日本科学未来館でのイベントに協力しました

    7月4日(月)に先日のブログでも紹介しましたように、植物生命科学科の元教授・岡田清孝先生が本年度の「みどりの学術賞」を受賞されました。

岡田清孝 元教授が「みどりの学術賞」を受賞!

この受賞を記念した一般向けの受賞記念イベントが9月3日に日本科学未来館で開催されました。

日本科学未来館での受賞記念イベントページ

当日は岡田先生から、今回の受賞理由となった植物のかたちづくりに関するご研究内容が一般向けに紹介されましたが、この研究で岡田先生が用いられたのがシロイヌナズナという植物です。遺伝学的研究のためのモデル植物としてよく知られていますが、その根幹となるのが数多くの突然変異体です。遺伝学的研究とは端的に言えば、ある遺伝子に変異が起きることでその植物の何かがおかしくなる、という現象を逆手にとって、その「何か」の原理に迫るという研究です。例えば、花が咲かない突然変異体の原因遺伝子が働く仕組みがわかれば、花が咲くためのしくみがわかる、ということです。岡田先生のご研究には、数多くの植物のかたちづくりに関わるシロイヌナズナ突然変異体が用いられましたが、今回の日本科学未来館でのイベントで、ぜひこれら突然変異体のいくつか代表的なものを展示したいとの岡田先生のご希望がありました。実物を見ることで、突然変異体とはどういうものか、その見かけ(表現型、と言います)から、どのように植物のかたちづくりを考察していくのか、を、来館者やイベント参加者が考えてくださる機会になれば、ということだったのだろうと思います。


そこで、当研究室でもお手伝いさせていただくことにして、岡田先生が選ばれたいくつかの代表的な突然変異体(遺伝子組換え体ではありません)を当研究室の学生有志が種子から育てることに挑戦してくれました。古い種子もあったり、ヘテロ親からの分離集団で潜性ホモ個体でしか表現型が見えないものもあったり、と扱いがなかなか難しいものでしたが、発芽率を上げる工夫などをしつつ、水やりや管理を続けて多くの形態突然変異体を育ててくれました。


変異体の一つ(花芽がカリフラワー状態になったもの。学生撮影)


これら植物は、ちょうどその期間に開催された本学オープンキャンパスでの植物生命科学科ブースでも展示させていただきました。育成担当の有志学生らが「高校生がわかりやすいように」と、拡大写真などを用意して手作りの案内板を作るなどして、興味を持ってくれた高校生らに頑張って説明していました。


本学オープンキャンパスでの展示の様子


ひと月程度にわたる育成の後、イベント直前の8月末に、今回の日本科学未来館での岡田先生受賞記念イベントを担当しておられる科学コミュニケーターの上田羊介さんが本学を訪問してくださって、育成担当の有志学生と歓談しつつ、これら変異体の写真撮影を行い、わかりやすい突然変異体をいくつかお持ち帰りいただきました。これら有志学生が育ててくれた突然変異体は以下のように、9月3日のトークイベントの日までの間、日本科学未来館で展示されていました。


研究室前での上田さん(左端)と有志学生(一部)の写真


日本未来館での展示の様子


手伝ってくれた学生たちにとっても、実際に見たことのない、話でしか聞いたことのない、「伝説」の変異体を目にして、「生き物のふしぎ」を実感する経験になったことと思います。また、それら植物を実際に育てて、観察して、そのしくみを勉強して理解して、オープンキャンパスのような場で一般の人に説明したり、と、とても大きな経験にもなったと思われます。普段は「学ぶ」立場の学生さん達ですが、自分達の日々の研究室での活動が、こうやって日本科学未来館のような場での展示を通して、一般向けの科学の啓蒙にも役立っていることをわかってもらえたていたら嬉しいです。


(別役)