植物生命科学科と資源生物科学科では、中学校教諭一種(理科)と高等学校教諭一種(理科)の教員免許状の取得が可能です。
農学部専攻科目「物理学概論」と「物理学実験」のふたつは本免許取得のために必要な教職課程科目として位置付けられ、相互に関連させて進められています。(担当教員:舟橋春彦先生)「物理学 概論・実験」の授業の様子をダイジェストでご紹介します。
2021年度の受講生は、高校で物理基礎のみ履修し、センター試験(現:共通テスト)では物理を受験しなかった方が多数派でした。「物理学 概論・実験」では高校物理の履修を前提にせず、「公式」を丸暗記して計算するだけと誤解して敬遠されがちな「物理」のイメージをくつがえします。
『まずは(将来の)先生たちにたのしく物理を学んでもらいたい、その体験無くして、どうして(将来の)生徒さんたちにたのしい授業ができるでしょうか。』(舟橋先生
談)
自然科学の典型である物理学の考え方・方法・概要の体験的理解を目的として講義が行われていきます。力学や熱・光・波動・電気磁気・原子等を題材に、実験を交えながら授業が進みます。
初回の落下実験での集合写真
「他人の脳ミソも使って考える」
授業は「仮説実験授業」の研究成果を活用し「問題提起→予想(議論)→実験」のステップを積み上げて行われます。
「こんな実験をしたら結果はどうなるか?」と問題が与えられ、結果の予想を選択肢の中から選びます。
クラス全体ではどう考えている人が多いのか、自分は多数派か少数派かを把握し、その後、なぜその予想を選んだのか、どんな理由も自由に発言していきます。
出してもらった理由に質問や反論が展開されることもあります。他人の発言を聞いて自分の予想を変更することも自由です。
「物理」は、具体的な内容よりも、その考え方に価値があります。「他人の脳ミソも使って考える」活発な議論を行うことで科学的な思考を鍛えます。
*斜面の運動*
斜面の運動も落下運動のなぞを解くカギであると考えたガリレオの研究を辿ります。
予想と議論と実験を重ねながら「落下の法則を表す数式」を確かめ受け入れていく過程は、コウシキマルアンキとは全く違った脳ミソの使い方の体験です。
*電磁波*
電磁波の単元では外に出てバネを使って波を再現して貰いました。波長の短い波は、振動数が多いことを自分たちで感じます。
ここでの予想・実験・体験に、<モデル>が活躍します。 モデルを通して見えないものが見えてくる、とても大事な、ものの観方・考え方です。
*スペクトル*
万有引力で有名なニュートンは、実は光と色についての研究でも偉大な成果を残しています。
彼はプリズムを使って光を分けて、光の色の性質を徹底的に調べ上げました。このプリズムで分けた光の色の帯を「スペクトル」と言います。
授業ではプリズムの代わりに回折格子を使って光を分けて観察しました。
*身の周りの放射線*
目で見ることができる光の波長は限られています。
電波や赤外線も見ることができませんが、携帯電話には受信を示すマークがあるし、赤外線ストーブでは暖かさを感じることができます。
放射線は人の目には見えませんし、感じることもできません。ですが「霧箱」という実験装置を使うと放射線の飛跡が観察できます。
「物理学実験」の一環として、自分の装置を組み立てる過程の記録を「他人」に伝わるようしっかり付けるトレーニングとしても取り組んでもらいました。
画像には、先端に取り付けた閃ウラン鉱から出ている放射線の飛跡が白くはっきり写っています。
*力学台車*
この単元では、力と加速度について学びました。
実験ではセンサーを力学台車に取り付け、レールを走らせたときにかかる力と位置をモニターします。センサーはパソコンにワイヤレス接続されており、リアルタイムにグラフが表示されます。
各班のデータを集めて、どんな法則が存在するのか検証しました。
今期の授業では在宅で受講する学生さんもいたため、オンラインでハイフレックス授業も実施しました。
実験室の学生さんが進んでカメラワークを行ってくれたおかげで、実験にも参加して貰うことができました。
教員免許の取得を目指す学生さんが多いため、演示実験の見せ方にも気を付けています。
教員を目指す皆さんが、将来教壇に立った時に、本授業を思い出してたのしい授業の工夫に役立てて貰えたらと思います。
(辻村)