土壌細菌の遺伝子を利用して農作物の根を改良する

 

 土の中にはたくさんの種類の微生物がいます.土壌細菌(バクテリア)のアグロバクテリウムもその一つです.植物を遺伝子組換えする時に,遺伝子の運び屋として使われることで知られている,あの細菌です.この仲間には,植物の根に感染して,より多くの根を発生させる種もいます.発生した根を毛状根と呼びます.英語では,hairy rootと言います.毛のような根という意味ですね.

 私たちの研究室では,日本国内に生息するこの細菌が持っているrol遺伝子(根を出させる遺伝子という意味です)を農作物に導入することを試みています.つまり,根が多くなって養水分の吸収に優れる作物ができないかとか,根量をより多くして根で生産される有用な物質が大量に取れないかとか,まさに粘り(根張り)強く挑戦を進めています.

 上の写真は,マメ科作物のラッカセイの毛状根です.葉にこの菌を感染させるとこのように葉から根が出てすぐに分岐します.下の写真は,キク科作物のルドベキアの毛状根から再生した植物体の根です.左が毛状根由来の植物です.遺伝子を導入していない右の植物に比べると,発根が旺盛だということがわかりますね.まだ,限られた植物種でしか再生に成功していませんが,研究室の学生達が新たな植物で日々試みています.

(作物学研究室 大門)

ラッカセイの幼植物の葉から発生した毛状根

ルドベキアの毛状根から再生した植物の旺盛な根系(左)