コムギ畑の地力を緑肥で増強する


滋賀県の農耕地面積は5万ヘクタール程度ありますが,その90%以上を水田が占めています.近江のお米は美味しいと評判で,最近では早生品種の「みずかがみ」のように高温登熟に抵抗性を持たせた品種の育成も進み,昨年は特A米となったことは周知のとおりです.減農薬,減肥料によって環境こだわり米として生産する取り組みもなされています.一方,日本のコメの一人あたりの需要は年間55kgと年々減少し,食の欧米化が言われて久しくなっています.飼料として年間1000万トンのトウモロコシを輸入する一方で,コメの生産量は年間750万トンまで減少しています.コムギの自給率は14%と低く,パン用コムギに至ってはほとんどが輸入です.ここ滋賀県では,美味しいお米の生産に加えて,麦や大豆を輪作する体系に積極的ですが,中にはパン用コムギに専念している生産者さんもいます.先日,その方の圃場にお邪魔して出穂期の畑でコムギ栽培談義をしてきました.水田転換畑で畑作物を作るには,地力を維持する方策を考えないと長続きしませんが,この生産者さんは,夏作の緑肥を導入してその維持をはかろうと考えています.私は緑肥の研究に取り組んで長いので少しでも助言できればと畑に行ってきました(黄色い花の写真は,クロタラリアという緑肥作物です).パン用のコムギの収穫がこの地域の他のコムギよりも少し遅れるので,緑肥作物の生育がどの程度確保できるかが課題かもしれません.今後,この試行を支援できればと思っています.


text & photos: Hiroyuki Daimon