【植物生命科学科で扱う実験生物】No.06 セイタカアワダチソウ

  植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

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【セイタカアワダチソウ】(Solidago altissima

               セイタカアワダチソウ

 今日は七夕ですが、瀬田はあいにくの天気です。

 さて、七夕といえば、短冊に願いごとを書いて笹に括り付けるのが風習ですが、その願いごとは文字で書いています。文字でかくと、○○さんは今、ダイエットをしてるんだ。とか、○○くんは、単位が足りてないのか。などと他人にも願いごとを知られてしまうのですが、良い場合もあり、好きな人の欲しいものがこっそりわかったり、親に見てもらえることを想定してほしいものを書いてみたりと、情報を他人に伝えることもできます。それは、ヒトは文字という言葉を媒介してコミュニケーション(情報伝達)をしているからです。


 では、植物ではどうでしょうか?植物は文字がかけません。でも、実はコミュニケーションをしているんです。虫に食べられた植物は、これまで出していた匂い(揮発性物質)とは違った匂いを放出します。そして、その匂いは、虫をたべる捕食性昆虫を誘引したり、あるいは隣にいる植物の防衛反応を誘導したりします。擬人的に言い換えると、虫にやられたときに放出される匂いは、捕食性昆虫にとっては『あ、あそこには餌があるのか。』という情報になり、隣の植物にとっては『隣、やられてるわ。危険が迫ってるから防衛しとかな。』という情報なっているのです。あるいは、見方を変えると、捕食性昆虫には、『ここに、お前のたべる餌があるぞ~!』という情報を流し、隣の植物には『うっとこ虫きてるで。危険に備えた方がいいで』と伝えているようです。逆に、隣の植物や捕食性昆虫が勝手に情報を使っているだけなのかもしれません。いずれにせよ、植物は匂いでコミュニケーションを取っているのです。

  虫に食べられると匂い(揮発性物質)を出す。その匂いは隣の個体にとっての情報となっている。


化学生態学研究室(塩尻研)では、匂いを介した生物間相互作用の研究をしており、研究対象の一つとして、セイタカアワダチソウを使っています。セイタカアワダチソウは、これまでに、匂いでコミュニケーションすること、さらに匂いで血縁認識をすること、が知られています。現在、食害されている虫(セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシやセイタカアワダチソウグンバイ)によって放出する匂いや反応は異なるのか。また、その匂いの異なりによって匂い受容した場合の反応は違うのか。などを調べています。

            セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ

 

荒地のどこにでもはえるセイタカアワダチソウ。もしかしてコミュニケーション能力が高いからこそ、繁茂しているのかもしれないなあと思う今日この頃です。みなさんも、セイタカアワダチソウをちぎってみて、匂いを嗅いでみてください。『痛いねん!なにすんねん!』とセイタカアワダチソウの声が聴こえるかもしれません。

 

(文責:塩尻)