外部講師(植物-微生物相互作用学)と第12回生命科学セミナー

 「植物-微生物相互作用学」の外部講師として、玉木秀幸さん(産業技術総合研究所)をお招きしました。

授業の様子1

 この授業では、植物とその周りの微生物との関係(相互作用)のメカニズムを分子レベルで理解することが主題となっています。植物の周りには良い微生物も居ますが悪い微生物もいて、普段の授業ではおもに植物に病気を引き起こす病原微生物を中心に話題提供しています。しかし、そもそも植物の周りには数多の「何をしているかよくわからない」微生物が存在しています。この「良い」、「悪い」というのも、あくまで人間にとって農作物に良い影響を及ぼすか、悪い影響を及ぼすかを基準にしたもので、何をしているかよくわからない微生物たちも、彼らの人(微生物?)生を、いきものとして過ごしているわけです。

 玉木さんは植物に限らず、そういった環境中に存在している多数の無名の微生物たちを見つけ出し、その生きざまを調べ、我々人類の生活に役立たせるところまで幅広く研究されている方で、植物中心の普段の授業とは異なる切り口で、そのほとんどは人間にとっては未知とも言える「微生物ワールド」の一端をご紹介いただきました。

 分類学的な観点から見た微生物グループの多様性の紹介から始まり、培養という手段の重要性やその手法に頼るからこその限界、そしてその限界を広げるための研究の数々を、わかりやすい例示などとともに紹介いただきました。その上で、玉木さんらが見つけてこられた微生物を、ヒトや植物そのものの健康や成長、さらにはヒトの生活を支える社会インフラにどのように有効利用しようとされているかをご紹介いただき、最後には、生物の進化の歴史に関する定説を根本から覆すような新たな微生物の発見に関してもご紹介いただき、受講生一同、そのスケールの大きさに圧倒されて聞き入っていました。

授業の様子2

学生の感想(抜粋)

「今回の話を聞いて、微生物の可能性はまだまだ広がるのだなと感じた。人の近くで生きている腸内細菌や農作物の微生物に目が行きがちだけど環境全体を見たり探すことで、新たな発見が生まれるのかなと思った。微生物についてもっと研究が進むことで私たちの生活が変わっていくと面白いなと思った。」

「未だ多くの微生物が培養されていないことに、これからの技術発展だけでなく、生命の起源の研究の新たな発見が多くありそうで、非常に現実的なロマンがあるなと、興味深かったです。また、有用な植物形質をもたらす微生物叢の開拓にも興味を持ちました。毒を以て毒を制すではないですが、非常に似てるなと感じ、興味深かったです。」


    また、せっかくつくばから来ていたいたので、第12回生命科学セミナー「未知の微生物を”培養”して新たな生命機能を探る~Cultivation Renaissance in the post-metagenomics era: combining the new and old~」と題して、農学部教員や院生ら向けにも話題提供していただきました。授業とほぼ同じスライドながらも、こちらは研究のプロ向けに、サイエンスとしての面白さを凝縮した話題提供をしていただき、質疑も盛り上がりました。

生命科学セミナーの様子

    さらに、セミナー終了後には、今回お呼びした別役研に来ていただいて、研究室の院生8名と学部生1名からの研究紹介をそれぞれ聞いていただいて、その内容に対してたくさんの有意義なコメントもいただきました。


玉木さん、講演x2と長時間にわたる学生との研究談義、本当にどうもありがとうございました!

(別役)




キャリア講演会 卒業生

生命科学科では、3年生を対象とした授業の一環でキャリア講演会を開催しています。

4週にわたって、企業の方、卒業生、大学院生など、さまざまな立場の方にお越しいただき、これからの進路について考えるヒントをお話しいただきます。

 

第2週目は、植物生命科学科の卒業生のお二人にご講演いただきました。


1人目の演者は伏見銘酒協同組合の江川真基さん(竹中研卒業生)です。



江川さんがお勤めの伏見銘酒協同組合は伏見の複数の蔵元(組合員)によって運営されており,各蔵元の求めに応じた日本酒の醸造を行っている会社です。


2人目の演者はイビデングリーンテック株式会社の渡中新太郎さん(塩尻研卒業生)です。


渡中さんがお勤めのイビデングリーンテック株式会社は法面(のりめん)事業,造園事業,建設事業の会社で,渡中さんは法面事業で活躍されています。


江川さん,渡中さんからお勤めの会社の紹介があった後,自分が学生の時にどのように就職活動に取り組んできたのか,なぜ今の就職先を選んだのか,などを実体験をもとにお話しいただきました。


受講した学生さんからの感想を一部紹介します。

『インターンの準備として、「業界の流行を知る」「会社を知る」「疑問を持つ」という3つのアドバイスは、とても参考になりました。』

『企業について調べることとして、企業にメールを送ったり企業理念について調べたりすることといった会社のことを調べるほかに、福利厚生や給料など、自分のためのことも調べることが大切だとわかった。』

『企業に疑問を持つことが大切であるということを聞いて、自分は今まで世の中の事に疑問を抱いたことが無かったので、視野を広くしてどんな些細なことでも疑問を持てるようにしようと思いました。』

