システム学科における学びの豊さや広がりについて触れる機会となったと思います。真貝さん、ありがとうございました。(中川)


【植物生命科学科で扱う実験生物】No.07 酵母

 植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

 微生物科学研究室(島)では、酵母という微生物を主に使って研究しています。


私たちの研究室では、微生物とよばれる目に見えない小さな生き物を対象にして研究をしています。微生物の中には病気を起こしたりする怖いものもいますが、私たちの生活を支えてくれる仲間のような微生物もいます。

酵母という微生物は、人間の食卓に必要不可欠な微生物です。培地という微生物を育てるもののうえに生やした酵母の写真です。



白い方の酵母は、パンやお酒を作る時に使われる酵母です。よい酵母を探してビールと作るような研究もしています。昨年度は、卒業生の記念品用にビールを作りました。赤い方の酵母は、化成品などの原料を作る酵母です。



自然界には、まだまだ素晴らしい力をもった酵母が潜んでいると考えていて、新しい酵母を探すことも研究の目的です。


(島 純)


着付け師さんの活動についてフィールドワークしました

2021年7月7日、落合ゼミの選択参加型フィールドワーク【染織文化編】を実施しました。

今回は、着付け師の宇野薫先生を瀬田キャンパスにお招きし、和装ビジネスにおける着付け師の役割について、3回生3名が参与観察とインタビューをおこないました。


参与観察では、先生にきものを着付けていただきました。小紋、振袖、訪問着と3種類のきものをそれぞれに着てみる、また、ほかの人が着ている様子を観察することで、着尺や帯の素材の特徴、TPOや季節によるきものの選び方などを学んでいきます。耳なれない専門用語が出てきたら、漢字の書き方を確認しながら、フィールドノートにすかさずメモします。

着付けが終わったら、宇野先生へのインタビュー。事前学習の中で出てきた質問、着付けの過程で浮かび上がった疑問などをお伝えして、ひとつひとつ回答していただきます。

           最後に、脱いだきもののたたみ方を勉強します。


きものそのものについて、また着付け師の仕事のあり方やその変化について、現場でのご経験をもとに、終始ていねいに教えていただきました。ゼミでの初めての試みでしたが、充実した時間となりました。ご協力いただいた
宇野先生に心から御礼申し上げます。(落合)


植物生命科学実習(7/5,6)

今週の3回生の植物生命科学実験(担当:浅水先生)は、「ネコブセンチュウのパラフィン切片作製から観察まで」です。

ネコブセンチュウ感染によってトマトの根に形成されたコブの切片を作製し、光学顕微鏡で観察しました。

まず、前回までの実習で作製していたパラフィンブロックを回転式ミクロトーム(試料を切片にするために用いる器具)で切削します。ミクロトームの刃は非常に鋭利なので、怪我をしないよう十分に注意して作業しました。

事前の講義で教わった要点をおさえて、スムーズに切削できました。


次に、切削したパラフィンリボンを伸展します。スライドグラスの上に載せて、一晩、ホットプレートの上で乾燥させました。



翌日は、組織に染み込んだパラフィンを除去するための脱パラフィン操作を行いました。

スライドグラスをスライドラックにセットし、ガラス壺に入れた三種類の試薬に順に浸していきます。




脱パラの操作が済んだらよく水気を切って、切片上にトルイジンブルー溶液を少量のせて染色しました。


染色したサンプルを顕微鏡で観察中。


ネコブ(紫色)に存在するメスセンチュウ(紺色の部分)の体内構造が観察できました。体内に10個程の卵も確認できました!



一連の実習を通じてネコブの根粒内部をしっかりと観察することができました。

(中田)

若手土壌医(マスター) いま何してますか?

  農業に関する資格の中に「土壌医検定」というのがあります.日本土壌協会が行っている検定試験です.時々,求人票にも「<歓迎>土壌医」と書かれていたりすることもありますから聞いたことがある方もいるかも知れません.龍谷大学には土壌医1級の圃場助手の先生もおられることから,土壌医2,3級の試験を大学(準試験会場)で行っています.この土壌医2級の試験に卒業研究が終了した後,挑戦する学生さんが毎年現れます.4年生で卒業も就職も決まってノンビリしたい時期に猛然と勉強を始めて大抵の場合は合格します.彼らが就職を目前にしてなぜ勉強するのか?これから「しっかり働こう!」という気概なのか,よく分かりませんが,頼もしく感じます.そんな卒業生の一人であるY君から後輩にあててメールが届いたので紹介します.

私は今、富山県にある農業機械の整備センターで主にトラクター、コンバイン、田植え機を整備及び修理しています。富山県は全国有数の米どころとして知られておりコシヒカリをはじめ、「てんたかく」や「富富富」など有名な品種が多く作られています。その為か大型の機械も多いです。私は農業機械に関する知識・技術がゼロの状態,かつ,乗るのですら恐怖という所からのスタートで不安しかありませんでしたが、入社2年目の今では分からない箇所は先輩方に指導してもらいながら、機械の整備や修理を1人で行っています。農業機械は作物を生産する上で必要不可欠なものなので11台じっくり取り組んでいます。

さて、今私が農業に関わる仕事をしているのは、大学で「土壌」について学んだ事が大きいです。現在の農業では作物の生産力を上げる為に「土づくり」が重要視されており、またその知識を得る為に「土壌医検定」という資格もあります。私は、いつか1級を取得し「土壌医」となり、農家を生産の面で支えられる人になりたいです。

最後に、皆さんも今後の学生生活で勉強や課外活動、就職活動など様々な事をしていくと思いますが、いろんな事に興味を持って知識を深めたり経験を積んでいってください。

3年生の頃は,研究室で一番の「機械音痴」で,農業機械を整備するなんてとても想像がつかなかったY君ですが,社会人として立派に働いているみたいです.頑張れ! 

                            (土壌学研究室 森泉美穂子)

写真は添付されていた彼の職場周辺の景色です.