論文が出版されました

野生のクサネム根粒から微生物を分離する過程で、空気中の窒素ガスをアンモニアに変える本来の根粒菌Bradyrhizobium sp.と共存する菌Ralstonia sp. SET104株を単離し、私(畑)は一時期、それが新規な根粒菌だと思い込む失敗をいたしました。ところが、そのゲノム塩基配列を決定したところ、単離した菌株はRalstonia属の新種であることがわかりました。転んで地面に叩きつけられた時につかんだワラが新種だったようなもので、まさに微生物は無限です。

権威と伝統を誇るアメリカ微生物学会が発行するオンライン学術雑誌があります。名古屋大学や中部大学と共同でこの雑誌に原稿を送ったところ、匿名審査員の1人から「微生物の共存に関する段落はややこしく雑誌の趣旨から外れるので省け」と指摘され、改訂に苦労しました。しかし結局、約480万塩基対からなり4,464のタンパク質コード領域を有する新しいRalstonia sp.のゲノムに関する論文が出版されました(https://doi.org/10.1128/MRA.01441-18)。

ただ、この「Article」の本文には500語の上限があり、PDFにするとわずか2ページで、ある意味膨大な情報量が発表されてはいるのですが、図表がひとつもありません。フロントにロボットだけがいるホテルがちょっと前に話題になり、そのうちに運転手がいない自動車が道路を行き交う時代が来るのかもしれませんが、図表がない研究論文が世の中に存在してその著者になるとは夢にも思いませんでした。(畑)