12月20、21日の基礎化学実習では、植物からの色素抽出と薄層クロマトグラフィーを使った色素の分離を行いました(担当:三柴先生)。
植物には様々な色素が含まれており、緑色1つとっても、クロロフィルaとクロロフィルbという2種類があります。
今回抽出する色素は、ベンゼン環や炭素鎖から成る有機化合物で、水にはほとんど溶けません。
そこで有機溶媒(ジエチルエーテルとメタノール)を使って色素の抽出を試みました。
材料には、ホウレンソウ、ニンジン、イシクラゲ(シアノバクテリア)を使いました。
材料を細かくきって、チューブに詰め、ペッスルですり潰します。
また、組織から出てくる水分を除くために、乾燥剤(シリカゲル)を添加しました。
ペッスルを使ってよくすり潰したら、有機溶媒を加えます。
すると、溶媒に色素が溶けだしてきます。
一晩放置して、さらに抽出を促します。
また、メタノールで抽出したホウレンソウの色素を使って、吸収スペクトルを測定しました。
分光光度計はこれまでの実習でも使いましたが、単一の波長の測定でした。
今回は、波長の大きさを連続的に変えて測定します。
この時の吸光度の値の変化を吸収スペクトルといいます。
吸収スペクトルを測定することで、その溶液がどんな色を吸収するのかを調べることができます。
ここで少し知識が必要になります。
光とは電磁波の一種です。小さな粒が波のように押し寄せていると考えてみて下さい。
その波線の山と山の間の距離が波長です。
色は、光の波長の大きさによって決まります。
吸光度は、物質にある波長の光を透過させたときに、どれくらい光が吸収されたのかを表します。
結果を見ると、400nm~500nmの間と650nm~750nmの間にピークが見られます。
この波長は、紫~青とオレンジ~赤に対応します。
そしてピークが下がる波長、すなわち500nm~600nmにあたる緑は吸収していません。つまり反射しているのです。なので、この溶液は緑色に見えるのです。
2日目は、前日に抽出した色素溶液を、TLC板を使ってクロマトグラフィーによる分離を行いました。
TLC板にはシリカゲルが薄く塗ってあります。
そこに混合物(ここでは色素溶液)を付着させて、先端下側を溶媒(展開溶媒といいます)に浸けると、展開溶媒がシリカゲルの面を上昇していきます。
付着させた混合物のうち、展開溶媒に良く溶ける物質は速く上昇していきますが、溶けにくい物質は移動速度が遅くなります。
この性質を利用して、混合物を分けることができます。
まずはTLC板に鉛筆で印をつけて、色素溶液を付着させる場所を決めます。
細いガラス管を使って色素溶液を吸い上げ、TLC板に付着させます。
溶媒に浸けた下から上へと色素が分離されていく様子がわかります。
予め決めていた位置まで溶媒前線が到達したら、展開漕からTLC板を取り出し、結果を観察しました。
左からホウレンソウ、シアノバクテリア、ニンジンの結果です。
サンプルによって、含まれる色素の違いが明瞭にわかります。
1日目に吸収スペクトルを測った時は単純に緑に見えていた溶液にも、黄色や緑、オレンジの色素が含まれていることがわかります。
ホウレンソウでは、過去の研究結果から中央上側の青緑の色素がクロロフィルa、その下の緑の色素がクロロフィルbであることが分かっています。
溶媒前線に対する各色素の移動度の割合を求めて(Rf値といいます)、どのような色素が分離できたかを分析を行いました。
(辻村)