雑草の匂いが、米の収穫量をあげる?
(研究成果が論文として公表されました)
植物は、被害をうけた別の植物から放出される匂いを受容すると、虫に対する防衛力を高めることが知られてます。この現象は、匂いを介した植物間コミュニケーション(Plant-Plant communication)やプラントトーク(Plant talk)と呼ばれており、40種以上の植物種で報告されています。また、植物間コミュニケーションは、同種植物間だけでなく異種間でも起こることも知られています。我々は、この現象は農業に展開できるのではないかと考えました。つまり、雑草の匂いを作物に受容させて、収量をあげるのです。
イネの苗床に、刈り取られた雑草をメッシュの袋にいれて吊り下げておきます。(写真)
こうすることで、イネは苗の段階で雑草の匂いを受容することになります。その後は、通常通り、田んぼに植えます。田植え後1~2か月後のイネの葉の被害を調べると、苗のときに匂いを受容したイネは、何も匂いを受容していないものに比べて、被害が低下していました。さらに、収穫量においても、苗時に匂いを受容していたイネの方が高くなりました。つまり、刈り取られた雑草の匂いが、イネの虫にたいする抵抗性を高め、収穫量も上げることが明らかになりました。
草刈りをすることで、作物に散布する農薬を減らし、収穫量も上げるとなると、まさに、一石二鳥です。今後は、どの雑草が有効なのか、またどの匂い成分が重要なのかを明らかにしていく予定です。
(塩尻)
本研究は、Frontiers in Plant Science に2021年7月に掲載されました。
Field-grown rice plants become more
defensive against herbivores and more productive when exposed to artificially
damaged weed volatiles at the seedling stage
Kaori Shiojiri1*, Rika Ozawa2, Masayoshi
Uefune3, Junji Takabayashi2*
Front. Plant Sci., 12 July 2021 | https://doi.org/10.3389/fpls.2021.692924