湖南市のウツクシマツは根本から何本か分岐する樹形が面白く、東海道石部宿の名物として、東海道五十三次に描かれたりしている「天然記念物」です。江戸の頃から地域の人たちによって管理維持されてきましたが、近年の松枯れ病によりその本数を大きく減らしました。
湖南市ではこれに対応するべく、対策委員会を立ち上げ、(1)松がれを防止すること、(2)新しく芽生えを促し次世代を育てること、(3)観光などに活用すること、を目指してきました。私がこの委員会に参加したのは(1)の対策案が出揃い、初期の対策の目処が立ちつつある頃でした。
(2)の新しい芽生えを促すには、地表の栄養分を剥ぎ取り、土壌を貧栄養状態にすることが解決策の一つです。マツは少し変わった植物で、栄養が豊富な土壌では発芽しません。確かに自然環境ではガレ場などの貧栄養なところに生えていますし、これまでの栽培試験でも表土の栄養のある層を剥げばいいことが確認できていました。
ここ3年くらい、「樹木医会」の指導のもとで「近江の松を守る会」の方や、京都翔英高校の学生さんたちの地道な表土を剥ぎ取る活動で、期待通りに剥ぎ取られたところに新しく芽生えが出始めました。
私の研究室の学生で、昨年この活動を手伝ってくれた者が、この芽生えを動画撮影し、湖南市の広報活動に利用できないかという提案をしてくれました。幸い、龍谷大学の自主的な学生の活動を応援するプログラム「龍谷チャレンジ」に採択され、活動費を手に入れたので、撮影機材の購入にあてました。
本日はその表土を剥ぎ取る活動日でした。
京都翔英高校の10名ほどの学生と松を守る会の方達と、2時間弱ほど表土を剥ぎ取りました。その後、一番若い芽生えを探し出し、動画撮影をセットしてみました。
表土を剥ぎ取る作業は単調で、肉体労働です。作業途中のおじさんたちとの会話が弾みます。今年の高温でイネの収量が下がりそうだとか、新しい品種を試したとか、栄養が多いいと徒長するとか、普段から植物の様子を観察している人だなというのがよくわかります。高温での徒長という現象を中心に温度の感知を研究しているのですよと、意外にも私の研究内容を話したりしました。
研究室で実験するだけでも実験は進むのですが、どうにも外に出てみたい、外の人と触れ合う中で気がついたことを共有したい、そう思います。そういう性分なのでしょうか。こうした時間があることが今の私には大切です。
簡単にうまくいくかどうかわかりませんが、動画が撮れれば、広報材料として湖南市に提供したいと思います。
作業に関わったみなさま、お疲れ様でした。手伝ってくださった京都翔英高校のみなさま、ありがとうございました。
(古本)