海外農業体験実習 「ハワイ」プログラムの下見

 3泊5日の強行日程で、3名の教員と1名の事務職員とで、ハワイ島での実習の下見に行きました。このプログラムは、今年から開始予定で、農学部の4学科の学生が2年生以降に受講できます。

 ハワイ島のヒロを拠点に、
(1)パパイヤ(レインボーパパイヤ)の栽培と収穫・流通
(2)コナでのコーヒー農園での収穫・加工体験
(3)本願寺のヒロ別院での礼拝と日本人入植者との語らい
(4)USDA(アメリカ農水省)の研究機関を訪問
というプログラムに仕立てる予定です。
 それぞれ、お世話になる方を訪ね、現地の確認、内容の確認などをしました。

 リングスポットウイルスで壊滅したパパイヤ産業を復活させたのは、遺伝子組換えパパイヤ(品種名、レインボー)の開発です。いまではハワイで生産される90%がこの組換えパパイヤで、ちなみに日本で許可された唯一の生食できる遺伝子組換えパパイヤです。
 お世話になる方の農園は、この販促に尽力されてきて、しかし今年の火山の噴火で、大きな農園部分が壊滅的な被害を受けたということでした。
 農業の現場では、つねに病気も含め自然の猛威にさらされています。利益もあげねば商売にはならないし、地域の産業を盛り上げたいという気概も必要です。ウイルス病や火山噴火に立ち向かっているこの方の背中を見て、きっと学生はいろいろ感じるはずだと確信しました。このパパイヤ開発はハワイにおける産官学の連携事例で、かつ現在進行形で困難に直面し乗り越えようとしている好例です。





 コナでは、コーヒー農園を訪ねました。「コナコーヒー」はハワイでは有名ブランドです。
 お世話になる農園のご主人は、日本から移住して7年、まだまだこれからという立ち上げ期の方です。移住先の地域の方々に溶け込んで、畑の拡充に取り組んでおられます。地域の信頼を得つつ、事業を展開する様子に、こんな学生がうちから出てくれたらと、思いました。
 頂いたコーヒーのほんと美味しいこと。
 畑の見学では、コーヒーの花を見つけました。まだ木についているコーヒーの実には虫が入っていました。甲虫の一種で、害虫です。逃がしてはならないので、爪の上でつぶしました。昔、学生の頃、アオキの実につく「アオキミタマバエ」の数を調べる実習をしたことを思い出しました。実が熟さないのは、寄生するアオキミタマバエが植物ホルモン様物質を出して実の成熟をコントロールして遅らせているからと学んだように思います。収穫時期ではない今、コーヒーの実が残っているのは、この甲虫が同じ作用を起こしているのであろうと想像しました。

 ほかにもコーヒーには線虫害もよくでるということでした。線虫を研究対象とする岩堀先生はおおいに興味をそそられたようで、早速、土を調べたいという研究サンプルの調達交渉をされていました。実習の下見のつもりがこれから研究対象にと展開した形です。





 本当に農業はたいへんだと実感した下見でした。自然の猛威の中でどうにか成立しています。。

 ハワイ島には本願寺派の別院が複数存在します。そのうちヒロにある別院を訪ねました。入植者の精神的支柱であったというのは容易に想像がつきます。農業を中心とするたいへんな生活のなかで、人々のよりどころになったのでしょう。強盗やレイプ、人心が大いに乱れたのを見過ごせず、安芸門徒からこちらに布教に来られたと聞来ました。日本人コミュニティーの中心だったので、第二次世界大戦の折には真っ先にスパイ容疑をかけられたということでした。
なお、「礼拝」を英語では「Service」というらしいです。宗教系の言葉を英語で聞くのも新鮮でした。盆ダンスの練習に来られていたおばあちゃんは珍客と話したいようでしたが、時間もなく、十分には伺えませんでした。次回学生との訪問時にとっておきます。

 これらのプログラムをいい感じに配置して学生に示したいと思いました。この夏に学生を伴って再訪します。
 
 

 これからもっともっとお世話になるのだけれど、今回お世話になった関係者のみなさまにまずは感謝いたします。 ありがとうございました。
(古本)