資源生物科学科を志望する皆さんへ④ ~減肥料・減農薬でパンの原料となるコムギを栽培してみませんか~

 地球規模の気候変動や最近の世界情勢の変化により,食糧の安定生産技術の開発はとても重要な課題となっています.栽培技術の一つとして,有機(オーガニック)農業,Bio農業,生態農業という農法を聞いたことがあるでしょう.定義はいろいろですが,化学肥料や化学農薬を使わずに農作物を栽培する方法です.私たちの研究室では,パンの原料となるコムギを,肥料や農薬を使わないで栽培する技術について研究しています.その一つとして,ヘアリーベッチというマメ科作物とコムギをいっしょに栽培します.これを混作といいます(写真1).

写真1 コムギとヘアリーベッチ の混作
 マメ科は土の中にいる根粒菌と共生して,大気中の窒素ガスをアンモニアに還元します.これを窒素固定といいます(写真2).それをコムギもうまく利用できるように両作物を混作をします.牧草地では,クローバやアルファルファとイネ科の牧草類が,しばしばいっしょに栽培されていますので,北海道や長野県などの牧草地に行くことがあれば,注目してみてください.

写真2 ヘアリーベッチ の根粒(赤いと窒素固定活性が高い)

 私たちが目指すのは,先ずは減肥料,減農薬,そして農業を通じた低炭素社会の実現です.混作による窒素肥料の削減量を数値として示すことが必要です(写真3).温暖化をはじめ,変動する気候条件下におけるマメ科作物の生産について,龍谷大学農学部農場の風景とともに下記のサイトにアップしていますので,そちらも閲覧してみてください.

https://adaptation-platform.nies.go.jp/articles/case_study/vol32_shiga.html


写真3 ヘアリーベッチ を刈るとコムギに窒素が供給される(緑が濃くなる)

(作物学研究室 大門)