ウツクシマツ保全活動のお願いのために京都翔英高等学校に

 湖南市の天然記念物「ウツクシマツ」は、東海道石部宿のランドマークとして、昔から安藤広重などに描かれ、地域の皆に愛されてきました。根本から分枝する姿が珍しく、以前我々の学科に所属されていた植物の形態に造詣の深い岡田清孝先生も興味を示しておられました。その天然記念物の松林が、松枯れ病の被害に遭い、半数ほどが枯死してしまいました。それを復活させようと、湖南市の方々が一丸となって取り組んでいます。私もその保全活用委員会のメンバーとして、学術関係のアドバイスなど行なっています。


根本から分枝する珍しい樹形

この病気は、マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリが連携して媒介します。対処するためには、この連携を「絶てばいい」ので、殺虫剤を投与すれば部分的には解決します。ですがこの対処では被害を軽減できても、実は根本的な解決にはなっていません。

この病気が広がる背景には、山から木々を切り出さなくなった人の生活の変化が関係しています。森から木や下草を取り出して畑に持ち込んでいた生活から、肥料を購入し畑に投入する生活に変わりました。枯死した木々を放置することでカミキリムシの発生を促してしまうほか、森の下草が豊かになっています。この状態では、新しいマツが芽生えてきません。マツは、ガレ場など岩石層が露出したところで芽生えます。そこで、地面の腐葉土を取り除くテストが昨年度行われました。結果、腐葉土を取り除いた区画ではしっかりマツは芽生えることが確認できました。

天然記念物のウツクシマツの松林を守るには、「枯死を防ぐ」とともに「自然更新する新しい芽生えを確保すること」が肝となります。このためには、下草を刈り、腐葉土を掻き取ればいいのですが、これには膨大な作業をする人員が必要となります。


龍谷大学のメイン体育館が改修工事を行なっている間、少林寺拳法部の練習拠点として監督やコーチのおられる京都翔英高等学校に出稽古に行っています。この高校では、「自他共楽」という少林寺拳法の目指す一つの考え方、「自分だけでなく半分は皆のことを考えましょう」という教えを実践するために、ボランティアをする授業コマがあります。そのコマを活用して、この腐葉土を取り除く作業をしてもらえないかと、考えました。

そこで、授業時間を割いていただき、関係しそうな学生さんたちに集まってもらい、湖南市での活動を紹介し、お願いの趣旨を説明する時間をいただきました。

いつも練習に使わせてもらっている道場で講演しました。
安藤広重や「千歳集」など昔の文献の中で紹介されているウツクシマツを示しています。


学生さんたちには熱心に聞いてもらい、講演後には質問もいただきました。

11月5日の作業の日に、時間が取れる学生さんたちが何名いるのかまだ参加希望者を集計していないので分かりませんが、やってみたいという声が出ているそうです。彼らと作業できる時が楽しみです。

(古本)