園芸学会の近畿支部大会に参加しました.

  828日に大阪公立大学中百舌鳥キャンパスで令和7年度の園芸学会近畿支部大阪大会が開催されました.龍谷大学からは果樹園芸学研究室から1名,野菜園芸学研究室から2名が発表を行いました.

 野菜園芸学研究室の発表者は4年生で,それぞれ「四倍体トマト作出のための処理条件の検討」と「キヌサヤとスナップエンドウの果実発達過程の比較」という内容で発表しました.二人とも初めての学会でしたが,堂々と発表していたと思います.たくさん質問を受けていたようなので,頂いた質問やコメントをぜひ,今後の卒論で活かして欲しいです.


発表会場が中百舌鳥だったので,担当教員は学会前に世界最大級のお墓を見に行きました.地元の学生から上から見ないとただの森ですよと言われましたが,何とはなしに厳かな雰囲気を感じることはできました.

野菜園芸学研究室 滝澤

第17回生命科学セミナー

820日に福井県立大学の村井耕二教授をお招きし、第17回生命科学セミナー「コムギにおける日長感応性細胞質雄性不稔 ~雄ずいの雌ずい化~」を開催しました。


村井先生は、コムギにおける細胞質雄性不稔研究の第一人者です。

近縁種 Aegilops crassa の細胞質を連続戻し交配によってパンコムギに導入した細胞質置換系統を用い、花の形態変化(ホメオティック変異)によって生じる雄性不稔を体系的に研究されています。

このAe. crassa細胞質を持つパンコムギでは、日長条件によって雄ずい(おしべ)が雌ずい(めしべ)に変化する「Pistilody」と呼ばれる現象が見られます。


コムギの正常な花は、スライドの左上に示された写真のように白くフワフワした雌ずいが1本、その周囲に黄色い雄ずいが3本あります。

右下の写真に進むにつれて、雄ずいが雌ずいに変化していく様子が観察されます。


本セミナーでは、村井先生がこれまでに成し遂げられた成果のうち、3つをお話しいただきました。


1.花成に関わる遺伝子の同定

コムギの花成に関わるABCモデル遺伝子を複数同定されました。

その発現領域を解析することで、Pistilodyの直接的な原因が、雄ずい原基で働くクラスBMADS-box遺伝子の発現消失と、それに代わるYABBY遺伝子の発現であることを明らかにされました。

 

2.Pistilody抑制遺伝子の発見

Pistilodyの原因は細胞質にありますが、それを回復させる遺伝子は核ゲノムに存在します。

染色体部分欠失集団との交配実験を行い、回復遺伝子 Rfd1 がコムギ品種「Chinese Spring」の7番染色体長腕にあることを突き止められました。

さらに、核ゲノムを「農林26号」にすると、15時間以上の長日条件ではPistilodyが生じ、15時間以下では正常に戻るという「日長感応性細胞質雄性不稔(PCMS)」を発見されました。

 

3.ハイブリッドコムギ品種の育成

Pistilodyを起こすコムギを利用し、「二系法」による育種法を確立されました。

これにより、日本で初めてのハイブリッドコムギ品種の育成に成功されています。

北海道では長日条件のためPCMS系統は不稔になりますが、この性質を利用し、花粉親と並べて栽培することで交雑種子(ハイブリッド品種)を得ることが可能です。

ハイブリッド品種は病害抵抗性や収量性が高まりやすいという大きな利点があります。

このハイブリッド品種を短日条件の本州で育てればPCMSは生じず、種子=可食部を得ることができ、雑種のメリットも享受できます。

 

学会やセミナーで村井先生のお話を伺う機会はこれまでもありましたが、今回は研究の一部にとどまらず、長年にわたるご研究の流れを学ぶことができ、大変理解が深まりました。

セミナー後には竹中研究室の大学院生とも交流してくださり、貴重な機会となりました。

 

村井先生、誠にありがとうございました!


