【植物生命科学科で扱う実験生物】No.09 シロイヌナズナとイネ

 植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

 植物ゲノム工学研究室では、植物における新規ゲノム編集技術の開発を行っています。ゲノム編集技術は、生命の設計図であるゲノムを正確に書き換える技術であり、今後の植物科学の研究と品種改良に必須の技術であると考えられています。この技術は最終的にはあらゆる植物に適用可能だと思われますが、基盤となる技術開発は扱いが容易な植物を用いて行うことが効率的です。

この点、これまでもこのコーナーで登場したシロイヌナズナとイネは、①ゲノムのサイズが小さく全塩基配列が解明されている、②世代時間が短い(シロイヌナズナで1.5カ月、イネで最短3か月)、③形質転換が容易である、という特長から、それぞれ双子葉植物と単子葉植物におけるモデル植物とされてきました。ゲノム編集技術の開発においても、この2つの植物が最も良く活用されています。

 研究室では、ツールの開発と動作確認をこの2つの植物を用いて行い、ツールを様々な植物を扱う研究者に提供しています。提供したツールが様々な植物で好適に働き、新たな形質を計画通りに付与した植物ができると、開発者としては大変嬉しく、さらなる技術開発の励みになります。

 

(A)     生長中、開花期、収穫期のイネ

(B)     イネの形質転換(お米の胚盤由来のカルスにアグロバクテリウムを感染することにより、約一か月で形質転換イネの幼植物体が出来る。左から感染後7日のカルスと再分化した形質転換イネ。上はGFPの蛍光像、下は明視野像)

(C)     ゲノム編集で作出した閉花性イネ(〇で囲った部分(鱗皮)が肥大することにより開花するが、左側のゲノム編集イネは肥大せず閉花受粉する。閉花受粉はカビの胞子の侵入を防ぎ、他品種との花粉との交配も防ぐ重要な農業形質である)

(D)    径9cm X 高さ2cmのシャーレの中で開花結実したシロイヌナズナと、シロイヌナズナのプロトプラストの形質転換(左が明視野像、右が蛍光像。蛍光タンパク質ビーナスが発現すると細胞が赤く光る)

(土岐)