今年も柿を吊るします

2018年11月9日、あいにくの雨模様のなか、食料農業システム学科2回生全員が受講している基礎演習Iのうち淡路クラスと山口クラスで、恒例の干し柿づくりの作業を行いました。

食料農業システム学科では、実習農場がある牧地区伝統の干し柿づくりの技術を学び、開設年度以降これまで毎年干し柿を作っています(2016年度の柿作業1柿作業2試食、2017年度の柿作業試食)。

今年は例年「システム学科の柿」として使わせていただいている実習農場脇の柿の木が、台風21号で根元から折れてしまいました(記事1記事2)。どうしたものかと思っていたところ、地域交流活動でお世話になっている近江今津の深清水地区から渋柿を差し入れていただきました。

立派な渋柿。「どさん」と呼ばれるそうです。

深清水地区は百瀬川の扇状地に広がる柿畑で有名なところで、京都・大阪方面からも消費者が直接農家のところに柿を求めて訪れます。例年使わせていただいている牧の堤防の柿も野趣があっていいものでしたが、こちらはやはりプロ農家の柿、大きさも形も見事なものでした。

柿を取るところからが牧地区の文化ではあるのですが、こうやって干し柿づくりを通して別の地域とも連携でき、システム学科の干し柿づくりがいろんな人と人をつなぐ役割を果たし始めているのを感じた次第です。

淡路先生の講義:牧地区の文化と干し柿づくりの経緯について

柿を引っ掛ける輪っかの作り方を伝授

柿剥き隊のみなさん

雨のため、室内に吊るしました



牧の技と深清水の柿、どんな干し柿が出来上がるか楽しみです。(淡路、山口)

写真の意義と技術について学びました

2018年10月17日、大正大学表現学部客員教授の森枝卓士先生を特別講師にお招きし、坂梨ゼミと落合ゼミの3回生が写真撮影について演習をおこないました。食文化研究者でフォトジャーナリストの森枝先生は、食文化に関する多くの著作があります。ゼミ生はあらかじめそれを読んで予習し、演習当日をむかえました。


森枝先生のプロフィールやこれまでの活動の紹介から始まり、ゼミ生が持ち寄ったベストショットの鑑賞や批評をしたり、一眼レフカメラを使った撮影方法を学んだり。



       
この写真のポイントは?どうやって撮したらいいだろう?

        
「かめはめ波」写真の撮影にも成功!

スマホをいかに使いこなして撮影するか、スマホとカメラの違いはどこにあるのか、
どのように狙いを持って撮影するかなど、ゼミ生の食や農に関するフィールドワークにすぐに役立つ実践的な技と心得を教えていただきました。(落合)


醤油づくりについてフィールドワークしました

2018年10 月20日、食料農業システム学科落合ゼミの4回生4名が、和歌山県御坊市の堀河屋野村さんを訪問し、選択参加型フィールドワークをおこないました。

堀河屋野村では、伝統的な製法で醤油や味噌を作り、全国に出荷しています。ゼミ生は、十八代目当主野村圭佑さんにご案内をいただき、蔵で製造のプロセスを見学したり、会社の歴史やとりくみについて聞き取りをしたりしました。



さらに、御坊の街の成り立ちについて知るために、古い商家や中川邸、日高別院、道成寺などにも足を運びました。



醤油は日常生活にあたりまえにあるものですが、その製造の現場で学んでみると、素材の選択や製法の継承のあり方、地域とのつながりなど、今まで見過ごしていた事実がたくさん出てきました。日本の食文化に欠かせない醤油について、じっくりと理解を深めた一日でした。

ご協力をいただきました堀河屋野村さんに心から御礼申し上げます。(落合)



愛東の大秋穫祭に行ってきました

10月21日、東近江市の道の駅「あいとうマーガレットステーション」で開催された「大秋穫祭」で淡路ゼミを中心とする学生有志が出店しました。
北海道研修から戻ったばかりの4年生も2名参加してくれました。
当日は快晴で汗ばむほどの陽気となり、多くの人が訪れました。
焼きおにぎりと梅ジュースを販売しましたが、気温が高かったせいか焼きおにぎりよりもジュースの方が売れ行きは好調でした。
学生たちは、自分たちの店の切り盛りだけではなく、他の店への応援やステージプログラムの手伝いに出向いて大忙しでした。(淡路)

