【生命科学科・授業シリーズ】No.4 「分子育種学」

  【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】

大学ではどんな学びがあるんでしょうか?このブログでは、毎週、最も大学らしい授業である実習(実験)について紹介してきています。それ以外に、座学でもたくさんの大学ならではの専門的な授業があります。そんな中から、受験生の方々向けに生命科学科の教員が担当する授業を一つ一つ紹介していきます!


「分子育種学」というと、どのような学問分野を想像されるでしょうか?

 「育種学」は品種改良に関する学問分野のことを指し、そこに「分子」が付いているので、「分子生物学の知見に基づいた育種学」と捉えていただいて良いと思います。


 また、このブログをお読み頂いている皆さんは、高等学校では生物で「遺伝」を学ばれると思いますが、育種学は遺伝育種学と言われることからもわかる様に、育種は遺伝学の理解のもとに行われています。そのように考えると分子育種学を受講される学生さんには先に「遺伝学」「分子生物学」「育種学」を勉強して欲しいと思っていますが、「分子育種学」の講義は「分子育種学I」と「分子育種学II」に分かれているので、「分子育種学I」では遺伝学と分子生物学の基礎のおさらいから講義をしています。


 遺伝学の基礎となるメンデルの法則も、例えば丸いエンドウ豆としわの有るエンドウ豆の形質の分離から導き出された法則ですが、「しわ」はでんぷん枝付け酵素遺伝子の変異に起因し(この酵素が欠損すると種子へのでんぷんの蓄積が悪くなりしわを生じ)、その変異もトランスポゾンと呼ばれる「動く遺伝子」が澱粉枝付酵素遺伝子に飛び込み、遺伝子を分断したため起きる、というような分子レベルの理解ができると、遺伝子の変異と形質の関係がよりスッキリと頭に入るのではないかと思います。


 また育種法としては「交配育種」と「突然変異育種法」が2大育種法としてありますが、「交配育種」は減数分裂期の相同性を利用した組換え(相同組換え)により両親由来の染色体DNAが組換わる現象を利用していますが、現在の交配育種は「マーカー育種」により、両親由来の染色体が望むべき部位で組み換わった植物体を効率的に選抜することはできても、組換えが起きる部位は制御できていないことが分かると、交配育種法の発展のためには相同組換えのメカニズムの分子レベルの理解が必要なことを気付いて頂けるのではないでしょうか?


 生物学は好きでも遺伝学は嫌いという学生さんも少なくはないと聞きますが、遺伝学も分子レベルでの説明がされると理解しやすくなると思いますし、分子生物学・遺伝学の知見がどのように育種に活かされているか理解できると、これらの基礎科目を学ぶのも楽しくなると思います。


農学部の学生さんが分子レベルでの生物の理解から現場の育種まで、一気通貫で学び理解して頂けるような講義をしたいと考えています。


みなさんが受講してくれる日が来るのを待っています!!


(土岐)