トロロアオイとガンピ 植物生命科学科での地域連携・政策学部との連携事例

研究圃場のある田上に隣接する桐生地域は、雁皮紙の産地として、柳宗悦の「日本の手仕事」に紹介されています。ところが、現在では、成子和紙工房、1軒がその伝統を継ぐのみです。その原料のガンピは野生に生えているものを採るしかなく、安定供給できないことが雁皮紙産業維持の難しさの理由の一つです。
龍谷大学着任後、その和紙工房の成子さんから、ガンピの栽培方法について相談を受け、すこしずつ取り組んできています。ところが、なかなかうまく栽培できていません。まだ、なにか大切な要素を見落としているようで、試行錯誤する日々が続いています。何故栽培が難しいのでしょう。

同じく和紙の原料となる植物にミツマタやコウゾがあり、それらの植物繊維はトロロアオイから抽出される「ネリ」を加えて、漉くことで、均一な紙へと漉かれてゆきます。ガンピとはまた別のとっかかりから、トロロアオイ栽培の相談を、政策学部の院生から受けました。古本ゼミの1年生の入門ゼミで栽培希望者を募ったところ、5名ほどが参加してくれることになりました。早速、播種し、1週間後に芽生えてきました。
こちらの様子は、入門ゼミの学生たちが独自で立ち上げたInstagramでも紹介しようと思っています。https://www.instagram.com/nagomi_dokoro/

植物の不思議は、例えばガンピの繊維の美しさや栽培の難しさ、トロロアオイのネリの成分などにも見いだすことができます。広く農業を文化の側面からもとらえ、植物の不思議に迫れたらと思います。まだ、文字通り、芽生えたばかりの状態で、成熟した研究とはいえない状態ですが、この芽生えを大切にしたいと思います。
(古本)