嚥下食(えんげしょく)について学びました(栄養士再教育講習会:滋賀県栄養士会)

みなさんは、椅子にもたれ天井を見た状態でお水を飲んだことありますか?
きっと唾液を飲み込むのも勇気がいると思います。怖いと感じるかもしれません。
ヒトは病気や加齢に伴い、舌やのどが思うように動かなくなり、食べたいと思ったものがうまく食べられなくなり嚥下困難(えんげこんなん)になることもあります。
「嚥下(えんげ)」とは、飲み込むことをさします。もしかすると咀嚼(そしゃく)という言葉と共に見ることが多いかもしれません。咀嚼は嚙み砕くことをさします。

嚥下が上手くいかないと窒息につながったり、誤嚥(本来食道に入るべき食物が気管に入る)により肺炎を起こしてしまうことも考えられます。嚥下の状態は人それぞれで、様子を見ながら個別に対応する必要があります。嚥下食は嚥下状態に合わせ5つのレベルに分類されます。栄養士・管理栄養士は、ただ喫食者にお食事を提供し、喫食者の栄養を管理するだけではありません。それぞれの嚥下能力に応じて分類された食事形態を無理なくおいしく加工するアイデア、それを栄養指導で伝える工夫も必要です。


今回は公益社団法人滋賀県栄養士会の事業の一つ、栄養士再教育講習会(療養指導実践者講習会)が龍谷大学農学部食品加工学実習室で行われました。
今回のテーマは「訪問栄養食事指導の中の嚥下食(嚥下調整食)とその実習」と題し、講師に横浜南大和病院 栄養部部長 工藤美香先生をお迎えし、実習を行いました。




工藤先生は「お料理のできないお父さんが、奥さんの介護をする事になっても、1日3回のお食事に困らない方法」としてコンビニのお惣菜(真空パックされているもの)の活用方法や、ゼリーの選び方、とろみ剤の種類ととろみのつけ方、酵素を使って野菜をやわらかくする方法など、誰でもすぐに実践できる身近な物から、最新の物まで幅広く教えていただきました。



全部で10品。
簡単にできて、見た目も、味も、香りも良く、そして安心して嚥下できるお料理です。

何点かご紹介します。
繊維の多いゴボウを茹でる前に酵素に漬け込み柔らかくし、めんつゆで炊いた煮物。
サイズは5cm位、縦割りに切っています。切り方も大切なポイントです。


小松菜を茹でる時に酵素を加え、より柔らかくしたごま和え



コンビニのひじき煮につぶした絹ごし豆腐を和えたもの
共にコンビニで購入できます。あっという間に白和えの様な副菜が完成。



左:市販のこしあんに油を加えたもの 
右:市販のこしあん
油を加えることにより嚥下を助けるだけでなく、エネルギーも摂ることができます。



参加者は病院・福祉施設・学校・行政と職場は違いますが、全員現役の栄養士・管理栄養士です。栄養士・管理栄養士は施設によって1人配置の現場も多くあります。日常の業務の中で「もっと良くなる方法はないか」と悩んだ時、研修会に参加する事でヒントを得る事もたくさんあります。
そして研修会では同じ悩みをもつ栄養士・管理栄養士仲間と出会い、情報を共有することが出来るだけではなく、大学時代の恩師と再会することもあります。
既に栄養士会活動に参加している学生もいますが、卒業してからも同じ資格を持つ仲間として一緒に活動出来たらと思います。

                             まるお