植物生命科学実習(7/26,27)

7月26、27日の3回生の植物生命科学実習(担当:小野木先生)は、「プログラミング言語Rを用いた実験データの解析」でした。普段の実験室ではなく、情報処理室での実習です。

Rとは、統計解析を得意とするプログラミング言語です。データ分析に用いられ、とくに生物学で人気があります。今回はRStudioというソフトウェアからRを使用し、データサイエンスの理解と知識を深めました。 



講義を受けながら、実際に各自でスクリプトを書きます。今回は、データを可視化するためのヒストグラムや箱ひげ図などのグラフの描画、t検定、分散分析、回帰分析などの統計解析の練習をしました。



実習のまとめとして与えられた、条件式を作るレポート課題に皆、苦戦しました。




今回で前期の植物生命科学実習がすべて終わりました。3回生の皆さん、研究室に配属されてからも、これまで実習で学んだ知識や技術を活かして卒業研究を頑張ってください。

 

追記:

6月に行った「アブラナ科蔬菜につく昆虫の調査」(塩尻先生担当)の実習で植えたダイコンとコマツナを、鉢に植え替えて助手室で育てました。

Before

 

After

 

およそひと月で食べられる大きさにまで成長しました!

(中田)

【植物生命科学科で扱う実験生物】No.10 琵琶湖の植物プランクトン

 植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。


農学部(瀬田キャンパス)のある滋賀県には、世界第3位の古い歴史をもつ琵琶湖があります。私は、この琵琶湖に住む微生物をテーマに研究をしています。今回は、植物プランクトンを紹介したいと思います。

比叡山から撮影した琵琶湖の風景。遠くに薄く小さく写る島は日本の淡水湖唯一の有人島 沖島です。琵琶湖の全体像はおさめられませんでした。

琵琶湖には、数百種類の植物プランクトンが出現することが知られています。優占種は、季節によってダイナミックに変化します。

これは孔径約20μmのプランクトンネットで引いた201910月の琵琶湖北湖の表水層サンプルの顕微鏡画像です。様々な種類の植物プランクトンが見られます。この日は緑藻(Staurastrum dorsidentiferum)が中心です。

これから、夏~秋にかけて話題になる種と言えば、ミクロキスティス(Microcystis spp.)。上図は琵琶湖でみられたミクロキスティスの群体です。アオコを形成し、水道の悪臭の原因になるなど、琵琶湖の富栄養化の象徴にもされている種の1つです。ミクロキスティスは藍藻類という、原核タイプの植物プランクトンの一種です。悪いイメージもある藍藻類ですが、琵琶湖にも近縁種がいるSynechococcus elongatus(PCC 7942株)は、世界の生物時計研究のモデル生物になっています。私は、ミクロキスティスなど野外にいる藍藻類の概日リズムに興味を持っています。

(吉山洋子)

ブナにおける匂いを介した植物間コミュニケーションの有効距離 (植物生命・塩尻研・大学院卒業生との研究成果が論文として公表されました)

 

匂いを介した植物間コミュニケーションの研究の多くが、草本かつ室内・温室などの非自然環境下で行われています。そのため、実際の野外における匂い有効距離というのは、明らかになっていませんでした。そこで、私達は、樹木(ブナ)を対象に自然環境下での匂いコミュニケーションを明らかにし、さらに匂いの有効距離も明らかにしました。

(写真)匂いを放出させるため、ブナの葉をカットしている様子

                          (図)匂い放出個体からの距離別の葉の被害度度 

        縦軸が被害度、横軸の数字が匂い個体からの距離を示す。

  コントロールにくらべて、距離が近いほど被害が少なくなっていることがわかる。


本研究は、龍谷大学大学院修士課程一期生(現在、京都大学大学院博士課程)の研究でEcology and Evolution に20218月に掲載されました。

(塩尻)

 Effective distance of volatile cues for plant–plant communication in beech

Tomika Hagiwara1,2, Masae Iwamoto Ishihara3, Junji Takabayashi4, Tsutom Hiura5, Kaori Shiojiri1*

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ece3.7990



雑草の匂いが、米の収穫量をあげる?(植物生命_塩尻研_成果論文発表)

 

雑草の匂いが、米の収穫量をあげる?

