今年は、Optogenetics(光遺伝学)の研究で、Karl Deisserothさん、Peter Hegemannさん、Georg Nagelさんがノーベル賞を受賞されました。受賞内容の詳細については、すでにさまざまなところで紹介されていますので、ここでは割愛したいと思います。
今回、私が触れるのは、単細胞緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)のEST(expressed sequence tags)データベースについてです。ESTとは、細胞内で発現しているmRNAに由来するcDNAの部分配列です。
光遺伝学の発展は、クラミドモナスがもつチャネルロドプシン(光に応答するイオンチャネル)の遺伝子が見つかったことで、大きく前進しました。この発見に寄与したのが、かずさDNA研究所のメンバーを中心とする研究チームが作製した、クラミドモナスESTデータベースでした。https://www.kazusa.or.jp/e/plant/chlamy/EST/
チャネルロドプシン遺伝子の発見については、2002年にNagelさんらがScience誌に発表した論文に詳しく書かれています。その中で、このESTデータベースを利用して遺伝子を見つけたことが記載されています。
データベースは、作製して公開した後、どなたが、どんな目的で利用されるのかを知ることはできません。だからこそ、今回のような大きな発見につながり、さらにその中でデータベースについてもきちんと記載していただいたことを、とてもありがたく感じています。
そのおかげもあり、ノーベル財団が公表している「受賞理由」の中でも、浅水らの論文が引用されていました。https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2026/advanced-information/
The definitive proof that algal rhodopsins functioned directly as ion channels required the identification of responsible genes, a breakthrough accelerated by the availability of the Chlamydomonas expressed sequence tag database (Asamizu et al., 2000).
今回の受賞をきっかけに、当時の実験ノートを掘り出してみました。見返していると、いろいろなことが懐かしく思い出されます。クラミドモナスのDNAはGC含量が高く、cDNA合成にも工夫が必要だったこと、国内のクラミドモナス研究者の皆さんに協力していただき、異なる条件で処理した細胞を40種類以上集めたこと、そうして集めた材料から、一つ一つデータを積み上げていったことなどです。
当時は、まさかこのデータベースが、後に光遺伝学という大きな研究分野の発展につながるとは思ってもいませんでした。今回、私たちのような「縁の下の力持ち」的な仕事にも目を留めていただき、きちんと記載していただいたことに、改めて感謝したいと思います。そして、この基礎的な発見をさらに発展させ、神経科学の分野へと大きく展開されたKarl Deisserothさん、Peter Hegemannさん、Georg Nagelさんに、心より敬意を表します。
浅水