フローサイトメトリーは、流体中を流れる細胞などの微小な粒子にレーザー光を当て、生じた蛍光や散乱光から個々の粒子の性質を測定する手法です。植物研究では、細胞核のDNA量を測定する目的にフローサイトメトリーが広く用いられています。農学部では昨年度よりフローサイトメトリー解析装置が導入され、私たちの研究室では大いに利用しています。
解析方法は図のように、葉などの植物組織を核の単離溶液中で細断し、残渣を取り除いて解析装置に供試します。例えば、2倍体や4倍体などの倍数性が異なる植物を比較するためには、これまでは根端細胞の染色体を観察していましたが、核DNA量を解析することにより容易に倍数性を判定することが出来ます。
カブ横断面を正方形に切り分けて解析に供試した |
私たちの研究室では、植物の分化組織で細胞が倍数化するpolysomatyという現象に興味を持ち、フローサイトメトリーを用いた研究を行っています。Polysomatyは珍しいものではなく、食料として利用されるトウモロコシの胚乳やトマトの果実でも観察されます。私たちは卒業研究テーマの一つとして、カブの肥大した胚軸組織のpolysomatyを調査しています。カブの横断面を正方形に切り分けて、各組織片をフローサイトメトリー解析します。
1Cは配偶子のゲノムDNA量を示し2倍体の体細胞は2Cになるが、 カブの胚軸組織では2Cはほとんどみられず、 8C(8倍体)や16C(16倍体)の核が観察された |
その結果、図のように、polysomatyにより8倍体や16倍体といった倍数化した細胞が含まれていることがわかりました。どうしてpolysomatyが生じるのかについては十分に解明されていませんが、倍数化した細胞は大きくなる傾向があり、器官を大きくしたり、栄養分を貯蔵したりするのに役立っているのではないかと考えられています。
(植物育種学研究室:三柴)