【植物生命・卒研紹介シリーズ2022】No. 7 植物ゲノム工学研究室

    【植物生命科学科は2023年度より生命科学科に名称変更されます

 急速に秋が深まり、冬の始まりを感じる今日この頃、 植物生命科学科の各研究室では4回生が卒業研究の仕上げに向けて熱い日々を過ごしています。昨年度同様、今年度も各研究室の卒業研究の様子をリレー形式でお伝えしようと思います。植物生命の各研究室ではどんな研究をしているのでしょうか?

植物ゲノムを設計通りに編集する技術を開発】

植物ゲノム工学研究室(土岐)では、植物のゲノム上の標的遺伝子に狙いを定めて改変する技術(いわゆるゲノム編集技術)の開発を行っています。


ゲノム編集と聞くと標的遺伝子をCRISPR/Cas9と呼ばれるハサミで切断し、必要のない遺伝子を壊す技術を思い浮かべるかもしれませんが、標的遺伝子を設計通りに正確に改変する遺伝子を改良する技術が今後必要とされます。この点ゲノム編集で標的遺伝子を破壊することは多くの植物で可能になって来ましたが、正確に改変することは一部の植物でしか成功していません。研究室ではゲノム編集の効率を向上させ精度を高めるために、新規のゲノム編集ツール開発を行っていますが、ゲノム編集はツールと細胞内のDNA修復システムの協調作業で行われるので、植物のDNA修復システムを理解するための基礎研究も行っています。


一方、改変すべき遺伝子はわかっていても、どのように改変すれば望むべき形質(形態や性質)が得らえるかわかっていない場合も多くあります。その場合はゲノム上の標的遺伝子のみにランダムな変異を導入することが有効です。研究室ではそのような技術開発も行っています。


研究室は土岐が昨年4月につくばの農研機構から異動して立ち上げたので、まだ出来立ての研究室です。現在初めての卒研生が卒業研究に勤しんでます。植物のゲノム編集を行うためにはまず、ゲノム編集用のベクター(プラスミド)を作る必要があり、その作業はいわゆるDNAの切り貼りの作業で、大腸菌を宿主として用いて行います。早く植物を直接扱う実験をやりたいというという学生さんもいますが、ベクター作りは遺伝子工学の基礎的な素養を育むのに良い機会です。将来違う分野に進んでも良い経験になると思います。


ゲノム編集された植物が得られ、その解析を始めている学生さんは非常に楽しそうに実験しています。植物が好きで、細かな作業も好きな方には向いている研究分野だと思います。


ゲノム編集は新しい研究分野なので、世界的に見ても若い方が活躍しています。学生さんが先入観の無い自由な発想で新たな技術開発を行い、世界の食糧問題の解決に貢献する画期的な農作物を開発してくれることを期待しています。


(土岐)