Springerから本が出ました

 国際的な学術出版社であるSpringerから私が著者の一人として加わった「Complex Trait Prediction」が出版されました(https://doi.org/10.1007/978-1-0716-2205-6)。

生物の形や性質などは専門的に形質(trait)と呼ばれます。形質は多数の遺伝子の複雑な(complex)作用により形成されますが、近年、形質を遺伝子の情報から統計学的に予測(prediction)しようという試みが盛んに行われています。これが可能になると、遺伝子の情報から将来の疾患リスクが予測できたり、栽培することなく優良な品種を育成できたりする可能性があります。

この本は形質予測のための様々な手法やその応用について解説したものです。私が担当した13章(https://doi.org/10.1007/978-1-0716-2205-6_13)では、作物の生育を模した数理モデルと遺伝子情報を組み合わせた予測手法について解説しています。作物の数理モデルは気象や環境の情報から作物の生育を予測するもので、これと遺伝子情報を組み合わせることで、任意の環境下での作物の形質を予測できるようになります。開花期など比較的予測しやすい形質もあれば、収量など予測が難しい形質も多く、まだまだこれからの技術ではありますが、この章がより多くの研究のきっかけになってくれることを願っています。

さてこの本自体は高価なのですが、私の章はオープンアクセス、つまり無料で誰でも閲覧可能であり、上記のリンクから読むことができます。専門家でないと難しい内容だとは思いますが、ご興味あればクリック&ダウンロードしてみてください。

                                                                    データ生命科学研究室 小野木章雄