焼きおにぎり、梅ジュースは手作りです。

冷凍したおにぎりを焼いています。
握手会? ビンゴカードの配布です。

お疲れさまでした。スタッフ全員で記念撮影。





パンコムギの冠水ストレス応答に影響を与えるコムギ・エギロプス属 細胞質の遺伝的多様性


植物生命科学科の竹中祥太朗助手、山本涼平助手と中村千春特任教授の研究グループは、特定の核ゲノムと種々の細胞質ゲノムを組み合わせた核細胞質雑種系統を用いて、環境ストレスのひとつとして注目を集める冠水ストレスがパンコムギの種子発芽と幼苗生育に与える影響を調査し、この重要な環境適応形質に見られる核ゲノムと細胞質ゲノムの遺伝的多様性を明らかにしました。さらに耐性系統と感受性系統の比較から、冠水ストレスによる生育阻害が活性酸素除去機構の主要酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の顕著な活性上昇を伴うことを見出し、冠水ストレスに晒されたパンコムギの幼苗は強い酸化ストレスの影響下にある可能性を示唆しました。これは、近縁野生種の細胞質ゲノムがパンコムギの冠水ストレス応答に与える影響を初めて実証した研究成果です。

以上の研究成果は、1023日付(日本時間)で受理され、112日に国際学術誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。

研究のポイント
・試験管検定法による形質評価に基づき、パンコムギの冠水ストレス応答に近縁エギロプス属由来の異種細胞質ゲノムが関与することを明らかにした。
・形質値の変動係数で評価した細胞質置換に起因すると見られる多様性は核ゲノム関与のそれのほぼ6割にも及ぶことを明らかにした。
・冠水ストレスによる生育阻害が顕著な感受性系統の幼苗では活性酸素の主要な除去酵素であるSODの大幅な活性上昇が認められ、幼苗の生育阻害は冠水ストレスによる酸化還元バランスの乱れに起因することが示唆された。
・パンコムギの冠水ストレス耐性の向上に近縁エギロプス属の異種細胞質ゲノムが寄与する可能性が示された。

研究の背景
世界の3大穀物の一つであるコムギは、近縁のエギロプス属(ヤギムギ属)野生種との自然交雑、染色体倍化とゲノム統合を経て進化した異質倍数性を特徴とする植物種であるとともに、核ゲノムと細胞質ゲノムの系譜と両者の共進化が明らかにされた植物種でもある。コムギでは、細胞質ゲノムに特徴的な母性遺伝様式(図1)を利用した連続戻し交配により育成された近縁野生種のもつ細胞質でコムギの細胞質を置換した核細胞質雑種系統(図2)が細胞質ゲノムの遺伝的多様性とともに核細胞質ゲノム間の相互作用を解析するための貴重な遺伝資源として活用されてきた。特にパンコムギでは、46系統の異種細胞質と12系統の核を組み合せた552系統もの核細胞質雑種が育成され、細胞質ゲノムの多様性とともに細胞ゲノムがパンコムギの種々の形質に与える効果を解析するための有力な遺伝実験材料として利用されてきた。




独自のゲノムをもつ細胞質オルガネラ(葉緑体とミトコンドリア)は、光合成と呼吸という植物細胞の基幹的エネルギー代謝に加えてアミノ酸や脂質代謝等を担う重要な機能発現の場である。細胞質オルガネラは、進化上の相互依存関係を反映して、植物細胞内で核ゲノムとの情報交換を通じた共同により、種々の代謝経路が関与する細胞全体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。特に近年、酵母、マウスや植物でも、ストレス下でミトコンドリアが発するシグナル分子が核遺伝子の転写を制御するレトログレード制御(図2)の一端が明らかになりつつある。

近年、気候変動と地球温暖化による環境変化が農業生産に深刻な影響を及ぼしている。半乾燥地帯で生まれ適応進化したコムギは過剰な水分によるストレスに感受性で、洪水に伴う冠水や湛水などによるコムギの減収は世界で年間15-20%にも達し、特に米麦の輪作が盛んなアジア地域で著しい被害が報告されている。そこで我々はパンコムギの冠水ストレス応答に着目し、農業上重要なこの環境適応形質に与える細胞ゲノムの効果と役割を明らかにし、核ゲノムの効果と比較する目的で、一連の核細胞質雑種系統をパンコムギ系統とともに供試し研究を開始した。

研究の内容
パンコムギと近縁野生種エギロプス属の持つ細胞質ゲノムを標準パンコムギ品種チャイニーズ・スプリング(CS)の核ゲノムと組み合わせた37系統の核細胞質雑種を用いて、種子発芽と幼苗成長に与える冠水ストレスの効果を、イネで開発した試験管検定法を用いて調査した。種々のパイロット実験の後に、発芽の阻害が認められない一方で幼苗の生育を阻害する実験条件を設定し、この条件下で生物検定を実施して、冠水ストレス応答に与える細胞質ゲノムの効果を調査した。同時に、核親を含む12のパンコムギ系統群を用いて、細胞質ゲノムの効果を核ゲノムの効果と比較した。