(研究成果が論文として公表されました)


植物は、被害をうけた別の植物から放出される匂いを受容すると、虫に対する防衛力を高めることが知られてます。この現象は、匂いを介した植物間コミュニケーション(Plant-Plant communication)やプラントトーク(Plant talk)と呼ばれており、40種以上の植物種で報告されています。また、植物間コミュニケーションは、同種植物間だけでなく異種間でも起こることも知られています。我々は、この現象は農業に展開できるのではないかと考えました。つまり、雑草の匂いを作物に受容させて、収量をあげるのです。

イネの苗床に、刈り取られた雑草をメッシュの袋にいれて吊り下げておきます。(写真)

こうすることで、イネは苗の段階で雑草の匂いを受容することになります。その後は、通常通り、田んぼに植えます。田植え後1~2か月後のイネの葉の被害を調べると、苗のときに匂いを受容したイネは、何も匂いを受容していないものに比べて、被害が低下していました。さらに、収穫量においても、苗時に匂いを受容していたイネの方が高くなりました。つまり、刈り取られた雑草の匂いが、イネの虫にたいする抵抗性を高め、収穫量も上げることが明らかになりました。

草刈りをすることで、作物に散布する農薬を減らし、収穫量も上げるとなると、まさに、一石二鳥です。今後は、どの雑草が有効なのか、またどの匂い成分が重要なのかを明らかにしていく予定です。                                                            

                                (塩尻)

 

本研究は、Frontiers in Plant Science に2021年7月に掲載されました。

Field-grown rice plants become more defensive against herbivores and more productive when exposed to artificially damaged weed volatiles at the seedling stage

Kaori Shiojiri1*, Rika Ozawa2, Masayoshi Uefune3, Junji Takabayashi2*

 

Front. Plant Sci., 12 July 2021 | https://doi.org/10.3389/fpls.2021.692924


【植物生命科学科で扱う実験生物】No.09 シロイヌナズナとイネ

 植物生命科学科では、植物はもちろん、微生物から昆虫まで(中には動物を使ってのデータも!)さまざまな生物を実験に用います。このシリーズでは、各研究室で扱っている生物を順番に紹介していきます。

 植物ゲノム工学研究室では、植物における新規ゲノム編集技術の開発を行っています。ゲノム編集技術は、生命の設計図であるゲノムを正確に書き換える技術であり、今後の植物科学の研究と品種改良に必須の技術であると考えられています。この技術は最終的にはあらゆる植物に適用可能だと思われますが、基盤となる技術開発は扱いが容易な植物を用いて行うことが効率的です。

この点、これまでもこのコーナーで登場したシロイヌナズナとイネは、①ゲノムのサイズが小さく全塩基配列が解明されている、②世代時間が短い(シロイヌナズナで1.5カ月、イネで最短3か月)、③形質転換が容易である、という特長から、それぞれ双子葉植物と単子葉植物におけるモデル植物とされてきました。ゲノム編集技術の開発においても、この2つの植物が最も良く活用されています。

 研究室では、ツールの開発と動作確認をこの2つの植物を用いて行い、ツールを様々な植物を扱う研究者に提供しています。提供したツールが様々な植物で好適に働き、新たな形質を計画通りに付与した植物ができると、開発者としては大変嬉しく、さらなる技術開発の励みになります。

 

(A)     生長中、開花期、収穫期のイネ

(B)     イネの形質転換(お米の胚盤由来のカルスにアグロバクテリウムを感染することにより、約一か月で形質転換イネの幼植物体が出来る。左から感染後7日のカルスと再分化した形質転換イネ。上はGFPの蛍光像、下は明視野像)

(C)     ゲノム編集で作出した閉花性イネ(〇で囲った部分(鱗皮)が肥大することにより開花するが、左側のゲノム編集イネは肥大せず閉花受粉する。閉花受粉はカビの胞子の侵入を防ぎ、他品種との花粉との交配も防ぐ重要な農業形質である)

(D)    径9cm X 高さ2cmのシャーレの中で開花結実したシロイヌナズナと、シロイヌナズナのプロトプラストの形質転換(左が明視野像、右が蛍光像。蛍光タンパク質ビーナスが発現すると細胞が赤く光る)

(土岐)