資源生物科学科(2023年度から農学科)を志望する皆さんへ 17 〜たった一夜の儚い夢~

皆さんはゲッカビジン(月下美人)の花を見たことがありますか?

ゲッカビジンの花は一夜限りしか開花しないため、多くの人が「ゲッカビジンの花を一度見たい」と思うような魅力的な植物です。ゲッカビジンには、「一年に一度しか咲かない」、「満月の晩に咲く」など様々な俗説があります。高校生の皆さんはご存知ではないと思いますが、イルカが歌った「月下美人の咲く夜に」を始め、十数曲の歌も作られています。

開花始めのゲッカビジン(17:30 )
 先日、龍谷大学農学部の温室のゲッカビジンが開花しました。17:30 ごろから蕾の先が開き始め、20:30 ごろには満開になりました。今回はゲッカビジンと私の研究室で行っているゲッカビジンに関する研究を紹介します。

 ゲッカビジンは中南米原産のサボテン科の植物です。サボテンと言うと皆さんは砂漠のような乾燥地帯に生育する植物を連想すると思いますが、ゲッカビジンはサボテンとしてはちょっと変わり者です。森林性サボテンと

満開のゲッカビジン(20:30)


いって、水が豊富な熱帯雨林に生育しています。そのため、サボテンでありながら乾燥は苦手です。ゲッカビジンは初夏から秋にかけて、直径20cmもある大きな花が咲きます。しかし、一つの花は一晩で萎んでしまう儚い花です。この儚さが日本人の心に響くのかもしれません。花色は白しかありませんが、開花時には強烈な芳香を放ちます。自生地では、コウモリがこの花を訪れて花粉を運ぶと言われています。

 私の研究室では、もっと大きな花が咲くゲッカビジンを作り出す研究を行っています。直径が30cmにもなるゲッカビジンが誕生したらと思うとワクワクします。また、組織培養という技術を利用して、試験管の中で大量に増殖させる技術に関する研究も行っています。この研究と遺伝子組換え技術を組み合わせることで、白色以外の花が咲くゲッカビジンや光るゲッカビジンの作出も夢ではないかもしれません。

    神戸敏成(花卉園芸学研究室)