試験管を用いたストレス処理あるいは無処理の条件下で吸水・育苗したパンコムギ幼苗の子葉(あるいは第1葉)の長さを3つの変数として測定し(図3)、これらをもとに導いた6つの変数を加えた合計9変数で幼苗生育を評価した。

生物検定の結果(図4;ここでは2変数のみの解析結果を示す)、異種細胞質ゲノムに大きな遺伝的多様性が認められ、さらに、特にAegilops muticaT2型細胞質を含む複数の細胞質で置換した核細胞質雑種系統では冠水ストレスによる生育阻害が有意に減少することを明らかにし、これらの細胞質がパンコムギの冠水ストレス耐性の向上に寄与する可能性を示唆した。一方、特にUおよびU’細胞質をもつ核細胞質雑種系統では冠水ストレスに対する感受性が他細胞質を持つ系統に比べてより高まった。



冠水ストレス応答で見られた細胞質ゲノムと核ゲノムの多様性を夫々の集団の平均形質値から求めた変動係数に基づき比較したところ、前者は後者の60%にも及ぶことが示され、細胞質ゲノムの多様性が核ゲノムのそれと比べて予想以上に大きいことが判明した。

続いて、冠水ストレスと活性酸素の関係を調査するために、活性酸素の主要な除去酵素であるSODの活性を耐性レベルの異なる系統間で比較したところ、感受性系統のC26U型細胞質)で核親CS(B)と耐性系統のC13(T)C14T2)と比べて顕著な活性上昇が認められた(図5)。この結果から、冠水ストレスによる生育阻害は高レベルの活性酸素種の蓄積に起因することが示唆された。


以上、本研究の結果は、コムギの冠水ストレス応答に与える異種細胞質ゲノムの効果を実証した先駆的な研究成果である。同時に、本研究は核細胞質雑種系統が農業上重要な環境適応形質の一つである冠水ストレス応答の制御に関わる核細胞質ゲノム間相互作用の分子メカニズムの解明を目指す更なる研究のための有用な実験材料となりうる可能性を指摘した点で重要である。

今後の展開
・コムギの冠水ストレス応答に見られる核ゲノムと細胞質ゲノムの多様性と両ゲノム間の相互作用を制御する分子機構を明らかにする。
・冠水ストレス応答を含む環境適応形質に与える核細胞質ヘテロシスの農業利用の可能性を探る。

用語解説
・エギロプス属(ヤギムギ属):コムギの近縁属で、23の野生種と多くの亜種から構成される。マカロニコムギやパンコムギなどの栽培種は、これら近縁野生種との自然交配と人為的選抜によって約1万年から9千年前に成立した。

・核細胞質雑種:近縁野生種を母親にコムギを父親にして得た雑種第1代に父親コムギの花粉を何世代も連続的に戻し交配することで作成した雑種。パンコムギでは、エギロプス属など近縁野生種の細胞質ゲノムを網羅して育成された552系統もの各細胞質雑種が作成され、貴重な実験系統として利用されてきた。

・核細胞質ヘテロシス:核ゲノムと細胞質ゲノムの相互作用に基づく雑種強勢。一般に、雑種が両親より優れていることを云うが、核ゲノムに基づく雑種強勢とは異なり、遺伝的な固定が可能である。

・活性酸素:酸素分子がより反応性の高い化合物(スパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素)に変化したもので、細胞内のミトコンドリアや葉緑体を含む様々な器官で発生する。反応性の高い活性酸素は生体にとって有用であるとともに有害であることが知られている。

酸化還元バランス:生体のおける酸化還元状態の平衡を云う。好気性生物は酸素を使って酸化還元反応(レドックス反応)を制御しつつエネルギーを生産しているが、この制御が効かないと過剰に生じた活性酸素により細胞が酸化ストレスに晒される

SOD(スパーオキシドディスムターゼ):細胞内で発生した活性酸素を除去する主要な酵素のひとつ。植物では、様々なストレスが引き金となって活性酸素が発生し蓄積するミトコンドリアや葉緑体などに存在する。

謝辞
本研究は、龍谷大学「食と農の総合研究所」研究プロジェクトから部分的な援助を受けて実施された。ここに感謝を表する。

論文情報
・タイトル
 “Genetic diversity of submergence stress response in cytoplasms of
the Triticum-Aegilops complex”

・著者
 Shotaro Takenaka, Ryohei Yamamoto and Chiharu Nakamura*
 (* corresponding author

・掲載誌
 Scientific Reportsonline

関連リンク
https://www.agr.ryukoku.ac.jp/teacher/nakamura.html