                               (辻村)

論文が公開されました

202589日付でPhysiologia Plantarum誌に投稿していた論文が公開されました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ppl.70446


テーマは「花粉ができないナス」に関するものです。

このナスは、細胞質雄性不稔(Cytoplasmic Male SterilityCMS)と呼ばれる現象によって花粉が作られません。
自ら種を作れないため、一見すると植物にとって不利に思えますが、実は他の個体と効率的に交配できるため、より強い雑種を作ることができます。

この特性は、種子生産の現場で広く利用されています。

本研究で扱ったナスでは、CMSの原因として、ミトコンドリアに存在する orf218 という遺伝子が疑われていました。

そこで私たちは、この遺伝子をゲノム編集技術で壊してみたところ、花粉が再び作られるようになったのです。

つまり、「この遺伝子が原因だった!」と初めて直接証明できた、というわけです。

シンプルな内容ですが、CMS研究にとって重要な一歩となりました。

ここまで辿り着くのに、何度泣いたことか。行き詰まりもたくさんありましたが、こうして一つの成果として形にでき、本当に嬉しいです。

論文には、研究に直接関わってくださった方々への感謝を記す「謝辞」の欄がありますが、そこに書ききれない多くの方々に助けて頂きました。

同じ実習を担当する同僚の皆さま、励ましやアイデアをくださった先生方、そして何より家族の支えのおかげで今回論文として発表することができました。

心より感謝申し上げます。


                                    (辻村)


広島大学 向島臨海実験所にてのゼミ合宿(二日目)ウニの採取から発生の観察


二日目は無人島に船で渡り、海産生物を採取します。特に狙いはウニです。この時期、ウニのメスは卵を、オスは精子を持ち、高校生物の教科書に出てくる「ウニの発生」を観察できます。自分たちで採取したウニで、発生を確認するというのが今回のハイライトです。
30人乗りの安定した船に乗り込み、実習所をでて、無人島に向かいます。

途中、しまなみ街道因島大橋の下をくぐります。

四十島という名の無人島に上陸し、早速ウニのポイントに向かいます。


採れたムラサキウニ
顕微鏡で観察します。

これが未受精卵

精子がやってきて受精し、重複受精を避けるため、卵の周りにゼリー状の膜ができます。

発生は1時間後に分裂するところから始まり、翌朝には、プルテウス幼生になり、すでに泳ぎ始めています。ウニは私たちと同じく、肛門が生じて最後に口ができるタイプの生物ですが、この時点で口ができます。泳ぎ回り餌を探しているとか。




高校の理科の教員になりたいものはもちろん、この実習でウニの発生を確認できて大喜びでした。前夜のウミホタルの発光も美しく、あまりの美しさに声ができました。こうした直接体験が、私たちの刺激になることがよくわかりました。
貴重な体験をさせていただきました。受講した学生のそれぞれに大きな学びがあったと思います。広島大学の向島臨海実験所の皆様には、心より感謝いたします。
(古本)













広島大学向島臨海実験所にてゼミ合宿

 テスト期間ですが、もう単位を取り切った学生たちとゼミ合宿に広島大学の臨海実験所に来ました。

海の生物はなかなか触れられないので、学ぶチャンスです。

初日の今日は、夜からの活動で、ウミホタルの観察でした。

写真ではうまく撮れなかったのが残念ですが、波打ち際でもすでに青白く光様子が観察できました。

トラップを仕掛けて30分ほど待ち、引き上げると瓶の中にうじゃうじゃいました。これでも例年よりも随分少ないとか。これまたうまく撮影できませんでしたが、ピンセットでつまんで刺激を与えるとピンセットの先で綺麗に光っていました。

学生たちの「おー」という声に、連れてきてよかったと思いました。

明日は、無人島に出かけます。

集めたウミホタル。乾燥させても光るということです。



簡単なトラップ。餌はカマボコ。魚のすり身ですね。

瀬戸内の波は穏やかで、いつもの慌ただしい毎日から少し解放された気分です。
(古本)