【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます】
急速に秋が深まり、冬の始まりを感じる今日この頃、 植物生命科学科の各研究室では4回生が卒業研究の仕上げに向けて熱い日々を過ごしています。昨年度同様、今年度も各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?
【コムギ遺伝資源の有効利用】
植物遺伝学研究室(竹中)では、主にコムギを研究材料として研究に取り組んでいます(コムギ以外の植物を扱いたい学生も大歓迎です)。研究テーマは学生の希望によりますが,今年度の4年生は圃場での比較栽培を希望する学生が多いです。
今年度から日本の在来コムギ(交配による近代育種が始まる前に栽培されていたコムギ)の比較栽培と形質調査を行っています。今年は比較対象も含め,約270系統のコムギを牧圃場で栽培していました。コムギが穂を出す4~5月は,毎日休まず圃場で調査を行わなくてはいけません。さすがに毎日の調査となると一人では難しいので,調査はチームで行います。
毎日コムギを見ていると,だんだんと系統間の違いに気づけるようになってきます。気づきの中から新しく,自分だけの研究課題を見つけ出してくる学生もいます。
写真は収穫したコムギの草丈の測定と穂の回収の様子です。回収した穂は室内で長さや小穂の数を調べてから脱穀して,種子の重さや形も調査します。栽培や調査はチームで協力し,取得したデータは各自で解析を進めます。
実験室内での研究に取り組んでいる学生ももちろんいます。コムギで遺伝子組換えを行うためには①未成熟の胚を脱分化させてカルスの形成,②カルスで形質転換,③カルスを脱分化させて植物体を再生の3段階の作業が必要です。そのため,満足に遺伝子組換えを行えるコムギ品種は限られています。今年はこれまでに報告のない複数の系統を対象に,①未成熟胚からのカルス形成,③カルスを脱分化させて植物体の再生にチャレンジしました。
左上の写真は未熟種子から胚をとりだしているところ。下の写真はカルス。左上の写真はカルスから脱分化で再生させたコムギ。予想以上の結果で,しっかりと穂がついて次世代も採種できました。
4年生が卒業研究の仕上げに向かうこの時期は,来年の栽培準備に追われる時期でもあります。今年も農場の技術専門助手の先生方にお世話になりつつも,自分たちでできることは自分たちで行います。
写真は牧圃場のビニルハウス内に畝をつくっている様子です。今年は3年生,4年生だけでなく,大学院生も手伝ってくれました!院生は食の循環実習でTA(Teaching Assistant)として鍛え上げられだけあって,後輩たちに指示を出しながら手際よくきれいな畝を仕立てています。
(竹中)