『現実的な内容で参考になった。就活の具体的なイメージをつかめた気がする。』

『インターンの本当の活用の仕方が理解できました。ホームページなどから企業のことがわかると聞いていましたが、実際にはどういった要点を確認すれば良いかわからず取り組んでいなかったので、参考にしたです。』

『大学で自分のしたいことをすることが、自分の価値観や短所・長所を見つけることに繋がると、知ることができました。』

先輩方の生の声を聴くことで,これからの進路・就職活動について具体的にどのようなことに取り組んでいくべきか,はっきりと意識できたようです。

江川さん,渡中さんお忙しいところ本当にありがとうございました。


(竹中)

木瓜葛根杏仁茶

 海外農業体験実習(ハワイ)では、毎年事前学習の中で日本にいながら色々と調査したことを現地のハワイのUSDA研究所で英語で発表する機会を設けています。

昨年は、「パパイヤの利用の日本と中国・アメリカの比較」という内容の発表をしました。試行錯誤しながらこのテーマに落ち着いたのは、中国からの留学生が参加者に1人いたことが大きいです。その発表の中で、中国では漢方薬「木瓜葛根杏仁茶」として利用されることが紹介されました。お湯を加えて煎じて飲むというスタイルのようですが、真空パックされたものも販売されているとのこと。

最近、この学生が、中国に帰国したおりに、この漢方薬「木瓜葛根杏仁茶」を購入し、本日お土産としてくれました。ありがたいことです。


今年、ハワイに行ったおりに、関係者でいただければと思います。

こうした気遣いが大変嬉しいです。ハワイの関係者もきっと喜ぶと思います。

(古本)

キャリア講演会 タキイ種苗

生命科学科では、3年生を対象とした授業の一環でキャリア講演会を開催しています。

4週にわたって、企業の方、卒業生、大学院生など、さまざまな立場の方にお越しいただき、これからの進路について考えるヒントをお話しいただきます。

 

1週目は、タキイ種苗より研究農場次長の新倉聡様にご講演いただきました。



新倉さんは、ダイコンをはじめとする多くの作物の育種に長年携わってこられた、日本を代表するブリーダーのお一人です。

現在、京都文化博物館で開催されている「和食展」では、新倉さんが監修された、日本各地で栽培されている多様なダイコンの模型が展示されています。

(先週行ってきました!)

育種学会に所属されている先生の中には、新倉さんと旧知の間柄という方もいらっしゃり、お話が盛り上がっていました。
私ごとで恐縮ですが、学生時代に初めて取り組んだ研究テーマが「ダイコンの雄性不稔(=花粉ができなくなる変異)」でした。

不稔という一見不利に思える性質が、実は育種にとって重要な役割を果たすことや、そのメカニズムが細胞質と核の相互作用によって起こることに強く興味を抱き、今の仕事に繋がっています。

今回はご縁があり、一緒にお仕事をさせていただく機会にも恵まれたことから、講演をお願いした次第です。

 

当日は、タキイ種苗の人事ご担当者お二人にもお越しいただき、講演の冒頭で会社全体に関するご紹介をしていただきました。


講演の前半では、国内外における種子市場の規模や、業界内での企業の役割分担(棲み分け)についてのお話がありました。

大学にいるとなかなか意識しづらい視点で、企業の方からしか伺えない貴重なお話でした。

 

後半では、実際の育種について詳しくご紹介いただきました。
「いい品種をつくること」が育種の目的としてよく知られていますが、それだけではなく、「種が採りやすい(=採種性)」ことも、品種が採用されるかどうかを大きく左右する重要な要素であるというお話は、学生たちにとっても新たな視点だったと思います。

また、親系統の選抜における統計解析の重要性や、画像解析による開花パターンの類推など、最新の技術が育種の中でどう生かされているのかも紹介され、研究とのつながりを感じられる内容でした。
ちなみに「百万遍交差点の牛丼チェーン店問題」は、とてもわかりやすく、学生&教員も盛り上がっていました! 

講演の最後は、「育種に必要なものは経験、勘、根気+科学、経済性、感性」という核心を突いたわかりやすい言葉でまとめていただき、学生たちにとっても印象深い言葉だったようです。


また、龍谷大学からタキイ種苗に入社された卒業生からのメッセージもご紹介いただきました。
私自身も知っている顔ぶれが何人も登場し、現場で頑張っている様子を聞くことができてとても嬉しかったです。


授業の最後には、採用サイトへの案内もあり、講演後には人事の方に熱心に質問する学生の姿も多く見られました。


新倉様、長谷川様、古賀様、このたびは本当にありがとうございました!

 

                                    (辻村)


夢ナビ講義動画

 「遺伝子組換え技術で野菜の栄養価を高める」というタイトルで、大学で究める学問発見サイト「夢ナビ」の講義動画が公開されました。内容は、三柴が開発に携わったβ-カロテンを果実に蓄積させた遺伝子組換えナスの紹介や、アグロバクテリウムを利用した植物への遺伝子導入手法についての高校生向けの解説となっています。10月4日(土)に行われる「夢ナビライブ 2025」では研究室や研究内容の紹介をする予定です。

【講義動画のリンク】
【夢ナビ講義】
【夢ナビライブ】
植物育種学研究室 三柴