高校生の皆さんと話をすると,よく砂漠化の話が出ます.少ない水でも生育するような農作物の品種改良をやってみたいとか,乾燥地でも作物が生産できるような栽培技術を開発したいといったことを耳にします.もちろん,それはとても大事な視点です.一方で,日本では農耕地の54%を水田が占めます.食生活が変わり,コメが余剰になっているので,現在は140万ヘクタール弱の水田でコメを生産しているに過ぎませんが,それ以外の水田では,本来は畑で育つ作物(畑作物)であるダイズやムギや野菜類を栽培しています.その時に問題となるのが,それらの作物の「耐湿性」です.土壌中の水分が多過ぎると,根が十分に発育せず,呼吸困難になって作物が発育不良を起こしてしまいます.
そこで,私たちの研究室では,作物の収穫後に残った茎葉部などの収穫残渣を有機物として土壌にすき込んで,土の物理性を改善したり,畝の高さを高くして作物の根が張る領域が適切な水分になるような工夫をしています.一方,収穫した残渣をすき込むと微生物による分解の過程で温暖化ガスの一種である一酸化二窒素(N2O)が排出されるので,その量をモニタリングすることも行っています.これからの日本の農業では,作物の「耐湿性」や圃場からの「温室効果ガスの排出削減」についても考えて欲しいところです.
(作物学研究室:大門)
畝立て機による高畝作り |
パン用コムギ用の約30 cmの高畝 |
収穫残渣すき込み後の圃場からのガス採取 |